内科&小児科

過敏性腸症候群の症状をよくするためには心と腸の両方に治療が必要

腹痛やお腹の張り・不快感、そして下痢や便秘といった便の異常に長い間お悩みの方はいませんか?そして、胃カメラや大腸カメラを受けて異常はなくて安心はしたけど症状がなかなかよくならない方のお悩みを少しでも解決できればと今回の記事を書きました。

当クリニックにも数ヶ月もの間、腹痛やお腹の張り、そして下痢や便秘でお悩みの患者さんが受診されることがしばしばあります。

そんな時に疑われる病気の一つが「過敏性腸症候群」です。

過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、頻回にトイレにかよったり、お腹の痛みでお仕事がうまくいかなくなったりするのでとても辛い病気です。今回はその過敏性腸症候群はどんな病気か?その原因や診断、治療について解説します。

過敏性腸症候群とはどんな病気でしょうか?

胃や大腸・小腸には異常がみられないのに、腹痛やお腹の張り・不快感、そして下痢や便秘が数ヶ月以上続く病気です。

この場合の異常とは、大腸がんや腸炎のように腸の中を見るとわかるような異常がないことをさしています。たとえば目に見える異常があれば、例えば胃がんや大腸がんがあれば胃カメラや大腸カメラといった画像の検査では異常は発見できます。腸炎があれば腸の中の粘膜が荒れて赤くなっていたりします。

過敏性腸症候群では物理的な異常はありませんので、いくら画像検査をしても異常は発見できません。物理的な異常はないけどやっぱりお腹が痛いとか違和感があるといった症状があるときには「機能的な異常」があるといいます。

過敏性腸症候群は「機能的な異常」であり、症状を説明する物理的な異常がないことはとても大切です。

症状は腹痛やお腹の張り・不快感、おならが多いといった症状に加えて、便通の異常がみられます。便の回数が増えたり、減ったりしたり、便の形状が硬くなったり、柔らかくなったりします。

過敏性腸症候群はどんな人がなりやすいの?

日本人では10人に1〜2人くらいの割合だと言われています。一学級に10名弱います。男性よりは女性に多い病気です。高齢者よりは若者や中年に多い病気です。郡部よりは都市部に患者さんが多く、ストレスが原因になっていると言われております。入学や就職、部署異動をきっかけに発症する方もいます。


感染性腸炎のあとにも約10%ほどの方が過敏性腸症候群を発症するといわれています。発熱や嘔吐、下痢といった症状が改善した後にお腹の張りが続く場合や下痢がなかなか改善しない場合には疑われます。

脳(心)と腸の密接な関係(脳腸相関)

脳腸相関:ヒトにおいて脳の状態が腸に影響を及ぼし、逆に腸の状態も脳に影響を及ぼす

脳と腸とお互いに自律神経やホルモンを利用して緊密に連絡をとりあっています。これを脳腸相関といいます。たとえば、ヒトは不安や緊張といったストレスを感じるとお腹が痛くなったり、下痢をもよおします。これは脳で感じたストレスを自律神経を介して腸にその刺激を伝えるからです。

逆に、腸から脳へも信号を送っています。過敏性腸症候群の患者さん内臓の知覚過敏があるといわれています。食事を食べると腸は蠕動したり、広がったりしますが、その刺激でさえも脳に信号をおくって痛みを感じさせます。

過敏性腸症候群はどうやって診断するのでしょうか?

まずは器質的、物理的な病気がないかの確認が必要です。過敏性腸症候群と同じような症状がでる病気には大腸癌や炎症性腸疾患、甲状腺機能異常といった病気があります。そのような病気を見つけた場合にはその病気に対する治療が必要です。

器質的な病気を調べるためには大腸カメラやCTが必要です。当クリニックでは、問診や診察をさせていただき、必要と判断した場合には内視鏡検査やCTをするために紹介させて頂いております。


過敏性腸症候群の国際的な診断基準を紹介します。

過敏性腸症候群のRomeⅣ診断基準

最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること。

  1. 排便と症状が関連する排便頻度の変化を伴う
  2. 排便と症状が関連する性状の変化を伴う

期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと
(RomeⅣ診断基準)

便秘型と下痢型

過敏性腸症候群は下痢型(慢性的に下痢を起こす)、便秘型(慢性的に便秘が起こる)、混合型(便秘と下痢を繰り返す)に分けられます。 男性では下痢型、女性は便秘型が多いです。このように分けることによって治療の方法が変わってきます。

過敏性腸症候群を一緒に良くしていきましょう

過敏性腸症候群の治療はたくさんあります。逆にたくさんあるということは決まった治療がないということです。たいていの場合は、1回の診療で100点満点の治療を処方することは難しいので患者さんと一緒に話し合って徐々に調子がよくなるように治療を探していくことになります。

過敏性腸症候群は腸だけの病気ではありません。脳腸相関があるように、密接に連携している脳(心)に対する治療も必要となることがあります。脳(心)の治療については抗うつ薬や抗不安薬を処方することもあります。

いずれにせよ、まずは生活習慣の改善と食生活の改善が必須です。腸の動きは自律神経によってコントロールされています。慢性的な睡眠不足や疲労、環境の変化、人間関係の変化といった影響により自律神経が乱れることで、症状が現れやすくなります。3食を規則的にとり、暴飲暴食、夜間の大食を避け、食事バランスに注意してください。刺激物、高脂肪の食べもの、アルコールは控えてください。

薬物治療は下痢型でも便秘型でも両方に効果のある治療とそれぞれの型に特化した治療に分けられます。それぞれにたくさんの種類があります。

まとめ

・過敏性腸症候群は胃や大腸・小腸には異常がみられないのに、腹痛やお腹の張り・不快感、そして下痢や便秘が数ヶ月以上続く「機能的」な病気です。

・脳と腸には「脳腸相関」と呼ばれる緊密な連携があり、心理的ストレスによって過敏性腸症候群の症状は増悪します。

・過敏性腸症候群の診断で必須なことは、物理的・基質的病気の除外です。また、中心となる症状によって下痢型・便秘型・混合型に分けられ、それによって治療が異なります。

・過敏性腸症候群の治療は一人一人によっては違ってきます。一度の外来では100%満足できる治療を見つけることは難しいので一緒に治療方法を探していきましょう。

過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、10人に1人がもつまれではない病気です。学業や仕事に影響して症状に悩まされている方が多くいます。腸と心は密接に関連しているためストレスは胃腸の症状にあらわれやすいです。

長引く腹痛、下痢や便秘のため日常生活に支障を来している場合には、お気軽に当院までご相談ください。

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