コロナ感染が流行り、インフルエンザウイルスも流行りだしそうなこの時期に発熱が出たら本当に困りますよね。
コロナを疑えばよいのか?インフルエンザか?いやいや、ふつうの風邪なのか?
当院では発熱外来を行っていますが、診断に迷うことが多々あります。特に発熱だけの受診の時です。
多少乱暴な言い方ではありますが、コロナウイルス検査が陽性と出ると診断がつくので安心ですらあります。
本日は、発熱をした患者さんの悩ましい診断過程をみなさんと共有できればと思います。
そもそも風邪とは?
風邪とは、ある種のウイルスによっておこる1~2週間程度で自然軽快する疾患のことです。その症状は発熱や咳、鼻汁、咽頭痛などです。
コロナウイルスやインフルエンザは風邪よりも重症化率や後遺症を引きずる可能性が高いのですが、ワクチンを打つことで重症化や死亡率が下がるので風邪に近づくともいえます。
このあたりみなさんも実感しているのではないでしょうか?周りでコロナにかかったヒトがいても風邪と同じような感じで治っているヒトが多いと思います。
コロナは風邪に近づいているとか風邪と同じだといっている識者もご存じかと思います。
発熱以外の症状が遅れて出てくる病気
発熱が出るけど、ほかの症状がないということはよく経験します。
結論からいうと発熱だけで来院された場合には診断は困難な場合が多いです。
問診、身体所見、検査をして診断ができることもあります。
周囲に流行があれば必要な迅速検査をやる価値があるかもしれません。例えば、周囲でインフルエンザが流行しているからインフルエンザの迅速検査をやろうってなります。
でも、いつもそうはいきません。
今年の夏に流行った手足口病は最初は発熱だけしか症状が出ないことがありうる病気でした。発熱してから2日ほどしてから手足に皮疹が出てきたという経験をしたご家庭は少なくないと思います。
ほかにも扁桃炎、中耳炎や副鼻腔炎、肺炎など最初は発熱しか出ないことのある病気がたくさんあります。
発熱の次の症状が重要です
特に小さいお子さんをお持ちのご家庭では発熱があるととても心配だと思います。
「発熱の原因を知りたい、どんなウイルスにかかっているか知りたいです」と熱が出て1~2時間後には受診される方、保育園の先生に指示を受け帰宅途中に受診される方はとても多いのです。
しかし、発症早期の発熱だけの症状で診断することは難しい場合が多いです。
発熱をして解熱後に発疹が出たら突発性発疹かもしれません。次にのどが痛くなってきたら溶連菌感染かもしれません。
発熱当日に来院されて、診断がつかない、解熱剤だけの対応、次の症状が出たら再診、熱が続いたら再診といった対応になってもがっかりしないでください。
診断をするのに必要な武器の一つが時間経過なのです。つまり、時間がたつにつれてどんな症状が出てくるかがとても大切です。
「抗生剤を出してください」
「抗生剤を出してください」って方はたくさんいらっしゃいますが、細菌感染が疑わしい時に処方が検討されます。
というのは、細菌感染であっても全例が必要ではないからです。
感染した臓器や感染症の種類によって抗生剤の種類や投与期間が違ってきます。お子さんにかかりやすい溶連菌感染であれば抗菌薬を10日間服用して治療します。
発熱だけの症状で、当初から抗生剤を処方することはあまり多くない、というかほとんどありません。
コロナとインフルエンザと風邪
発熱の次の症状が咳や鼻汁、咽頭痛といった症状であると今の流行を考えるとコロナかもしれないし、インフルエンザかもしれないし、風邪かもしれません。
その3つを診断をするのは残念ながら検査しないと区別はできません。
以前であればコロナであれば特徴的な味覚・嗅覚障害がありましたが、今はそれほど出てくる症状はありません。
関節痛があればインフルエンザやコロナ感染っぽいなどの多少の傾向はありますが、症状や診察での決め手はありません。
風邪でもない
発熱の次に咳や鼻汁、咽頭痛といった症状が出てきたら風邪やインフルエンザ、コロナウイルス感染を疑うことはあまり難しくありません。
診断に困るのは咳や鼻汁、咽頭痛が出ないときです。
その場合には様々な可能性を考えていかなければなりません。
その場合でも次の症状が出ないか、出ないなら発熱が持続するのかどうかといったことを注意深く外来で診ていきます。
当院で今年経験した例ですと、小さなお子さんが発熱だけが持続し尿路感染症であった。若い女性が発熱に続いて背部痛が出てきて大動脈炎症候群であった。ご高齢者や発熱に続いて、体のあちらこちら痛くなってきて血管炎だった、中年男性が発熱が持続し感染性心内膜炎であったこともありました。
まとめ
症状が発熱だけという場合には、コロナかインフルエンザか風邪なのか、はたまた風邪以外の診断の可能性もあります。
診断をするのに問診と時間経過はとても大切で、発熱しか症状がない場合には次の症状がでるかどうか、発熱自体が持続するかがとても重要です。
咳や鼻汁、咽頭痛があればコロナやインフルエンザ、風邪の診断に近づきます。