
難聴と認知症の関連性は、近年の研究でますます明らかになってきました。
特に中高年からの聴力ケアが、将来の認知機能維持に重要な役割を果たす可能性があります。
今回は、両者の関係性と定期的な聴力検査の重要性についてご説明します。
難聴と認知症の意外?な関係
最新の研究によると、難聴は認知症の予防可能なリスク因子の中で最も影響力が大きいとされています。世界から難聴がなくなれば、認知症患者を約8%減らせるという推計もあるほどです。
具体的には:
- 中年期に難聴があると、高齢期の認知症リスクが約2倍に上昇
- 難聴の程度に比例してリスクも高まり、軽度で2倍、中等度で3倍、重度では5倍に
- 全認知症患者の約9%は難聴が原因で発症したと推測されている
なぜ難聴は認知症リスクを高めるのか?
難聴が認知症リスクを高める理由には、主に以下の3つのメカニズムが考えられています:
脳への刺激減少
難聴により脳に伝わる音や情報が減少し、脳の音声処理部位の働きが弱まり、脳萎縮が進みやすくなります。
社会的孤立
聴力低下によりコミュニケーションが難しくなると、社会的な孤立や抑うつ状態を招き、それが認知機能の低下につながります。
脳の過剰負担
聞き取りにくい状況では、脳はより多くのエネルギーを聴覚処理に使うため、記憶や思考などの他の認知機能に使えるリソースが減少します。
定期的な聴力検査の重要性

難聴は自覚症状がないまま徐々に進行することが多く、本人が気づいたときにはかなり進行していることがあります。だからこそ、定期的な聴力検査が重要なのです。
聴力検査をおすすめする理由
- 早期発見・早期対応: 難聴の初期段階で発見できれば、早めに対策を講じることができます。
- 認知症予防: 適切な補聴器の使用により、認知症発症リスクの軽減が期待できます。
- 生活の質の向上: 聴力低下は気づかないうちに社会参加や会話を避ける傾向を生みます。早めの対応で豊かな社会生活を維持できます。
- 進行を防ぐ: 一部の難聴は適切な治療で進行を遅らせたり、止めたりすることが可能です。
いつ聴力検査を受けるべき?
- 40歳以上の方: 特に症状がなくても、2〜3年に1回の聴力検査をおすすめします。
- 60歳以上の方: 年に1回の定期検査が理想的です。
- 以下の症状がある方: すぐに検査を検討してください
- 「聞き返し」が増えた
- テレビの音量を大きくしがちになった
- 騒がしい場所での会話が特に聞き取りにくい
- 人との会話を避けるようになった
聴力低下を感じたら
聴力低下を感じたら、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。専門医による適切な診断と、必要に応じた補聴器の選定・調整が重要です。
当院でも聴力検査は受けることが可能です。
最新の補聴器は小型化・高性能化が進み、生活スタイルに合わせた選択肢も増えています。また、補聴器の購入・調整には医療費控除が適用される場合もあります。
まとめ:聴こえのケアは脳のケア
難聴=必ず認知症になる、というわけではありません。しかし、聴力の低下を放置しないことが認知症予防の観点からも大切です。
定期的な聴力検査を習慣化し、必要に応じて適切なケアを受けることで、豊かな聴こえとともに、認知機能の維持にも貢献できるでしょう。
聴こえのケアは、実は脳のケアでもあるのです。
「大切な人との会話」「好きな音楽」「自然の音」—これらを長く楽しむために、今日から聴力ケアを始めてみませんか?