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咳をし過ぎると肺炎になるの?自宅ケアと病院へ行く目安

風邪で咳が続くとき、「こんなに咳をしていたら肺炎になってしまうのでは?」と心配になったことはありませんか?

この質問は、外来ではとても多い質問なのです。

「こんなに咳をしていたら肺炎になりませんか?」

そして、この心配はよくある誤解なんです。今日は、咳と肺炎の関係について、お伝えします。

結論:咳それ自体は肺炎の原因にはなりません

まず最初にはっきりお伝えしたいのは、咳をいくらたくさんしても、それ自体が肺炎を引き起こすことはないということです。

肺炎は、ウイルスや細菌が肺の奥深く(肺胞という小さな袋)に感染することで起こる病気です。

一方、咳は気道に入った異物や痰、ウイルスなどを体の外に追い出すための大切な防御反応。つまり、咳は体を守る「味方」なのです。

なぜ「咳=肺炎」という誤解が生まれるのか

それでも「咳をしすぎると肺炎になる」と感じてしまうのには、理由があります。

パターン1:風邪の延長で肺炎になるケース

風邪やインフルエンザにかかって咳が出ているとき、その咳が激しくなって、やがて肺炎になることがあります。この場合、実は咳が肺炎を引き起こしたのではなく、元々の感染(ウイルスや細菌)が気道から肺まで広がったというのが正しい理解です。

咳はあくまで「症状」であって「原因」ではありません。肺炎にしたのは咳ではなく、ウイルスや細菌そのものなのです。

パターン2:誤嚥性肺炎との混同

高齢の方や飲み込む力が弱い方の場合、食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が原因で肺炎になることがあります。これを「誤嚥性肺炎」と呼びます。

このとき、誤嚥後にむせたり咳をしたりするので、「咳が肺炎を引き起こした」ように見えるかもしれません。しかし実際には、繰り返し起こる誤嚥や、痰を十分に出せないことが問題なのです。

咳のしすぎで起こりうる他のトラブル

肺炎にはなりませんが、激しい咳が続くと別の問題が起こることはあります。

  • 嘔吐
  • 尿漏れ
  • 肋骨骨折(高齢者や骨が弱い方)
  • 気胸(肺に穴が開く)

これらはまれなケースですが、咳をした後に激しい胸の痛みや息苦しさを感じた場合は、念のため受診してチェックを受けることをおすすめします。

こんな症状があったら迷わず受診を

咳が出ていても、多くの場合は自然に治まります。ただし、以下のような「赤信号」があるときは、肺炎やその他の重い病気の可能性があるため、早めに医療機関を受診してください。

呼吸に関する危険サイン

  • 息苦しさが強い
  • 呼吸が速い(赤ちゃんは1分間に50回以上、1〜5歳は40回以上、大人はおおむね22回以上)
  • 笛のような「ヒューヒュー」という呼吸音がする
  • 胸がペコッとへこむ呼吸(特に子ども)
  • 顔色が悪い、唇が紫っぽい

発熱や全身症状

  • 38.5℃以上の高熱が3日以上続く
  • ぐったりして元気がない
  • 水分が取れず、脱水気味

その他の注意点

  • (持っていれば)パルスオキシメーターで測定したSpO₂(酸素飽和度)が94%未満の状態が続く
  • 胸の痛みがある

家でできる咳ケア:シンプルで効果的な方法

受診するほどではない咳の場合、自宅で適切にケアすることで楽になります。

基本の3つ

  1. こまめな水分補給:痰を柔らかくして出しやすくします
  2. 室内の加湿と換気:湿度40〜60%を目安に。乾燥すると気道が刺激されます
  3. 上半身を少し起こして休む:横になると咳が出やすい人は、枕を高くするかリクライニングした姿勢で

年齢別・状況別のケア

1歳以上のお子さん・大人

  • はちみつが夜間の咳を和らげることが研究で示されています(寝る前にティースプーン1杯程度)
  • ⚠️ 1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えないでください(乳児ボツリヌス症のリスク)

喘息がある方

  • 処方された吸入薬を医師の指示どおりにきちんと使用しましょう

痰が多い乳幼児

  • 小さな子どもは痰を上手に出せません
  • 鼻吸引、横向きやうつ伏せ抱っこ(体位ドレナージ)でサポート
  • 息苦しさや発熱が続く場合は受診を

咳止め薬の注意点

強い鎮咳薬で無理に咳を止めすぎると、痰が出せずに症状が悪化することがあります。特に子どもへのコデイン系の咳止めは、現在は原則使わない方針となっています。

薬を使う場合は、医師や薬剤師に相談して、症状に合ったものを選びましょう。

よくある質問にお答えします

Q. 咳止めを飲めば肺炎を予防できますか?

A. 残念ながら、咳止め薬に肺炎予防の効果はありません。咳の原因(ウイルス、細菌、喘息、アレルギーなど)に合わせた適切な治療が大切です。

Q. 咳が長引いているけど、様子を見て大丈夫?

A. 2〜3週間以上続く、夜間の咳で眠れない、ゼーゼーする呼吸音がある、体重が減ってきた…といった場合は受診をおすすめします。百日咳、マイコプラズマ肺炎、副鼻腔炎、咳喘息など、長引く咳の背景にはさまざまな病気が隠れている可能性があります。

Q. 子どもが痰を出せないのですが大丈夫でしょうか?

A. 乳幼児は痰を自分で出すことがまだ上手にできません。こまめな水分補給、鼻吸引、体位を変えてあげることでサポートできます。ただし、息苦しさや発熱が続く場合は、痰が詰まっている可能性もあるため受診してください。

まとめ:咳は敵ではなく味方です

最後に、もう一度大切なポイントをまとめます。

咳そのものが肺炎を作ることはありません
✓ 肺炎の原因は感染や誤嚥であり、咳は体を守る防御反応です
✓ 息苦しさ、長引く高熱、呼吸が速い、SpO₂の低下などは受診のサイン
✓ 自宅では水分・加湿・体位の工夫を。1歳以上ははちみつも有効
✓ 喘息がある方は吸入薬の管理を徹底しましょう

咳が出ると不安になりますが、多くの場合は体が正常に働いている証拠です。正しい知識を持って、適切にケアしながら、必要なときには迷わず医療機関を頼ってくださいね。


*この記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。心配な症状がある場合は、かかりつけ医師にご相談ください。

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