
目次
はじめに:A型は重い、B型は軽い…は本当?
最初にひとつだけ、大切な前提をお伝えします。
今回紹介する研究は、高齢者を中心としたデータであり、子どものインフルエンザをそのまま説明するものではありません。
特にご家族に高齢の方がいる場合の参考として読んでいただければと思います。
「インフルエンザA型は高熱で重症化しやすい」
「B型はそこまでつらくない」
こんな話、一度は聞いたことがあると思います。
正直、私も昔はそう思っていました。
でも、近年の研究データを見ると、この考え方はかなり危ういことが分かってきてます。
今回紹介するのは、2017〜2018年シーズンにイスラエルの病院で行われた研究です。
対象は入院患者526人、平均年齢74歳。しかも7割以上が介護施設入所者。
つまり、「元気な若者」ではなく、私たちの親世代・祖父母世代のリアルなデータです。
インフルエンザの基本:「インフルエンザ様疾患」とは?
研究では、次のような状態を「インフルエンザ様疾患」と定義しています。
- 37.5℃以上の発熱(高熱でなくてもOK)
- 以下のうち1つ以上
- 咳
- のどの痛み
- 鼻水
- 筋肉痛
注目すべきは37.5℃という数字です。
ご高齢者では、この程度の微熱でも体力を一気に奪います。
実際、入院患者の63%はこの定義に当てはまっていました。
「熱が低いから大丈夫」という判断はあまり当てにならないのです。
【比較】A型とB型の違いはどこにある?
呼吸器へのダメージはA型が強い
まず分かりやすい違いから。
- 入院時体温(中央値)
- A型:37.5℃
- B型:37.4℃
体温差は、ほぼ誤差レベルです。
しかし、肺への影響ははっきり差が出ました。
- 肺炎の発症
- A型:19%
- B型:10%
- 人工呼吸器の使用
- A型:6%
- B型:2%
ここだけ見ると、
「やっぱりA型の方が重いじゃないか」
と思いますよね。
でも死亡率は…A型とB型で差がなかった
ここが、この研究の一番怖いポイントです。
- 30日死亡率
- A型:8%
- B型:7%
- 90日死亡率
- A型:11%
- B型:11%
差はありませんでした。
しかも、その年の地域では
B型の流行は2%未満だったにも関わらず、
入院患者の62%がB型だったのです。
ワクチンが流行株と合わなかった可能性も指摘されていますが、
それ以上に重要なのはこの事実。
👉 B型は「軽い顔をして、命を奪う」ことがある
という点です。
本当に怖いのは「型」ではなく「体の状態」
研究では、年齢や持病を加味した詳細な解析も行われました。
その結果、死亡リスクを高めていたのは次の要素です。
- 持病が多く、重い
- 栄養状態が悪い(アルブミン低値)
- 腎不全や血圧低下など、全身状態が悪い
つまり、
A型かB型かは、実はそこまで重要ではない
という結論です。
ウイルスよりも、
「その人の体力・栄養・持病」
これが予後を決めていました。
まとめ:B型に対しても油断大敵
今回の研究から、はっきり言えることがあります。
- A型は肺炎など呼吸器合併症が多い
- でもB型も死亡リスクは同じ
- 重症化を決めるのは「ウイルス」ではなく「体の状態」
「B型だから様子見でいい」
「熱が低いから大丈夫」
この判断が、危険かもしれません。
特に高齢の家族や、持病のある方がいるなら、
型に関係なく、油断大敵です。
参考文献
【この記事を書いた医師】
南22条おとなとこどものクリニック 院長
小林 俊幸
小児科・総合内科
この記事は、札幌市で日常診療を行っている医師が、
診察室でよく受ける質問をもとに執筆しています。
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