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🏆「インフルエンザの薬、飲まなくてもいいですか?」

「インフルエンザにかかったけど、薬って本当に飲まないといけないの?
「副作用が心配で飲みたくない…」

そう思ったことはありませんか?
実は、「薬を飲まない」という選択肢は、医学的に否定されるものではありません。
でも、「知ったうえで選ぶ」ことがとても大切です。

💊 抗インフルエンザ薬とはどんな薬?

インフルエンザウイルスの増殖をストップさせる薬です。日本で使われている主な薬は以下の5種類です。

薬の名前使い方特徴
タミフル(オセルタミビル)内服・5日間最も使用実績が多い。乳幼児にも使用可
ゾフルーザ(バロキサビル)内服・1回のみ1回で完結。一部で再発熱の報告あり
イナビル(ラニナミビル)吸入・1回吸入回数が少なくて済む
リレンザ(ザナミビル)吸入・5日間内服が難しい方向け
ラピアクタ(ペラミビル)点滴・1回経口摂取が難しいときに

どの薬も「発症から48時間以内」の服用開始が効果のカギです。

🌿 薬を飲まなくても、インフルエンザは治る?

基本的には治ります。

持病がなく体力のある健康な成人であれば、薬なしでも1週間〜10日ほどで自然に回復することがほとんどです。日本小児科学会・厚生労働省のガイドラインでも「抗インフルエンザ薬の投与はすべての患者に必須ではない」と明記されています。

💚 薬なしの典型的な経過

  • 1〜3日目:高熱・頭痛・関節痛。最も辛い時期
  • 3〜5日目:熱が徐々に下がり始める
  • 5〜7日目:症状が改善し始める
  • 7〜10日目:多くの場合、回復

なお、発症前日から発症後3〜7日間はウイルスを排出し続けるため、回復中も周囲への感染リスクがあることは覚えておきましょう。

⚖️ 薬を飲む場合・飲まない場合の違い

😷 薬を飲まない場合💊 薬を飲んだ場合
症状の続く期間5〜7日程度平均約1日(約21時間)短縮
肺炎などの合併症通常リスク一部の研究(主に観察研究)でリスク低下を示唆。ただし確実性は限定的
脳炎・脳症通常リスク直接の予防・治療効果は現時点で証明されていない
ウイルス排出量多い48時間以内に開始した場合に減少

「症状が約1日短縮される」はコクランレビュー(RCTのメタアナリシス)による結果です。肺炎などの合併症予防については観察研究では示唆されていますが、ランダム化比較試験では証明されていません。脳炎・脳症への効果については日本小児神経学会が「証明されていない」と明記しています。

✅ 「薬を飲んだほうがいい人」チェックリスト

1つでも当てはまる方は、医師と相談のうえ服薬を検討してください。

  • 65歳以上の高齢者
  • 5歳以下の乳幼児
  • 妊婦さん
  • 糖尿病・心臓病・腎臓病などの慢性疾患がある
  • 喘息・COPDなどの呼吸器疾患がある
  • 息苦しさや強い咳がある
  • 免疫が低下している(抗がん剤治療中など)
  • 家に乳幼児・高齢者・持病のある家族がいる

持病がなく体力のある若い成人であれば、安静・水分補給で経過を見ることも選択肢の一つです。

😨 「タミフルで異常行動が起きる」は本当?

2018年に日本医療研究開発機構の大規模研究により、「異常行動は薬を飲んだ人・飲んでいない人の両方で同様に起きていた」ことが明らかになりました。

現在はすべての抗インフルエンザ薬の添付文書に、次の一文が記載されています。

「抗インフルエンザウイルス薬の服薬の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。」

「薬を飲まなければ安全」ではありません。 ウイルス自体が脳に影響する可能性があります。子どもや未成年者については、薬の有無にかかわらず発熱後2日間は一人にしないよう厚生労働省は呼びかけています。

🏠 薬を飲まない場合の正しいホームケア

① 安静にする(最重要) 免疫を最大限に働かせるため、横になって休みましょう。

② こまめな水分補給 高熱で脱水になりやすいです。水・お茶・スポーツドリンクなどを少量ずつ頻繁に。

③ 解熱薬は「アセトアミノフェン」を

成分名子どもへの使用代表例
アセトアミノフェン✅ 安全(乳幼児〜成人・妊婦も可)カロナール、タイレノール など
アセチルサリチル酸(アスピリン)❌ 15歳未満は原則禁忌(ライ症候群リスク)バファリンA など
イブプロフェン⚠️ 成人のみロキソニン など

⚠️ 「バファリン」はブランド名で、製品により成分がまったく異なります。購入前に必ず成分名を確認してください。

④ 外出・登校は控える 学校保健安全法では「発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」が出席停止です。

⑤ 家族へのうつし防止 部屋を分ける、マスク着用、換気、手洗いを徹底しましょう。

🚨 こんな症状が出たらすぐ受診を!

  • 呼吸が苦しい・息切れがする
  • 意識がもうろうとする・呼びかけへの反応が鈍い
  • 高熱が5日以上続く
  • 一度下がった熱が再び上がる(肺炎の可能性)
  • 水分が全くとれない・ぐったりして動けない
  • 急に走り出す・飛び出そうとするなどの異常行動(特に子ども)
  • 顔色が悪い・唇が紫色になる(チアノーゼ)

📝 まとめ

  • 抗インフルエンザ薬はすべての人に必須ではない
  • 飲んだ場合、症状は平均約1日短縮される(RCTによる結果)
  • 肺炎などの合併症予防効果は一部の研究では示唆されているが確実性は限定的
  • 脳炎・脳症への直接の予防効果は現時点で証明されていない
  • 異常行動は薬の有無に関係なく起きうる
  • 高齢者・乳幼児・妊婦・持病のある方は積極的に服薬を検討すべき
  • 解熱薬は商品名ではなく成分名で確認すること
  • 症状が悪化したらためらわずに受診

参考資料

  • 日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」
  • 厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」
  • AMED研究班(2018年):抗インフルエンザ薬と異常行動に関する検討結果
  • 日本小児神経学会「インフルエンザ脳症の診療戦略(2018年)」
  • Jefferson T, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014
  • 学校保健安全法施行規則 第19条

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療行為を代替するものではありません。具体的な治療方針については、必ず担当医にご相談ください。

【この記事を書いた医師】
南22条おとなとこどものクリニック 院長
小林 俊幸
小児科・総合内科
この記事は、札幌市で日常診療を行っている医師が、
診察室でよく受ける質問をもとに執筆しています。
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  • この記事を書いた人

小林 俊幸

【この記事を書いた医師】 南22条おとなとこどものクリニック 院長 小児科・総合内科 この記事は、札幌市で日常診療を行っている医師が、 診察室でよく受ける質問をもとに執筆しています。

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