内科&小児科

ヒトメタニューモウイルスの話【おとなも注意!】

ヒトメタ?なんとかウイルスがはやっているって聞くけどなんのことかしら?

ヒトメタニューモウイルスが流行中です!(2022年10月)聞きなれない名前かもしれないので一緒に勉強しましょう!

ヒトメタニューモウイルスはRSウイルスと似た症状を起こす感染症です。

以前から環境中に存在していたウイルスですが、検出技術の進歩によって2001年にオランダの研究グループにより発見されました。

子どもがかかることが多いのですが、大人も感染します!小児の呼吸器感染症の5〜10%、大人の呼吸器感染症の2〜4%は、ヒトメタニューモウイルスが原因だと考えられています。とくに乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルスの特徴と症状

健康な気管(左上)と炎症でむくみ、喀痰を認める気管(右下)。狭い気管を空気が通るためヒューヒューと音が聞こえます。

以前は毎年3月から6月ころまで流行することが多かったのですが、いまは一年中検出されるようになりました。

感染しても多くの人は無症状や「風邪」として終わります。

主に1〜3歳の幼児で流行します。症状は発熱やせき、鼻水が中心ですが、「インフルエンザのような39度台の高熱が続き、RSウイルスのような喘鳴が認められる」ことがあります。咳は1週間前後続き、熱も4日程度続きます。

RSウイルスは1歳未満のお子さんに初感染することが多い傾向がありますが、ヒトメタニューモウイルスは1~2歳に初感染することが多いといわれてます。

気道の先の方まで炎症を起こり細気管支炎を発症することがあります。その場合には喘鳴(息をはく時に聞こえるヒューヒューする音)を起こし、重症化した場合には呼吸困難となり入院が必要となることがあります。

5歳までにほとんどのお子さんが初回感染をします。しかし、一度感染を起こしても麻しんや水痘のような終生免疫(一度感染したら次はかからない)は獲得されません。再感染を繰り返すことで次第に軽症化します。このあたりの特徴はRSウイルスと同じです。

ヒトメタニューモウイルスにかかっているヒトの咳、くしゃみ、ウイルスがついた手やその手で触ったもの(ドアノブやおもちゃなど)に触れて、舐めたりするとかかります。赤ちゃんや小さいお子さんは、いろんなものに触ったり、舐めたりするので流行時期にはかかりやすいといえます。

経過中の注意点

たいていは風邪の症状で終わることが多いのですが、以下のようなことに注意してみていきましょう。

細菌感染の合併

4〜5日以上熱が続く場合には細菌感染症の合併を考慮する必要があり、細菌性の肺炎や中耳炎が起きている可能性があり、抗菌薬が必要となる場合があります。

呼吸困難

喘鳴がひどくなるとまず呼吸が早くなります。1歳未満で呼吸数が50回/分、1〜5歳未満では40回/分を目安です。

さらに呼吸状態が悪くなると、鼻翼呼吸(息を吸うたびに鼻の穴が広がる)や肩呼吸(肩の上下運動を伴った呼吸)の状態になってきますから、お子さんの呼吸状態には注意してください。

中耳炎

RSウイルスが中耳炎を起こしやすいのは有名ですが、ヒトメタニューモウイルスでも中耳炎を合併することがあります。

中耳炎は解熱して咳などの症状が改善してきた頃に起きやすいので、一度熱が下がったのにまた発熱をして、機嫌が悪くなってきたなどがあった場合には中耳炎に注意してください。

気管支喘息

気管支喘息のお子さんは喘息発作を起こしやすいので注意が必要です。

以下の方は重症化しやすいので気を付けてください!

  • 未熟児で生まれた
  • うまれつき心臓や肺に病気がある
  • 神経・筋疾患、免疫不全の基礎疾患または骨髄移植を受けた
  • 気管支喘息をもっている
  • 高齢者

ヒトメタニューモウイルスの診断

迅速診断キットで診断します。検査方法は、インフルエンザのときと同じように、綿棒で鼻の奥から鼻水を採取して検査します。検査時間は約10分程度です。

保険適用は6歳未満です。

ヒトメタニューモウイルスの治療

多くの場合には一週間程度で自然に治癒します。

ウイルス感染症であり、特別な治療方法はありません。年齢と症状に応じた対症療法を行います。

抗菌薬はヒトメタニューモウイルスそのものには効果がありません。

ヒトメタニューモウイルスの感染予防

咳やくしゃみによってウイルスを浴びてしまい感染する飛沫感染、鼻水などで汚染されたタオルや食器などで感染する接触感染が中心です。乳幼児への予防はとても難しいですが、可能ならば飛沫感染対策としてマスク着用、タオルや食器は共用しないなどの点を心がけてください。

感染力は強いのですが、軽症の風邪の子どもや大人が、気づかないまま日常生活の場にいるため、保育園、幼稚園や家庭での感染を防ぐことは難しいのが現状です。

登園基準

明確な基準はありません。

排出されるウイルス量は発熱1〜4日目に多く、排出は1〜2週間続くと言われますが、解熱し咳や鼻汁が改善して元気になれば登園可能と考えてください。

まとめ

今回はヒトメタニューモウイルスの紹介をしました。RSウイルスと似た症状がでることが多いウイルスで、ややRSウイルスより年齢が高い1~2歳のお子さんに初感染することが多いです。

多くの場合は軽症で完治しますが、未熟児のお子さんや心臓や肺にもともと病気のあるお子さん、高齢者の方では重症することもあるので重症化することもあるの注意してみていきましょう。

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