最近、ニュースで「侵襲性溶連菌感染症」という言葉をよく耳にするようになりました。
「溶連菌」と聞くと、子どもの頃にかかった喉の痛みを思い出す方も多いでしょう。でも、この「侵襲性」というのは一体どういう意味なのでしょうか?そして、なぜ今増えているのでしょうか?
今回は、この気になる「侵襲性溶連菌感染症」について、解説していきます。一緒に理解を深めて、知識を身につけていきましょう。
侵襲性溶連菌感染症とは?通常の溶連菌感染症との違い
まず、「侵襲性溶連菌感染症」と「通常の溶連菌感染症」の違いを理解することが重要です。
通常の溶連菌感染症は、多くの人が経験したことのある喉の痛みや発熱が主な症状です。抗生物質で治療すれば、数日で良くなることがほとんどです。
一方、侵襲性溶連菌感染症は、溶連菌が血液や筋肉、肺などの深部組織に入り込んで起こす重症の感染症です。症状が急速に悪化し、適切な治療を受けないと命に関わる危険性があります。
なぜ今、侵襲性溶連菌感染症が増えているの?
侵襲性溶連菌感染症が増加している理由には、主に2つの要因が考えられています。
免疫負債
コロナ禍で感染症対策を徹底したため、私たちの体が様々な細菌やウイルスに触れる機会が減りました。そのため、溶連菌に対する免疫力が一時的に低下している可能性があります。
溶連菌の変異
溶連菌自体が変異し、より強い毒素を作り出す種類(M1UK系統など)が増えていることが分かっています。これらの新しい系統は、従来の溶連菌よりも重症化しやすい特徴があります。
侵襲性溶連菌感染症の症状と注意点
侵襲性溶連菌感染症の症状は、通常の溶連菌感染症よりも急速に進行し、より重篤になります。主な症状には以下のようなものがあります:
- 高熱
- 激しい痛み(特に手足)
- 急速に広がる発赤や腫れ
- 呼吸困難
- 意識の混濁
恐ろしいのは、壊死性筋膜炎です。これは溶連菌が皮膚の下の組織に侵入していって、急速にその周辺の組織を破壊していきます。激しい痛みや発赤や腫れを認めます。
これらの症状が急激に現れた場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。特に、手足の痛みや腫れが急に出現・悪化した場合は要注意です。
予防と対策:私たちにできること
侵襲性溶連菌感染症を100%予防することは難しいですが、以下の対策で感染リスクを下げることができます:
- 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前には必ず行いましょう。
- マスクの着用:特に人混みや公共の場所では有効です。
- 傷口の清潔保持:小さな傷でも適切に手当てし、清潔に保ちましょう。
- 健康管理:十分な睡眠と栄養摂取で免疫力を維持しましょう。
- 早めの受診:体調不良を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
現在、溶連菌に対するワクチンは開発中ですが、まだ実用化されていません。そのため、上記の基本的な感染予防策を日常的に実践することが最も重要です。
侵襲性溶連菌感染症は確かに怖い病気ですが、正しい知識を持ち、適切な予防策を取ることで、リスクを大幅に減らすことができます。過度に恐れるのではなく、冷静に対応することが大切です。みなさんで協力して、健康で安全な生活を送りましょう。