最近、当院では女性のHPVワクチン接種者が増えていますが、男性の接種者は残念ながらほとんどいません。
しかし、HPVワクチンは男性にとっても非常に重要なのです。特に、性交デビュー前のお子さんに接種することで、将来の健康リスクを大きく減らすことができます。
なぜ男性もHPVワクチンを接種すべきなのか、詳しく見ていきます。
HPVワクチンが男性の健康を守る理由
がんのリスク低減
HPVは男性にも様々ながんを引き起こす可能性があります。特に中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどのリスクを低減できます。
性感染症の予防
HPVは性交渉で感染するウイルスです。尖圭コンジローマなどの性感染症の原因にもなります。ワクチン接種により、これらの感染リスクを減らすことができます。
パートナーの保護
男性がワクチンを接種することで、将来のパートナーへのHPV感染リスクを低減し、間接的に子宮頸がんの予防にも貢献できます。
集団免疫への貢献
男女両方がワクチンを接種することで、社会全体のHPV感染率を下げる「集団免疫」効果が期待できます。
男性向けHPVワクチンの具体的情報
適応ワクチン:男性に承認されているHPVワクチンは「ガーダシル」という4価ワクチンです。
接種回数と費用:接種は3回必要です。当院での1回の接種料金は15,000円です。3回の接種で合計45,000円となります。
接種対象年齢:概ね小学6年生以上の男性が対象となっています。
接種スケジュール:初回接種から2カ月後及び6カ月後に追加接種を行う、合計3回の接種スケジュールが標準的です。
なぜ性交デビュー前の接種が重要なのか
HPVワクチンは、初めての性交渉の前に接種することが最も効果的です。これには以下の理由があります:
- ウイルスに感染する前に予防できる:性経験がない時点では、HPVに感染していない可能性が高いため、ワクチンの効果が最大限に発揮されます。
- 免疫系の反応が強い:若い年齢ほど免疫系の反応が強く、ワクチンの効果が高くなります。
- 長期的な保護:早期に接種することで、性活動が始まる前から長期的な保護を得ることができます。
世界の動向と日本の現状
世界では、すでに40カ国以上で男性へのHPVワクチン接種が公費で行われています。例えば、オーストラリアでは88%、アメリカでは64%の男性が接種しているという報告があります。
一方、日本では現在、男性への接種は任意で全額自己負担となっていて、高額な費用が普及の障害となっています。しかし、一部の自治体では男性への接種費用助成を始めていて、北海道でもいくつかの自治体が助成を始めております。
まとめ:子どもの未来への投資
HPVワクチンの接種は、お子さんの将来の健康を守るための重要な投資です。特に性交デビュー前の接種が効果的であることを考えると、小学6年生から高校生の時期に接種を検討することをおすすめします。
確かに、現時点では費用が高額であることが課題です。しかし、将来の健康リスクを考えると、十分に価値のある投資と言えるでしょう。また、自治体によっては助成制度もあるので、お住まいの地域の情報を確認してみることをおすすめします。
健康への投資は、将来の安心を得るための非常に重要な選択です。子どもにHPVワクチンを接種させることは、まさに「確実な投資」と言えるでしょう!