子どもの病気

【小児喘息ってなに?】パパママが知っておきたい診断のポイント

「夜中に咳き込んでつらそう…」
「ゼーゼーしているけど、これって喘息?」

そんな不安を感じたことはありませんか?
でも、小児喘息は1回の診察だけで診断するのがとても難しい病気なんです。

今回は、パパママが安心してお子さんの症状を見守れるよう、「喘息の診断の考え方」について解説します。

小児喘息の診断は、“くり返しの症状”がカギ

特に5歳以下の小さなお子さんでは、診断がとても難しくなります。なぜなら、風邪などでも「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音(喘鳴〈ぜんめい〉)が一時的に出ることがあるからです。

そのため、喘息と診断するためには、以下のような「くり返しのパターン」や「お薬の効果」が重要な手がかりになります:

  • 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴が、3回以上くり返されている
    風邪のたびに似た症状が出る、運動や季節の変わり目などで繰り返す、などの傾向が見られるかを確認します。
  • 吸入のお薬(気管支拡張薬)を使ったときに症状が改善する
    お薬によって呼吸が楽になった、ゼーゼーが止まった、という反応があれば、喘息の可能性が高くなります。

このように、「どのくらい症状が繰り返されているか」「薬を使ったときの変化がどうだったか」といった経過や反応をじっくりと観察することが診断のカギになります。

つまり、たった一度の症状だけで「喘息」と判断することは難しく、何度か受診を重ねながら、時間をかけて正確に診断する必要があるのです。

ゼーゼーは喘息だけじゃない!?他の病気との区別も大切!

「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音(喘鳴)があると、すぐに喘息かも?と心配になりますが、実は喘息とよく似た症状が出る病気は他にもあります。 たとえば:

  • RSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどのウイルス感染
    乳幼児に多く、一時的に喘鳴が出ることがあります。
  • 気管支炎
    風邪のあとに長引く咳が続き、ゼーゼーすることもあります。
  • 異物誤嚥
    食べ物や小さなおもちゃなどが気道に入ると、突然の呼吸困難や喘鳴が起こることがあります。
  • 他の肺の病気
    まれに、肺や気道の異常などが原因でゼーゼーが続くこともあります。

このように、喘息以外の原因で似たような音や症状が出ることもあるため、診断には注意が必要です。

必要に応じて、血液検査でアレルギーの有無や炎症の程度を調べたり、胸のレントゲン写真で肺や気道の状態を確認したり、ウイルスの迅速検査を行って原因を探ることもあります。

私たち小児科医は、症状の出方・くり返し・お薬の効き方・発作のタイミングなどを総合的に判断し、これらの病気との区別(除外診断)を丁寧に行いながら、慎重に診断しています。

喘息の症状が出るのは“夜や早朝”が多い

喘息の症状は、夜中や明け方に強く出ることが多いのが特徴です。

寝ているときに咳き込んで目を覚ましたり、明け方にゼーゼーしてつらそうな様子が見られることがあります。

でも、日中の診察時には症状が落ち着いてしまっていて、ゼーゼー音が聞こえないということも少なくありません。

そのため、パパママからの問診(お話)がとても大切な情報源になります。以下のような様子があった場合、診察時にぜひ教えてください:

  • 夜中に咳き込んで起きることがある
  • 明け方にゼーゼーしていてつらそう
  • 寝ている時に呼吸が苦しそうだった

📱 ワンポイントアドバイス:動画で記録しよう

夜間や早朝に出た咳や喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼー)の音は、スマートフォンなどで動画や音声を録っておくと、とても役立ちます。

診察時に再現できない症状も、実際の様子を記録して見せていただくことで、より正確な診断につながることがあります。

「こんな感じで咳をしていました」「この音です」と見せてもらえると、私たちもとても助かります。

初診で「喘息ですか?」と聞かれても…

初診時に「喘息ですか?」とご質問いただくことがよくあります。
そのお気持ち、よくわかります。

でも、喘息は繰り返す症状や経過を見ながら判断する病気のため、1回の診察だけで診断するのは難しいのが現実です。

少し時間はかかりますが、お子さんにとって最も適切な診断と治療を行うために、大切なステップだとご理解いただければ幸いです。

普段から“かかりつけ医”で診てもらうことが大切

喘息の診断や治療には、日頃からの診察がとても重要です。

かかりつけの先生に定期的に肺の音(聴診)を聞いてもらうことで、

  • ゼーゼーがあるかどうか
  • お薬が効いているかどうか
  • 症状の強さや傾向

などを総合的に把握できます。

ドクターショッピングより、信頼できる先生に継続して診てもらう方が安心

「症状が続いているのに良くならない…」
そんなとき、他の病院にも行ってみたくなる気持ちはよくわかります。

でも喘息は、継続的に診てもらうことで診断や治療がスムーズに進む病気です。

いくつも病院を変えるよりも、信頼できる先生に見てもらい続けることで、お子さんの体質や傾向がわかりやすくなり、よりよい治療につながります。

パパママにお願いしたいこと

喘息の診断には、日常の様子やご家族の情報がとても大切です。特に乳幼児は診察時に症状が出ていないことも多いため、ご家庭での観察が重要な手がかりになります。

診察の際に、以下のようなことを教えていただけるととても助かります:

  • 咳やゼーゼー(呼気性喘鳴)が出た時間帯(夜?明け方?日中?)
  • 発作が起きた頻度や期間(何回目か?どれくらい続いたか?)
  • 吸入薬や内服薬を使用したか、その効果はどうだったか
  • ご家族に喘息やアレルギー疾患のある方がいるか(特に親やきょうだい)

さらに、以下のような情報も、診断の判断材料となります:

  • お子さん自身にアトピー性皮膚炎の既往があるか
  • ハウスダストやダニなどのアレルゲンに対する特異的IgE抗体が陽性であるか
  • 血液検査でIgEが高値だったことがあるか、好酸球の増加が見られたことがあるか
  • 風邪などの感染がない時期にもゼーゼーが出ていることがあるか
  • 症状のある時期と1週間以上無症状の時期が交互にみられる
  • 24時間以上続く喘鳴のエピソードを3回以上経験している
  • 吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬などで症状が改善した

そのほかにも、妊娠中の喫煙歴や出生時の体重などの生活環境が影響することもあります。

これらすべてを一度にお話しいただく必要はありません。
日々のちょっとした気づきをメモしておいたり、動画で症状の様子を記録しておくことも、診察の大きな助けになります。

パパママの「気になる」という感覚をとても大切です。些細なことでも構いませんので、どうぞ遠慮なくご相談くださいね。

さいごに

お子さんの咳や呼吸の音が気になると、つい不安になってしまうもの。

でも小児喘息の診断には、「焦らず」「丁寧に」「くり返しの経過を見る」ことが何より大切です。

「これってどうなんだろう?」と思ったら、遠慮なくご相談くださいね。

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