
冬になると、静かに増えるのが 低温やけど です。
怖いのは、「熱くないから気づかない」こと。
じんわり気持ちいい熱に油断しているうちに、
皮膚の奥が静かに壊れていきます。
表面は軽症、でも中はボロボロ。
これが低温やけどのリアルです。
目次
低温やけどは、あなたの生活の中に潜んでいます

犯人は、実はいつもの“あれ”です。
- 湯たんぽ
- 電気毛布
- 電気カーペット
- カイロ
- こたつ
- ノートPCのバッテリー
- 布団の中で充電したスマホ
全部、家の中で当たり前に使っているものばかり。
だからこそ、誰でも簡単に低温やけどになります。
なぜ低温やけどは“深く”なるのか?
● 熱くないのに、時間をかけて皮膚の奥に熱を押し込んでいく。
低温やけどを起こす温度は 44〜50℃。
入浴としては“けっこう熱い”温度ですが、暖房器具やカイロの熱はじんわりしていて、
反射的に「熱っ!」とはならないんですね。
この “熱さを感じにくい”状態こそ、最大の罠。
ぬるいお湯でも長く浸かれば体の芯まで温まりますが、
暖房器具の熱も同じように、
時間をかけて皮膚の奥へゆっくり侵入してきます。
つまり低温やけどは、
弱火でコトコト煮込まれるように皮膚が焼かれる現象。
じんわりゆっくり焼かれるので、気づいたときには手遅れになりがちです。
外見は軽症。でも中身は壊れている。
低温やけどは、見た目だけだと本当に軽く見えます。
- 赤いだけ
- ちょっとヒリヒリ
- 小さな水ぶくれ
これで「大丈夫そう」と判断してしまう。
しかし——その下では、
真皮、皮下脂肪、神経まで静かに破壊されていることがあります。
痛みが弱いのは、神経までダメージが及んでいる証拠。
“痛くない”は、むしろ重症のサイン。
エビデンス:外は小さいのに、中はボロボロ。これが低温やけどの正体です。
国際誌(International Wound Journal, 2023)で206例を調べた報告がとても参考になります。
まず、驚くべきことに——
傷の大きさはめちゃくちゃ小さい。
患者さんの 85%以上が“1%未満”。
ホクロを少し大きくしたくらいです。
でもその小さな傷の ほぼ全て(98.5%)が皮下組織まで焼け落ちているⅢ度やけど でした。
外側は赤いだけでも、中は“真っ黒に焦げている”レベル。
さらに、
10人中7人以上(70%以上)が手術(皮膚移植・縫縮)を必要とした という事実もあります。
そして最も怖いデータは、
42%の人が“3週間以上放置”してから受診した こと。
理由はシンプルです。
「痛くないし小さいから大丈夫だと思った」
しかし現実は逆。
痛くない=神経まで壊れているサイン です。
つまり低温やけどは、
小さい 痛くない 軽そうに見える → 放置 → 実は深部壊死
という最悪のパターンが非常に多いのです。
外見で判断すると、普通にハマります。
低温やけどはひどい場合には何週間も修復に時間を要し、ときに手術が必要となります。
低温やけどを起こしやすい人
以下の方は、特に注意が必要です。
- 赤ちゃん
- 高齢者
- 糖尿病などで感覚が鈍い人
- 麻痺のある人
- 泥酔して寝てしまう人
- 寝返りが少ない人
共通点は、
「熱いと気づけない」「すぐに避けられない」 こと。
意外と知られていない“落とし穴”たち
● ノートPC
太ももに置きっぱなし → バッテリーが熱を持つ → 深いやけど
● スマホ
布団の中で充電 → 熱がこもる → 足や腹部をジワジワ焼く
今日からできる対策
● 湯たんぽは「布団に入る前に出す」
タオルで包んでも44℃×5時間でアウト。
● 電気毛布は「寝るときは電源オフ」
寝落ちこそ最大の敵。電気毛布の役割は、寝る前までに布団を温めておくことです。
● カイロは「直貼り禁止」「同じ場所に貼りっぱなし禁止」
時々位置を変えるだけでリスクが大きく減ります。
これ、1つでも当てはまったらマズイかも
- 赤みが1〜2日で引かない
- 水ぶくれがある
- 黒い or 白い部分がある
- 触ると硬い
- 痛みが弱い・無痛
- 見た目と感覚が一致しない
これらはすべて、深部壊死のサインかもしれません。
結論:迷うくらいなら、皮膚科 or 形成外科へ。
低温やけどは、
放置すると確実に悪化する“静かに進行するやけど”。
- 小さくても
- 痛くなくても
- 赤いだけでも
皮膚科・形成外科に相談するのがベターです。
最後に:冬の“ぬくもり”は、時に皮膚を焼きます。
低温やけどは、
“熱くないから安心”ではありません。
熱くないことこそ危険 なんです。
この冬は、
- 湯たんぽは寝る前に出す
- 電気毛布は寝る前に消す
- スマホやPCは体から離す
これだけで、自分の皮膚を守れます。
暖かく、そして安全に、冬を乗り切りましょう。