
風邪をひいて3日目。声はまだガラガラなのに、仕事の電話に出なければいけない。「もしもし」と言った瞬間、相手に「……どちら様ですか?」と聞き返された。
そんな状態で病院に行ったら、先生に「喉は赤くないですね」と言われた。
え、赤くないの?じゃあこの声、なに……?
そう思ったこと、ありませんか? 実はこれ、診察あるあるのひとつで、患者さんがびっくりされるシーンのひとつだったりします。
「喉」ってどこのこと?

口を大きく開けて「あーー」ってやると、奥に見えるアレ。ぶらさがっているやつ(口蓋垂)の周りの、赤みがかった部分。あそこが、多くの人がイメージする「喉」ですよね。
でも声を作っているのは、そこじゃないんです。
声は声帯という器官で作られます。場所はもっと奥——喉頭(こうとう)と呼ばれるところにあって、口を開けただけでは見えません。喉頭ファイバーという細い内視鏡を使わないと、直接確認できない場所です。
声がガラガラになる仕組み

風邪のウイルスが声帯に炎症を起こすと、声帯の粘膜が充血して腫れます。すると声帯がきちんと閉じなくなる。その「すき間」から空気が漏れて、ガラガラ・かすれた声になるわけです。
一方、口を開けて見える「咽頭」の部分は、それほど炎症が強くないこともある。だから「赤くない」という所見と「声がガラガラ」という症状が、同時に起きるわけです。
「赤くない」=「異常なし」じゃない
「喉が赤いかどうか」と「声がガラガラかどうか」は、見ている場所が違う。
これだけなんです。矛盾しているわけじゃない。
診察で「赤くないですよ」と言われても、ガラガラ声の原因はちゃんとある。医師が見落としているわけでも、気のせいでもありません。声帯という、口の奥のそのまた奥で、ちゃんと炎症が起きています。
自宅でできるケア

声帯炎の回復には、特効薬よりも地道なケアが大切です。基本は次の4つ
① 安静(声を出さない)
声帯を休めることが最優先です。声がれているときに無理に声を出すと、腫れた粘膜にさらに摩擦がかかり、回復が遅れます。注意したいのがひそひそ声(囁き声)。「声を出さないようにしている」つもりでも、実は声帯に通常の発声と同じくらい負担がかかっています。会話はできるだけ筆談やスマートフォンのテキストで代用し、声帯を徹底的に休ませましょう。
② 加湿・保湿
乾燥した空気は声帯の大敵です。粘膜が乾くと炎症が悪化しやすく、回復も遅くなります。室内では加湿器を使って湿度を50〜60%程度に保つのが理想的。外出時や就寝時はマスクの着用が効果的です。自分の呼気で口元の湿度が保たれ、乾いた空気を直接吸い込むことを防いでくれます。
③ 水分補給
こまめな水分補給は、喉の粘膜を潤した状態に保ち、ウイルスや細菌を洗い流す効果も期待できます。飲み物は常温か温かいものがおすすめ。冷たい飲み物は粘膜を刺激することがあるので、できれば避けましょう。緑茶やコーヒーは利尿作用があるため、水や麦茶・白湯を中心にするとより効果的です。
④ 禁煙・刺激物を避ける
タバコや香辛料など、喉への刺激になるものはしばらくお休みを。
こんなときは耳鼻科へ
風邪による声帯炎は、声を休めてケアを続ければ1〜2週間ほどで自然に回復することがほとんどです。
ただし、次のような場合は耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。
- 声がれが2週間以上続いている
- 発熱や強い喉の痛みを伴っている
- 声がれが繰り返す、またはだんだん悪化している
- 呼吸のしづらさや飲み込みにくさがある
長引く嗄声は、声帯ポリープや逆流性食道炎など、風邪とは別の原因が隠れていることもあります。「風邪だから」と放置せず、気になったら早めに専門医に診てもらいましょう。
まとめ
- 口を開けて見える「咽頭」と、声を作る「声帯」は場所が違う
- 風邪のとき声がガラガラになるのは、声帯が腫れて閉じにくくなるから
- 「喉が赤くない」と「声がガラガラ」は矛盾しない
- ケアの基本は安静・加湿・水分補給・刺激物を避けるの4つ
- 声がれが2週間以上続くときは耳鼻科へ
——それにしても「声を出さない」って、意外と難しいですよね。