予防接種 大人 子ども

「任意接種って、受けたほうがいいんですか?」──「任意」の本当の意味を整理します

📅 2026年6月8日 (0日前に公開)

診察室や受付で、よくこんな質問をいただきます。

「これって任意接種ですよね。受けたほうがいいんですか?」

とてももっともな疑問です。ただ、この「任意」という言葉、実は多くの方が思っているのとは少し違う意味で使われています。今日はそこを、できるだけ整理してみます。

📋 この記事でわかること

  • 「任意接種」の「任意」が本当は何を意味するか
  • 定期接種と任意接種は病気の重さで決まっているわけではないこと
  • 任意接種でも重い合併症を防げるワクチンがあること

「任意」は「やってもやらなくてもいい」ではありません

日常の言葉だと、「任意」は「自由参加」「やらなくても大丈夫なもの」というニュアンスで使いますよね。でも、予防接種でいう「任意接種」の「任意」は、意味が違います。

「任意接種」の「任意」は、"費用を自分で払う"という制度上の区分のことです。「医学的に打たなくていい」という意味ではありません。

ここが一番のポイントなので、もう一度だけ。任意接種とは「自費で受けられる予防接種」のことであって、「重要度が低いワクチン」という意味ではないのです。

定期か任意かは、病気の重さで決まっているわけではない

「じゃあ、定期接種のほうが大事で、任意は二の次ってこと?」と思われるかもしれません。これも、よくある誤解です。

定期接種か任意接種かの線引きは、病気の重さや重要度で決まっているわけではありません。国の予算や政策、これまでの経緯といった事情で区分されている部分が大きいのが実情です。

実際、制度は年々変わります。たとえば帯状疱疹のワクチンは2025年4月から65歳の方などを対象に定期接種になり、RSウイルスの母子免疫ワクチン(妊婦さん向け)も2026年4月から定期接種になりました。それ以前は任意接種だったものが、制度の見直しで定期に切り替わったわけです。病気そのものが急に重くなったからではありません。

つまり、「任意だから軽い病気」「定期だから重い病気」という連想は、必ずしも正しくないということです。

よく相談される任意接種ワクチン早見表

「自費だから重要じゃないんでしょ?」と感じる方もいらっしゃいますが、費用がかかるかどうかと、病気の重さは別のことです。実際、任意接種の中にも、かかると重い合併症を防げるワクチンがあります。当院でよくご相談を受けるものを表にまとめました。

ワクチン札幌市での扱い(2026年6月時点)押さえておきたいポイント
おたふくかぜ任意。生後12〜36か月未満は札幌市の一部費用助成ありまれに難聴など治りにくい合併症。1歳と就学前の2回がすすめられます
子どものインフルエンザ任意。札幌市は子どもの接種費用を一部助成(例年10月〜翌1月)毎シーズン流行。重症化・合併症の予防に。年齢で接種回数が変わります
帯状疱疹(50歳〜)65歳など対象年齢は定期(一部公費)/対象年齢以外は任意・自費50歳から接種可能。シングリックスは2回接種
RSウイルス(高齢者・60歳〜)任意・自費(妊婦さん向けの母子免疫ワクチンは2026年4月に定期化)高齢者向けは自費のまま。妊婦さん向けとは別のワクチンです
男性のHPV任意・自費(自治体により助成。札幌市では2026年6月の時点では助成なし)肛門がんや尖圭コンジローマなどの予防。関心が高まっている分野です

※区分・対象年齢・助成の内容は年度や自治体で変わります。最新の対象可否は、お住まいの医療機関にご確認ください。

たとえばおたふくかぜは任意ですが、まれに難聴など、治りにくい合併症を残すことがあります。一度失われた聴力が戻りにくいケースもあり、「軽い子どもの病気」と片づけられないワクチンです。「自費=軽い病気」ではない、ということがお分かりいただけると思います。

むしろ「効く薬がない」病気こそ、ワクチンで防ぐ意味が大きい

ここで、もうひとつ強調しておきたいことがあります。これらの任意接種が対象とする病気は、かかってしまうと、効く薬がない、あるいは対症療法(つらい症状をやわらげる治療)しかできないものが多いのです。

おたふくかぜも、RSウイルスも、ウイルスそのものをやっつける特効薬はなく、基本は安静と対症療法で乗り切るしかありません。HPVも、感染そのものを治す薬はありません。だからこそ、いったん難聴やこじれた合併症が残ってしまうと、後から取り戻すのが難しいのです。

つまりこれらの病気は、「かかってから治す」よりも「かかる前にワクチンで防ぐ」ことの意味がとりわけ大きい、というタイプです。任意接種だからと後回しにせず、しっかり予防しておく価値がある。これが、費用や区分の話以上にお伝えしたい一番のポイントです。

費用が気になって迷うときは(札幌市の助成)

「必要なのはわかるけど、自費だと少し高くて迷う」というのも、とても自然なお気持ちです。札幌市にはいくつかの助成制度があるので、知っておくと選択の幅が広がります。

おたふくかぜは、札幌市にお住まいで生後12〜36か月未満のお子さんについて、任意接種費用の一部が助成されます(過去に接種・罹患歴のある方は対象外、市外の医療機関での接種は対象外)。接種の際は、本人確認ができるものと母子健康手帳をお持ちください。

帯状疱疹は2025年4月から定期接種になり、その年度に対象となる年齢の方は一部公費で受けられます。対象年度・年齢には期限があるため、案内が届いた方は年度内の接種をおすすめします。対象年齢以外の方が希望して受ける場合は、任意・自費になります。

最終的には、費用と、かかったときのリスクの両方を踏まえて、医師と相談して決めていただくのがいちばんです。「この子(この年齢)にとって、このワクチンはどのくらい意味があるのか」は、お一人おひとり違います。気になる病気があれば、遠慮なくご相談ください。一緒に確認しましょう。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 任意接種は何歳まで受けられますか?

ワクチンごとに推奨される年齢が違い、一律の上限があるわけではありません。たとえばおたふくかぜは乳幼児期の2回接種がすすめられますが、未接種の年長児や大人が検討する場合もあります。帯状疱疹は50歳から接種できます。ご自身やお子さんの場合にどうかは、受診時にご相談ください。

Q. 定期接種と任意接種は、同じ日に一緒に打てますか?

多くの組み合わせは同時接種が可能です。ただし、注射の生ワクチン同士(例:おたふくかぜとMRなど)は、片方を打ったらもう片方まで27日以上あけるルールがあります。スケジュールはお一人ずつ違うので、母子健康手帳を持参のうえ医師・看護師にご相談いただくのが確実です。

Q. 札幌市の助成はどうやって受けるのですか?

札幌市の助成は、原則として市内の協力医療機関で接種した場合に受けられます。接種時に、本人確認ができるもの(マイナンバーカードや資格確認書など)と母子健康手帳をお持ちください。市外の医療機関での接種は対象外になることが多いので、事前のご確認をおすすめします。詳しくはお住まいの区の保健センター、または札幌市保健所感染症総合対策課へ。

まとめ

最後に、今日のポイントを4つだけ。

  • ひとつ、「任意」は"自費"という意味で、"打たなくていい"という意味ではありません。
  • ふたつ、定期か任意かは病気の重さではなく、国の制度上の区分です。任意でも重い合併症を防げるワクチンがあります。
  • みっつ、これらの病気は効く薬がなく対症療法しかないものが多く、「かかってから治す」より「かかる前に防ぐ」価値が大きいタイプです。

※ワクチンの制度・対象年齢・助成の内容は、年度や自治体によって変わります。最新の対象可否は、お住まいの医療機関にご確認ください。

📅 診察のご予約はこちら

Web予約はこちら

南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。「がんばりすぎない健康」をテーマに情報発信中。 お問い合わせはこちら

-予防接種, 大人, 子ども
-, , ,