「成功とは何度倒れても、立ち上がることだ」といわれますが、今日はぼくの経験をお話します。
2020年5月、ぼくは新型コロナウイルスによる肺炎にかかり、入院加療が2週間続きました。入院当初は強い倦怠感のため寝返りも辛い状態。電動のリクライニングベッドじゃなければ身体を起こすこともできない。咳嗽も強く、咳嗽のため嘔気が止まりません。咳嗽が連続で出るため胸部CTもなかなか撮れない。下痢も頻回でトイレから出られない状態です。
入院加療を開始して点滴・内服薬治療のおかげで少しずつ体力が回復していきました。入院中にとりわけ辛いことの一つは入院生活が独りぼっちであったことでした。ご存じの通りコロナウイルス感染の流行期であったため面会はもちろん禁止です。
ぼくは入院が2週間足らずでしたが、長期入院を余儀なくされている方々のことを考えると、非常に心苦しく感じます。入院中に面会してもらうときっと勇気づけられると思います!(面会を受けたことがないので想定)
念願の退院となりました。
しかし、退院後も咳が続き、平衡感覚を失い、めまい、ブレインフォグ、下痢が続き、日常生活がままならない状態が続きました。
肺炎で入院した患者さんはこれまでたくさん診療してきたので、「しばらく寝ていたから筋力が落ちているだけだろう」と考えていましたが、症状がなかなかよくならず、ずるずると結局一か月近く診療をお休みすることになってしまいました。5分たらずもじっと座ることもできず、物事を記憶できない状況だったからです。
退院して一週間くらいしてなんとか座れるようになったので、近所を散歩をすることから始めました。目標を立て、50メートル先のコンビニに新聞を買いに行ったり、近所を一周したりすることを目標にして始めました。
小さくても目標を立てていかないとずっと回復できなんじゃないかという不安がありました。「この頭の中が霧がかっていて、景色をみるとセピア色のレンズを通してみるような感じがいつ改善するだろう」と焦っていました。
歩き始めた当初は気分不快のためマンションから出ることができずにUターンすることもありました。
高齢者がコロナウイルスに罹患して回復できない方がいらっしゃるのも納得できます。
今日、ちょうど同じ道を歩いたのですが、当時の思い出がよみがえってきました。一歩一歩が本当に辛かった。歩いているときに感じた辛さやつらさは、ぼくにとってとても強い刺激になりました。
「死にいたることはなかったので良かった」と思うのと同時にコロナのリスク因子である肥満がある自分を深く反省しました。
もしかしたら、病気や怪我をすることは自分自身を俯瞰するチャンスかもしれません。それ以来、瘦せようと努力するようになりました。
歩くことを通じて学んだことは、"小さなことに感謝することが大切"ということです。John Woodenの言葉である"大切なのは、小さなことだ。小さなことが、大きな出来事をひき起こす"という言葉がありますが、これは本当にその通りだと感じます。
いまは普通に歩くことができます。一見、当たり前のことですが、失うことでその大切さを改めて感じることができました。小さな目標を立てて、少しずつ進むことが自信につながり、日々の小さな幸せに気づくことができるようになりました。
あの当時歩いた道はお世辞にもキレイな道とはいえません。しかし、そんな道を歩けるということが美しくて感動的なのです。
みなさんの小さな幸せはなんでしょうか?