
※この記事は 6 月 10 日公開の「風邪で“声がガラガラ・かすれる”のはなぜ?〈声帯で起こること〉」の続きとして、セルフケアのコツをまとめたものです。
対象読者:風邪や声の酷使で嗄声(かすれ声)になり、できるだけ早く普段の声を取り戻したい方
注意:発熱・激痛・呼吸困難・血痰などがある場合は、この記事のセルフケアに頼らず耳鼻咽喉科を受診してください。
1.まずは “声帯安静”――休ませる時間が治癒を左右する
- 声帯は筋肉+粘膜でできた繊細な構造。炎症時にこすれ合うほど治りが遅れます。
- 聞き取りやすい“ささやき声”でも声帯は強く衝突しています。
- 目安:発症後 24〜48 時間は完全ボイスレスト
- 会話 → 紙メモ・スマホの文字入力に置き換え
- オンライン会議 → チャット機能・AI読み上げを活用
- 家族への指示 → ハンドサインや付箋メモを準備
ワンポイント:仕事で「絶対に話さねばならない」場面があるなら、発声時間を合計30分以内に抑え、こまめに水を含みましょう。
2.加湿と水分補給で声帯をしっとり保つ

シーン | 推奨アクション | 理由 |
---|---|---|
室内 | 加湿器 + 湿度 50〜60 % | 粘膜乾燥を防ぎ、咳反射を減らす |
就寝前 | 常温水 200 mL + マスク着用 | 口呼吸による夜間乾燥を防ぐ |
日中 | 1.5〜2 L の水・白湯・ハーブティー | 体内から粘膜に潤いを届ける |
カフェイン・アルコールは利尿作用で脱水を進行させるため控えめに。
3.温める & 冷やさない――血流アップで修復を加速
- 温かい飲み物:ショウガ湯・はちみつレモン・鶏スープ
- 首元保温:マフラー・ネックウォーマーで外気温差を緩和
- 刺激物を避ける:唐辛子・炭酸・揚げ物は粘膜をさらに傷めがち
4.セルフうがい 三本柱
- 生理食塩水(コップ1杯200 mLに塩1.8 g)
- 緑茶うがい:カテキンの抗ウイルス作用
- 市販うがい薬:セチルピリジニウムなど殺菌+鎮痛
→ 15 秒×3回 を1日3〜5セットが目安
5.のど飴 & スプレーの選び方

- 保湿成分:グリセリン・ペクチン入りを最優先
- ハーブ系メントール:吸気をスースーさせすぎると乾燥⚠
- 局所麻酔入り:痛みを感じにくくなる分、1日2〜3回までに制限
6.生活習慣リセット
項目 | ベターな行動 | メカニズム |
---|---|---|
喫煙 | 完全禁煙 | タールが線毛の再生を阻害 |
飲酒 | 量を半分以下 | アルコール性脱水を抑える |
睡眠 | 6 時間以上 | 成長ホルモンが粘膜修復を促進 |
栄養 | ビタミンA(にんじん)、C(キウイ)、E(ナッツ) | 粘膜の再生に必須 |
7.リカバリー期の やさしいボイスエクササイズ
ストロー発声(ストロー・フォネーション)
用意するもの
- 直径 3〜5 mm / 長さ15〜20 cm のストロー
- 3分の1ほど水を入れた紙コップ(紙コップ推奨:割れずに軽い)
手順
- ストローを軽くくわえ、コップの水面につける
- 息だけで「ブクブクブク…」と5 秒吐く
- 息が一定になったら、ごく小さく声を乗せて再び5 秒
- 5回繰り返し → 1分休憩 → もう1セット(1日3セットまで)
ポイント
- 水の抵抗で息が自然に細く長くなり、加湿効果もプラス
- 喉に力が入る・水が飛び散るときは、ストロー径を太く or 水位を低く調整
- 痛みがある日は息だけに戻し、無理に声を乗せない
うまくできているサイン
- 水泡が均一に「プクプク」と立つ
- 発声後に声が通りやすく、喉がスッと軽い
その他のエクササイズ(概要のみ)
種類 | 目的 | やり方(目安) |
---|---|---|
息漏れハミング | 声帯を軽く閉鎖しつつ振動を再学習 | 口を閉じ「ん〜」と10 秒 ×1日5回 |
リップトリル | 呼気コントロール & 緊張ほぐし | 唇を震わせ “ブルル” を5 秒 ×1日5回 |
これらは ウォームアップ として短時間取り入れる程度で十分に効果があります。
8.受診のタイミング(セルフケアで様子を見ていいのはここまで)

セルフケアは軽い症状の “回復を後押しする” ためのものです。
ところが、炎症が深く広がっている場合や気道が狭くなりかけている場合は、いくら加湿やエクササイズをしても改善しません。むしろ治療が遅れると、
- さらに声が出なくなる
- 強い呼吸困難を引き起こす
- 細菌感染が拡大し全身症状を伴う
など、緊急処置が必要な状態へ進行するおそれがあります。
そこで下のチェックリストを目安に、「ここに当てはまったらセルフケアは中断し、医療機関へ直行」 と覚えてください。
症状 | 想定される疾患 | 受診目安 |
---|---|---|
唾液も飲み込めないほどの喉痛 + 38 ℃以上の発熱 | 急性喉頭炎・溶連菌 | 早めに(24 h以内) |
声がほぼ出ないまま 7日 以上 | 声帯結節・ポリープ | 受診 |
呼吸時にヒューヒュー・ゼーゼー | 喉頭浮腫・喘息 | すぐに |
まとめ
- 休ませる:最初の 48 h がカギ
- 潤す・温める:粘膜を乾かさない
- 半閉鎖エクササイズ:息漏れハミング → リップトリル → ストロー発声の順で段階的に
- 生活習慣:禁煙・節酒・十分な睡眠で回復を底上げ
これらを守れば、軽度の嗄声は通常 数日〜1週間 で快方に向かいます。改善が乏しい、または表の受診サインがある場合は、医療機関受診を検討してください。