
フィンランドの大学研究チームが、2025年にとても興味深い研究結果を発表しました。
それは、「お口の中にいるごく普通の細菌が、心臓の血管の中に入り込み、心筋梗塞などの重大な病気の原因になっているかもしれない」という報告です。
わたしも歯周病のため歯科医院に通院中なのでとても他人事ではない話だと思って読みました。おそらく関係のないヒトは一人もいないのではないかと思います。是非、最後までお読みください。
目次
🧫 研究で見つかった「歯のばい菌」
研究では、突然死された方の心臓の血管や、手術で取り出された血管を詳しく調べました。
すると、およそ4割の血管から「緑色レンサ球菌(りょくしょくれんさきゅうきん)」という口の中の常在菌の遺伝子が検出されました。
この菌は、ふだんは歯の表面にくっついて“歯垢(しこう)”を作る常連さんです。
しかし、ときに「バイオフィルム」という膜をつくって身を守るようになります。
🧫 バイオフィルムってなに?
じゃあ、バイオフィルムって何かというと、バイオフィルムは微生物たちが自分たちの周りに粘り気のある膜を作って、集まって暮らす“すみか”のようなものです。水道のぬめりや、歯の表面にできる歯垢もその一種です。
この膜は、ただの汚れではありません。実はとても強力なバリア構造を持っています。
強固なバリア
微生物が分泌する粘着性の物質(菌体外多糖類など)が壁のようになり、抗菌薬や免疫細胞が中の菌に届きにくくなります。
物理的・薬剤的な抵抗性
一度できたバイオフィルムは物理的に取り除くのが難しく、薬がとても効きにくくなります。
微生物の共同体
ひとつの菌だけでなく、複数の菌が共存し、互いに助け合いながら生きています。そのため、外から攻撃しても簡単には壊れません。まさに「チームで守る要塞(ようさい)」のような存在なのです。
💥 血管の中でも「隠れていた」ばい菌
研究では、このバイオフィルムが心臓の血管の中にも存在していることが確認されました。
免疫細胞(マクロファージなど)は、この膜の中の菌を認識できず、菌たちはまるで冬眠しているかのように静かに潜んでいたのです。
ところが、何らかのきっかけで膜が壊れ、菌が外へ飛び出すと、免疫が強く反応して炎症が起こり、血管の壁がもろくなります。
その結果、血管の「プラーク(こぶ)」が破れ、血のかたまり(血栓)ができ、心筋梗塞などの発作につながる危険があると考えられています。
🪥 歯と心臓の健康はつながっている

歯周病や虫歯の治療のあとには、一時的に菌が血液の中に入ることがあります。
通常は体の免疫がすぐに処理してくれますが、血管の壁が弱っている場合には菌が入り込み、バイオフィルムを作ることもあります。
つまり、お口の健康を保つことは、血管と心臓の健康を守ることにもつながるのです。
❤️ 日常でできる予防
難しいことはありません。基本は「お口のケア」です。
- 毎日のていねいな歯みがき(特に寝る前)
- 定期的な歯科検診とプロによるクリーニング
- 虫歯や歯ぐきの腫れを放置しない
- タバコを吸わない
- 糖尿病や高血圧などの生活習慣病をしっかり管理する
これらを続けることで、口の中だけでなく心臓や血管の健康も守ることができます。
おそらく毎日のように歯を磨いていると思いますが、プロ(歯科衛生士)に磨き方を教わることをお勧めします。普段の積み重ねが大切ですが、積み重ね方もとても大切です。
🧠 最後に
心臓の病気は、血圧やコレステロールだけでなく、「見えない炎症」や「お口の環境」も深く関わっていることが、少しずつ明らかになっています。
毎日の歯みがきや歯科検診は、小さなことのようでいて、実は“心臓を守る行動”でもあるのです。
今日のケアが、10年後のあなたの健康を支えます。お口のこと、体のこと、どちらも一緒に見つめていきましょう。