
インフルエンザが本格的に流行りつつあります。
「熱が出てきた…もしかしてインフル?赤ちゃんに母乳あげても大丈夫かな?」という相談が増えてきました。
授乳中のママがインフルエンザにかかると、真っ先に心配になるのが赤ちゃんへの影響ですよね。でも安心してください。授乳は続けて大丈夫です。
目次
母乳からはうつりません
インフルエンザは咳やくしゃみの飛沫、触った手などからうつる病気です。母乳そのものからうつることはありません。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)も、インフルエンザの治療中でも母乳を赤ちゃんにあげてよいとはっきり伝えています。世界中の母乳育児の専門家も同じ見解です。
大切なのは「授乳をやめること」より「うつさない工夫」
授乳そのものをやめる必要はありません。大切なのは、赤ちゃんにウイルスをうつさないための対策です。
今日からできる3つの基本対策
- マスクをつける
授乳のときも、赤ちゃんのそばにいるときも常にマスクを。咳やくしゃみが出そうなときは、肘の内側で口を覆いましょう。 - 手を洗う・消毒する
授乳の前後、鼻をかんだ後、咳やくしゃみをした後は必ず石けんで20秒以上手を洗うか、アルコール消毒を。 - つらいときは搾乳を
体がきつくて赤ちゃんを抱っこするのも大変…そんなときは搾乳して、パパや家族に哺乳瓶であげてもらうのもOKです。搾乳の道具は清潔に保ちましょう。
実は母乳が赤ちゃんを守ってくれる

「授乳を続けていいの?」と不安になるかもしれませんが、実は逆なんです。
ママがインフルエンザと闘っている間、体の中では抗体(ウイルスと闘う成分)が作られています。その抗体は母乳にも出て、赤ちゃんの口や喉の粘膜を守ってくれます。
特に「分泌型IgA」という抗体は、赤ちゃんの体の入り口でウイルスをブロックする働きがあります。インフルエンザが流行している時期こそ、母乳の力は心強い味方なのです。
お薬は飲んでも大丈夫?
タミフル(オセルタミビル)なら安心
授乳中に飲める抗インフルエンザ薬の代表がタミフルです。
母乳に移行する量はごく少量で、赤ちゃんへの影響はほとんど心配ありません。実際のデータでも、赤ちゃんが母乳から受け取る量は、子どもに処方される治療量よりずっと少ないことがわかっています。
ゾフルーザ(バロキサビル)は避けて
一方、比較的新しい薬のゾフルーザは、授乳中のママには推奨されていません。授乳中の安全性データがまだ十分でないためです。
病院を受診するときは「授乳中です」と必ず伝えてください。お医者さんが授乳に適したお薬を選んでくれます。
イナビルとリレンザは授乳中でも使える?
結論:どちらも授乳を続けながら使用可能と考えられます。どちらも吸入薬で体内に取り込まれる量が少なく、母乳に移行してもごくわずかと推定されるためです。
リレンザ(ザナミビル)
吸入タイプ。消化管からほとんど吸収されない性質があり、授乳中でも乳児への影響は起こりにくいと考えられています。ただし、喘息やCOPDのある方には非推奨。気管支けいれんのリスクがあるため、呼吸器の持病がある場合は医師に必ず相談してください。
イナビル(ラニナミビル)
こちらも吸入タイプで、通常は1回の吸入で治療が完結するのが実用的な利点です。授乳中のヒトでの詳しいデータは多くありませんが、全身吸収が少ないことから授乳継続は原則可能と考えられます。
こんなときは早めに受診を
- 高熱(38.5℃以上)が続く
- 息苦しさを感じる
- 水分が摂れない、おしっこが減った
- 持病がある(喘息、糖尿病など)
- 出産して間もない(特に産後2週間以内)
産後まもないママや持病のあるママは重症化しやすいことがあります。「ちょっとおかしいな」と思ったら、我慢せず早めに医療機関に相談しましょう。
インフルエンザは発症から48時間以内に治療を始めると効果が高い病気です。早めの対応が回復への近道です。
インフルエンザワクチンも授乳中OK
予防の話もしておきますね。インフルエンザワクチンは授乳中でも接種できます。
ママがワクチンを打っても、母乳の安全性には影響ありません。むしろママが予防接種を受けることで、赤ちゃんを守ることにつながります。
ママ自身を大切にすることも忘れずに
インフルエンザにかかったら、何よりママ自身が休むことが大切です。
- 水分をこまめに摂る(麦茶、スポーツドリンク、スープなど)
- 無理せず横になる時間を作る
- 家族に家事や上の子の世話をお願いする
- 赤ちゃんのお世話も最小限に(おむつ替えや授乳以外は家族に頼む)
「赤ちゃんのために頑張らなきゃ」と思うかもしれませんが、ママの体が回復しないと赤ちゃんのお世話も続けられません。遠慮せず周りに助けを求めてくださいね。
まとめ:覚えておいてほしい4つのこと
- 授乳は続けてOK ー 母乳からはうつりません
- マスク・手洗い・消毒 ー 基本の感染対策が一番大事
- 母乳の抗体が赤ちゃんを守る ー やめる必要はありません
- タミフル・吸入タイプのイナビル・リレンザは授乳中も使える ー 受診時は「授乳中」と伝えて
インフルエンザの流行期は不安になりやすいですが、正しい知識があれば大丈夫。いつも通りの授乳を続けながら、感染対策をしっかりして、無理のない範囲で休養と水分補給を心がけましょう。
一人で抱え込まず、困ったときは医療機関や地域の保健師さん、母乳育児相談などに相談してください。
ママも赤ちゃんも、元気に乗り切れますように。