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2025年、外来で多かった相談ベスト10

WEB問診の集計データと、現場の実感から振り返る

2025年も残すところあとわずかとなりました。 今年、当院で導入しているWEB問診に寄せられた膨大な回答を改めて集計してみたところ、2025年という一年がどのような体調トラブルの多い年だったのか、その輪郭が浮かび上がってきました。

データ上の数字はもちろんですが、そこには「いつ、どんな状況で困っていたのか」という、皆さんの切実な声が詰まっています。このランキングが、年末年始の体調管理や、もしもの時の判断を助けるヒントになれば幸いです。

2025年 相談ランキング

第10位:下痢

冬のノロウイルス流行が顕著に
特に冬場に入ってから、家族内や集団生活での広がりが目立ちました。下痢は体がウイルスを出そうとする反応でもあります。「様子を見てよい下痢(水分が取れている)」と「受診すべき下痢(血便や強い腹痛、脱水症状)」を見極めることが、回復への近道です。

第9位:検査の希望

「異常」を「予防」に変える一歩
こちらは成人の受診が中心でした。健康診断で数値を指摘され、「念のため」と来院される方が多く、背景に生活習慣病が潜んでいるケースも散見されました。

検査は、悪いところを見つけて「判定」を下すためのものではありません。 今の体の状態を正しく知り、「これから先、健やかに過ごすために何を変えればいいか」を、患者さんと一緒に考えていくための地図のようなものです。

是非、検査をして今後の方針を考えましょう。

第8位:発疹

全身を映す鏡としての皮膚
今年はリンゴ病(伝染性紅斑)や水痘(水ぼうそう)が印象的でした。発疹は、単なる皮膚のトラブルではなく、体の中のウイルス反応が表面に出ていることも多いものです。皮膚だけを見ず、「ぐったりしていないか」という全身状態を観察することが、医師の視点でも重要になります。

第7位:嘔吐

「吐いた=点滴」とは限りません
胃腸炎だけでなく、激しい咳込みによって吐いてしまうケースも多く見られました。大切なのは、吐いた直後の対応です。

まずは胃を休め、スプーン1杯の水分から再開できるか。水分摂取と活気(元気が少しでもあるか)が、重症度を測る最大の指標になります。

第6位:腹痛・胃痛

痛みの「強さ」よりも「変化」に注目
胃腸炎だけでなく、便秘や心理的ストレスが原因となるケースも多く見られました。診断の手がかりになるのは、痛みの強さそのものよりも、「場所が移動していないか」「時間とともに悪化していないか」という経過です。

例えば、「最初はみぞおちが痛かったのが、数時間経って右下腹部に移ってきた」という場合、虫垂炎(もうちょう)の典型的なサインかもしれません。痛みを「点」ではなく「経過」で捉えることが、とても大切です。

第5位:鼻水

北国特有の花粉スケジュール
4月のハンノキ、5月のシラカバ。今年も例年通り、春先の花粉症相談が相次ぎました。風邪との区別がつきにくいものですが、「目のかゆみの有無」や「鼻水の透明度」、「くしゃみ」が判断の目安になります。

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第4位:その他の相談

「その他」が増えたのは、私たちの問診票が長すぎたせい…?
実はWEB問診の結果で非常に多かったのがこの項目です。「どの項目にも当てはまらない」という声の裏には、もしかすると当院の問診票が細かすぎて入力が面倒だったり、どれを選べばいいか迷わせてしまったりした面もあるかもしれません。これは私たちの反省点でもあります。

同時に、「どの項目にも当てはまらない」という皆さんの切実な声の受け皿でもあったようです。問診表の見直しも定期的に行っていきます。

第3位:咳

百日咳の流行と、隠れた喘息症状
2025年は百日咳の流行が大きな特徴でした。また、季節の変わり目には「風邪だと思っていたら実は軽い喘息発作だった」というケースも。マイコプラズマ感染症も目立ちました。咳嗽がひどくて眠ることができないといった場合には受診をお勧めします。

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第2位:こどもの発熱

11月のインフルエンザ急増
小児科を併設する当院では、最も切実な相談の一つです。特に11月はインフルエンザが猛威を振るいました。

親御さんは「何度まで上がるか」を心配されますが、医師が重視するのは「熱の高さよりも、呼吸の苦しさや水分が取れているか、全身状態」です。

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また、発熱から検査までの時間が短すぎる方が少なくありませんでした。

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第1位:かぜ・胃腸炎などの症状

「風邪ひとつでも相談していい」という安心を
今年を象徴する、圧倒的に多い相談でした。年末年始は、人の移動や寒暖差、そして一年の疲労が重なり、抵抗力が落ちやすい時期です。

当初は「たんなる風邪」と思われていても長引く場合には肺炎、喘息になっている場合にもあります。

まとめ|今年の外来が教えてくれたこと

ランキングを振り返ると、その多くは感染症や付随する症状でした。しかし診察室で感じた本質は、病名そのものよりも、「どう判断し、どう対処すればいいかわからない、いつ外来を受診したらよいかわからない」という不安の多さです。

情報が溢れる時代だからこそ、現場のわたしたちに求められるのは、単に薬を出すことだけではありません。患者さんの不安を解消して、次のアクションを提示していかなければならないと考えてます。

年末の一言

今年一年、当院を信頼して受診してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。
どうぞ、健やかな新年をお迎えください。

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

【この記事を書いた医師】 南22条おとなとこどものクリニック 院長 小児科・総合内科 この記事は、札幌市で日常診療を行っている医師が、 診察室でよく受ける質問をもとに執筆しています。

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