
日々の外来で膀胱炎で受診される方は珍しくありません。
膀胱炎は女性にとても多い病気です。また、繰り返すことが多い病気なので、たいていのかたは「また、なっちゃいました~」って感じで受診されます。
しかし、ごくまれではありますが、
「膀胱炎だと思っていたら、実は別の病気だった」
・・・そんな場面に、これまで何度も出会ってきました。
今日は、実際に外来であった話をもとに、
「膀胱炎かな?」と思ったときに、少しだけ立ち止まって考えてほしいこと
をお伝えします。
目次
最初は膀胱炎でもいいけど・・・

多くの人がこう考えます
- 排尿時にしみる
- トイレが近い
- 残尿感がある
👉 「あ、また膀胱炎だ」
これは自然な反応です。
膀胱炎は、何度か経験すると「わかった気」になりやすい病気だから。
でも、ここが落とし穴
膀胱炎っぽい症状 = 膀胱炎とは限らない
しかも厄介なのは
👉 最初は見分けがつかないこと
結論はシンプル
大事なのは「最初の判断」より「途中で気づけるか」
「膀胱炎だと思う」→ OK
でも
経過がズレたら、考え直す → これが重要
病気は「スタート」より
「時間とともにどう変わるか」
これで正体がわかります。
なぜ“思い込み”が起きやすいのか(3つの理由)

理由① 初期症状がそっくり
| よくある初期症状 |
|---|
| 排尿時の痛み |
| 頻尿 |
| 残尿感 |
👉 ここまでは、膀胱炎でも別の病気でも起きうる
「初期症状が同じ」だと
人は途中で方向修正しにくくなります。
理由② 尿検査は“答え”ではない
尿検査で炎症サインが出ると
👉「やっぱり膀胱炎だ」と安心しがち。
でも実際は:
- 尿検査=判断材料のひとつ
- すべての症状を説明できるかが大事
検査結果と体の訴えがズレたら
👉 再評価ポイント
理由③ 「時間」が経たないとわからない
よくある経過:
- 1日目:膀胱炎っぽい
- 2〜3日目:あれ?なんか変
- 4日目:熱・だるさ・別の痛み
重要なのは
❌ 最初の判断ミス
⭕ 途中で「おかしい」と気づけるか
外来で見た“思い込みパターン”
ケース① 膀胱から始まり、腎臓側に広がっていた
最初
- 排尿痛
- 頻尿
途中から追加
- 発熱
- 腰〜背中の痛み
- 強いだるさ
👉 排尿症状 + 発熱・腰痛
👉 = 症状が進展・増悪するケース。このケースは腎臓炎に炎症が波及していました。
ケース②
検査は膀胱炎っぽい。でも経過が合わない
受診当初は膀胱炎の症状があり尿検査でも膀胱炎に矛盾しないが、
- 熱が出てきた。
- 排尿より全身がつらい
- 深呼吸で右あばら下が痛い
👉 尿に異常があっても、原因が別の場所のことはある。このケースでは骨盤内に炎症を認めました。
今日からできる「現実的な行動」

膀胱炎かもしれないけど、以下の1つでも当てはまったら受診を考える
- 熱が出ている/続く
- 腰・背中・あばら下が痛い
- 深呼吸や動きで痛みが変わる
- 2〜3日たっても改善しない
- だるさが強くなる
② メモする(診察の制度が上がる)
- いつから
- 熱の有無
- 痛い場所
- 良くなってる?悪くなってる?
👉 自分の安心材料にもなる
最初は膀胱炎だと思ってOK。 でも、途中でズレたら早めに切り替えて受診してください。
【この記事を書いた医師】
南22条おとなとこどものクリニック 院長
小林 俊幸
小児科・総合内科
この記事は、札幌市で日常診療を行っている医師が、
診察室でよく受ける質問をもとに執筆しています。
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