
目次
生涯医療費を激変させる4つの生活習慣
はじめに
「健康に気をつけることは、将来のお金の節約になるのでしょうか?」
それとも、「長生きする分、医療費がかかる期間が延びるだけ」なのでしょうか。
一度は感じたことがあるかもしれない、この素朴な疑問。
それに対して、約5万2000人を長期間追跡した大規模研究が、ひとつの答えを示しました。
この研究は、厚生労働省の支援のもと、東北大学が宮城県在住者を対象に行ったもので、
生活習慣が寿命だけでなく、生涯にかかる医療費にも大きく影響することを明らかにしています。
※なお、この研究は2000年代に開始されたものであり、現在の医療技術や治療法の進歩をすべて反映しているわけではありません。
ただし、「生活習慣が寿命と医療費の方向性を決める」という基本構造を理解する上で、今も十分に価値のある研究です。
この記事では、この研究から見えてきた、特に重要な4つのポイントをわかりやすく解説します。
① 喫煙者は「生涯医療費が低い」という不都合な事実
最も意外な結果は、喫煙に関するものでした。
この研究では、喫煙者は非喫煙者より生涯医療費が低いという結果が示されています。
40歳男性で比較すると、
- 喫煙者の平均余命は、非喫煙者より3.7年短い
- 生涯医療費は、非喫煙者(1491.4万円)より6.7%低い
一見すると矛盾しているように感じますが、理由ははっきりしています。
寿命が短いため、高齢期に医療費を使う期間そのものが短いのです。
これは、喫煙が「得」であることを意味しません。
健康を大きく損ない、人生を短くすることで、
結果として医療費が少なく見えているだけという、非常に皮肉な現実です。
② 生涯医療費を最も増やすのは「高血圧」
喫煙を除けば、不健康な状態は
寿命を縮め、同時に医療費も増やすことが分かりました。
その中でも、最も影響が大きかったのが高血圧です。
40歳男性のデータでは、
- 高血圧の人の平均余命は、正常血圧の人より1.7年短い
- 生涯医療費は、正常血圧の人(1334.3万円)より22.0%高い
これは非常に大きな差です。
高血圧は、「命」と「お金」の両方に重くのしかかる、
典型的なダブルペナルティをもたらす状態だと言えます。
③ 肥満は「寿命への影響は小さく、医療費への影響は大きい」
次に注目すべきは肥満です。
40歳男性で普通体重の人と比べると、
- 平均余命は0.5年短い
- 生涯医療費は、普通体重の人(1313.2万円)より13.7%高い
寿命への影響は比較的小さい一方で、
医療費は大きく増えています。
これは、肥満が一時的な病気ではなく、
糖尿病や高血圧、脂質異常症など、
長期間の治療が必要な慢性疾患につながりやすいためです。
「少し寿命が短くなる」よりも、
「長く病気と付き合う」ことの方が、
医療費には強く影響することが分かります。
④ 健康とお金を守る、最も身近な習慣
1日1時間のウォーキング
最後は、最も前向きで、今日から始められる習慣です。
研究では、
1日の歩行時間が1時間未満の人と
1時間以上の人を比較しています。
結果は明確でした。
- 歩行時間が1時間未満の人は、平均余命が1.5年短い
- 生涯医療費は、1時間以上歩く人(1282.8万円)より5.5%高い
特別な道具も、費用も必要ありません。
ただ「歩く」だけで、寿命が延び、医療費が減る。
ウォーキングは、
最も手軽で、最も確実な健康投資と言えます。
まとめ:健康は、最も堅実な資産運用
この研究からわかったことは
- 喫煙:寿命を削ることで、医療費が少なく見えるだけ
- 高血圧・肥満:
寿命も短く、医療費も高い(ダブルペナルティ) - ウォーキング:
寿命が延び、医療費も下がる(ダブルリワード)
研究の結論は、次のようにまとめられています。
健康的な生活習慣の実践により、
平均余命の延長と生涯医療費の低減、
そして良好な健康状態での生存期間の延長が期待できる。
健康は、気合や根性ではなく、日々の選択の積み重ねです。
毎日の小さな行動が、
将来の医療費という「負担」を減らし、
健康寿命という「利益」を生み出します。
派手なことは必要ありません。
まずは、今日いつもより少し長く歩くことから。
それが、未来の自分への最も賢い投資になります。
【この記事を書いた医師】
南22条おとなとこどものクリニック 院長
小林 俊幸
小児科・総合内科
この記事は、札幌市で日常診療を行っている医師が、
診察室でよく受ける質問をもとに執筆しています。
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