
「また熱が出た。またけいれんが起きたらどうしよう…」
熱性けいれんを一度経験した親御さんの多くが、発熱のたびにこんな不安を感じます。「ダイアップという坐薬を使えば予防できる」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
でも、実はすべての子どもにダイアップが必要なわけではありません。
2023年に改訂された最新のガイドライン(日本小児神経学会)をもとに、わかりやすく解説します。
熱性けいれん(熱性発作)とは?
熱性けいれんとは、38℃以上の発熱にともなって起こるけいれん発作のことです。生後6か月〜5歳ごろの子どもに多く、日本では約10人に1人が経験するといわれています。
ほとんどは数分以内に自然におさまり、後遺症も残らない良性の疾患です。ただ、目の前でわが子がけいれんする姿は、見ている親御さんにとって非常に怖いものです。
2回以上繰り返す子はどのくらいいる?
「一度起きたら、また起きるのでは?」という不安は自然なことです。データを見てみましょう。
・全体の約70%は生涯1回だけ
・2回以上繰り返すのは約30%(3人に1人)
・再発予測因子がない場合は、再発率は約15%にとどまる
つまり、7割のお子さんは一生に1回で終わります。大半の子には予防投薬は必要ありません。
再発しやすい子の特徴(再発予測因子)
次の4つの項目に1つでも当てはまると、再発リスクが約2倍になるとされています。
| 再発予測因子 |
|---|
| ① 親または兄弟姉妹に熱性けいれんの既往がある |
| ② 初回発作が1歳未満 |
| ③ 発熱してから1時間以内にけいれんが起きた |
| ④ 発作時の体温が39℃以下だった |
これらが1つもない子の再発率は約15%。逆に複数あてはまる場合は、より早い段階で予防を検討することになります。
ダイアップ坐薬(ジアゼパム)とは?
ダイアップは、脳の神経の興奮を一時的におさえる薬です。けいれんを止める薬ではなく、起きる前に予防する薬という点が重要です。
ダイアップについてよくある誤解
「けいれんが起きてから入れる薬」ではありません。
発熱に気づいたときに使う、予防のための薬です。
ダイアップの使い方
- 37.5℃以上の発熱に気づいたとき、1回目を入れる
- 8時間後もまだ熱があれば、2回目を入れる
- 量は体重あたり0.4〜0.5mg/kg(最大10mg)が目安
2回分(16時間分)の予防効果をカバーすることで、発熱後24時間以内に多い発作を防ぐ仕組みです。
副作用・注意点
ダイアップを使うと、眠気・ふらつき・ぼんやりなどが出ることがあります。
これは薬の作用上やむを得ない面もありますが、実は重要な注意点でもあります。眠気が出ると、脳炎・脳症など重大な病気による意識障害と区別がつきにくくなることがあります。ダイアップを使った後は、お子さんの様子をこまめに観察してください。
ダイアップ予防投薬が必要な子・必要でない子
最新のガイドラインでは、すべての熱性けいれんにダイアップをルーチンに使う必要はないとされています。
以下のどちらかに当てはまる場合に使用を検討します。
① 遷延性発作(15分以上続いたことがある)
または
② 再発予測因子が2つ以上ある状態で、2回以上けいれんを起こしたことがある
一方、単純な熱性けいれんが1回だけ、再発予測因子も少ない場合は、ダイアップなしで経過を見ることが一般的です。
解熱薬・抗ヒスタミン薬は使っていい?
解熱薬(アセトアミノフェンなど)
解熱薬をこまめに使ってもけいれんの予防にはなりませんし、使ったあとに熱が上がったときに発作が増えるわけでもありません。解熱薬は苦痛をやわらげるために使うものと考えてください。
鎮静性抗ヒスタミン薬(第1世代)
ポイントは、発熱中の鎮静系の抗ヒスタミン薬(一部の花粉症・鼻水の薬)に注意が必要ということです。これらはけいれんの持続時間を長くする可能性があります。
熱性けいれんの既往がある場合、発熱時には使用を避けるか、脳への影響が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬(アレグラ・クラリチンなど)に変更してもらうよう、かかりつけ医や耳鼻科に相談しましょう。
まとめ
熱性けいれんは怖い経験ですが、ほとんどの子どもに後遺症はなく、7割は一生に1回で終わります。
ダイアップは効果的な薬ですが、すべての子どもに必要なわけではありません。お子さんの状況(発作の回数・持続時間・再発予測因子)をふまえて、かかりつけ医と一緒に「必要かどうか」を判断することが大切です。
発熱のたびに「使うべきか使わないべきか」で迷うのは、保護者の方にとっても大きなストレスです。あらかじめかかりつけ医に確認しておくと、次の発熱が来たときに落ち着いて対応できます。
※この記事は日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」をもとにしています。お子さんの状態によって対応は異なりますので、具体的な処方・投与指示はかかりつけ医にご相談ください。