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女性のいびき・不眠は見逃されている──睡眠時無呼吸の"非典型症状"

📅 2026年5月11日 (0日前に公開)

「最近なんだか眠れない」「朝起きても疲れが抜けない」「いびきをかいていると言われた」──そんな悩みを、更年期や日々の疲れのせいにしていませんか。実は、こうした症状が睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインである可能性があります。女性には男性とは異なる"非典型症状"が現れやすく、見逃されやすいのです。

睡眠時無呼吸は"男性だけの病気"ではない

「睡眠時無呼吸症候群(SAS)は太った中年男性の病気」というイメージを持っている方は多いかもしれません。たしかに男性に多い疾患ですが、女性にも決して少なくない病気です。

実際にどのくらいの女性がSASにかかっているかを考えると、決して少なくありません。男性の3分の1から5分の1程度はいるはずです。ところが診断を受けている女性は、その数を大きく下回っています。男性の8分の1から10分の1しかいないのです。多くの女性が、SASであっても気づかれないまま見過ごされている実態が浮かびます。

背景にあるのは、女性のSASは症状が分かりにくく、受診のきっかけをつかみにくいことです。

また、閉経後は状況が大きく変わります。閉経前は女性ホルモン(プロゲステロン)がのどの筋肉を支える働きをしていますが、閉経後にはその効果が失われます。その結果、閉経後にSASになる女性は閉経前の2〜3倍に増え、男女差はほぼなくなると報告されています。「若いころは大丈夫だったから」という安心感は、中高年以降には当てはまらなくなるのです。

女性に多い"非典型症状"チェックリスト

SASといえば「大きないびき」「無呼吸の目撃」が典型とされています。しかし、女性では「いびきがないから大丈夫」は禁物です。女性のSASは、むしろ以下のような症状で現れることが多いとされています。

  • 寝つけない・途中で目が覚める(不眠):睡眠が浅く、夜中に何度も目が覚める。無呼吸が起きるたびに脳が覚醒反応を起こすため、本人が気づかなくても睡眠が細切れになっています。
  • 朝の頭痛:起床時に頭が重い、頭痛がする。睡眠中の低酸素・高二酸化炭素状態が脳血管を拡張させることで生じると考えられています。
  • 日中の倦怠感・集中力低下:十分な時間眠ったはずなのに、昼間もだるい。睡眠の「量」はあっても「深さ」が失われているため、脳が十分に回復できないのが原因です。
  • 抑うつ気分・不安:気分が沈みやすい、なんとなく不安が続く。睡眠不足が続くと気分を調整する神経系に影響が出ます。うつ病の治療をしても改善しない場合、背後にSASが隠れていることがあります。
  • むずむず脚(下肢静止不能症候群):夜間に脚がムズムズしてじっとしていられない。SASとの合併が多く、どちらか一方だけを治療しても改善しないケースがあります。
  • 動悸:夜間や早朝に動悸を感じることがある。無呼吸による酸素低下が自律神経を刺激し、心拍数を乱すことがあります。
  • 小さないびき:大きないびきではなく、かすかないびきや寝息の乱れとして現れることがある。「いびきがない」と思っていても、軽い上気道の閉塞が繰り返されているケースがあります。
  • 高血圧:睡眠中の低酸素状態が血圧を上昇させ、治療しても下がりにくい高血圧の原因になることがある。降圧薬を飲んでいるのに数値が安定しない方は、一度SASを疑ってみることも大切です。

これらは「更年期かな」「ストレスかな」「うつかな」と受け流されやすい症状です。婦人科や心療内科を受診しても原因がはっきりしないとき、あるいは睡眠薬を使っても改善しないときは、睡眠時無呼吸の可能性も頭に入れておいてください。

なぜ女性は見逃されるのか

女性のSASが診断されにくい理由は、症状だけでなく、医療機関への「アクセスの仕方」にも関係しています。

「そんなこと、恥ずかしくて言えない」──いびきを「恥ずかしいこと」と感じて申告しにくいという背景があります。男性なら「いびきがうるさい」とパートナーから指摘されて受診するケースが多いのですが、女性は自分のいびきを認めることに抵抗を感じやすい傾向があります。もし心当たりがあっても、遠慮なく教えてください。診察室では決して驚きません。

「一人で寝ているから、誰にも気づいてもらえない」──一人暮らしや別室就寝の場合、無呼吸を目撃してもらえないという問題があります。SASの診断のきっかけとして「パートナーに無呼吸を指摘された」というケースが多いのですが、そのような機会が少ない女性は受診するきっかけをつかみにくいのです。自宅でできる簡易検査があるので、一人でも調べることができます。

「眠気はそんなにないんだけど...」──眠気のチェックシート(ESS:エプワース眠気尺度)が女性では当てになりにくいことも指摘されています。このチェックシートは「昼間にうっかり眠ってしまうことがあるか」を測るものですが、女性のSASでは強い眠気よりも不眠や倦怠感が目立つことが多く、ESSのスコアが低く出てしまうのです。「眠気はないから大丈夫」ではなく、だるさや不眠があること自体がサインです。

加えて、女性は軽症のSASでも症状が強く出やすいという特徴があります。無呼吸の回数が少なくても、睡眠の質の低下や日中の症状は男性と同じくらい、あるいはそれ以上になることがあります。「検査の数値が軽症だから問題ない」とは言い切れないのです。

妊娠中・閉経後は特に注意

女性のライフステージの中でも、妊娠中閉経後はSASが発症・悪化しやすい時期として知られています。

妊娠中は、体重増加・鼻の粘膜がむくむ(妊娠中の鼻づまり)・大きくなった子宮による横隔膜の押し上げが重なり、のどが狭くなりやすい状況になります。妊娠中のSASは、妊娠高血圧症候群や赤ちゃんの発育不全のリスクとの関連を示す報告もあり、お母さんと赤ちゃんの両方にとって注意が必要です。妊娠中にいびきが目立つようになったら、かかりつけ医や産科医に相談してみてください。

閉経後は、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が低下することで上気道を守る機能が弱まり、また腹部・上半身への脂肪再分布が起こることで、SASが急に発症・悪化するケースがあります。「閉経してからいびきをかくようになった」「以前より眠りが浅くなった」という変化があれば、SASの可能性を一度確認してみることをお勧めします。

軽症でも放置しない理由

「検査したけど軽症だった」と言われ、そのまま様子を見ている方もいらっしゃるかもしれません。しかし女性のSASについては、軽症であっても心臓・血管の病気や認知機能の低下リスクは男性と同じくらい高いという研究が報告されています(Wimms A, et al. BioMed Research International, 2016)。数値の軽さが、症状や体への影響の軽さを意味するわけではないのです。

治療の選択肢としては、重症例にはCPAP(シーパップ:鼻に装着するマスクで気道を広げる装置)が用いられますが、軽症〜中等症の場合にはマウスピース(歯科で作製する装置)が有効な選択肢になります。特に女性・軽症の方ではマウスピースの効果が出やすいというデータもあり、体への負担も少ない治療法です。

治療を始めることで、「朝すっきり目覚められるようになった」「日中の集中力が戻った」「気分の落ち込みが改善した」という変化を実感される方は少なくありません。睡眠の質が整うと、日々の生活全体が改善されていきます。

こんな方はご相談ください

以下に当てはまるものがあれば、一度ご相談ください。気軽にチェックしてみてください。

パートナーにいびきや無呼吸を指摘されたことがある
朝の頭痛や日中の強い倦怠感が続いている
不眠で睡眠薬を使っているが、なかなか改善しない
閉経後からいびきや眠りの浅さが気になりはじめた
妊娠中にいびきが強くなってきた
0個 チェックが入っています。

がんばって眠ろうとする前に、眠りの質そのものを確認することが、いちばんの近道です。当院では、自宅でできる簡易睡眠検査から対応しています。「もしかしたら」と感じたら、どうぞ気軽にご相談ください。

よくあるご質問

Q いびきがなくても睡眠時無呼吸症候群の可能性はありますか?
はい、なります。とくに女性の場合、「大きないびき」「無呼吸の目撃」がなくても、不眠・朝の頭痛・日中の倦怠感・抑うつといった非典型症状だけで現れることが少なくありません。「いびきをかいていないから大丈夫」とは言い切れないのが、女性のSASの特徴です。
Q 更年期の症状との見分け方はありますか?
症状だけで見分けることは難しく、実際に両方が重なっているケースもあります。ただ、「更年期の治療を受けても眠れない・だるさが続く」「睡眠薬を使っても改善しない」という場合には、SASが隠れている可能性があります。簡易睡眠検査(自宅でできます)で客観的に調べることが解決への近道です。
Q 検査はどんな方法ですか?入院が必要ですか?
まず自宅で行う「簡易睡眠検査」から始めます。小型の機器を手や指先につけて、ご自宅で普段どおりに眠るだけです。入院は不要で、検査機器の返却方法は医療機関によって異なりますが、当院では検査後に機器を業者へ送付していただく方式をとっています。結果によって、より詳しい検査(ポリソムノグラフィ)が必要か判断します。
Q CPAPは毎晩つけないといけませんか?負担が大きそうで不安です。
CPAPは重症のSAS(日本では目安としてAHI 20以上)に対して保険適用される有効な治療です。CPAP適応と診断された場合は、基本的に生涯にわたって使用を続けることが必要になります。一方、CPAP適応でないと判断された場合、当院では歯科と連携し、マウスピース(口腔内装置:MAD)による治療に誘導しています。MADも歯や顎への影響がゼロではないため、歯科での定期的なフォローが必要です。いずれの治療も、検査結果と症状・生活スタイルをもとに判断しますので、まずは検査を受けていただき、ご自身に合った方法をいっしょに確認していきましょう。

まとめ&受診の目安

睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきや肥満がなくても、女性に多い"静かな症状"として現れることがあります。不眠・朝の頭痛・日中の倦怠感・気分の落ち込みなどが続いているとき、「年のせい」「更年期だから」と決めつける前に、一度SASの可能性を確認してみてください。

当院では、自宅でできる簡易睡眠検査を行っています。血液検査や胃カメラのような痛みはなく、夜ふだん通り眠るだけで完了する検査です。「もしかして…」と思ったら、気軽にご相談ください。

上のチェックリストで3つ以上当てはまる方、または「ひとつでも気になる」という方は、受診の目安と考えていただけます。まずは「確かめる」ことから始めましょう。

▶ この記事は以下の文献・ガイドラインをもとに作成しています
  • Wimms A, et al. "Obstructive Sleep Apnea in Women: Specific Issues and Interventions." BioMed Research International, 2016.
  • 日本呼吸器学会・日本睡眠学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
  • American Academy of Sleep Medicine (AASM). International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. 2014.

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。「がんばりすぎない健康」をテーマに情報発信中。 お問い合わせはこちら

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