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風邪は治ったのに、咳だけ止まらない 〜ゼーゼーしない喘息「咳喘息」〜

📅 2026年11月5日 (0日前に公開)

夜、ベッドで咳きこむ子どもの背中を、お母さんがやさしくさするクレヨン画

ゼーゼーしない喘息が、あります。

熱は下がった。
鼻水も止まった。
なのに、咳だけが残っている。

夜、布団に入ると咳が出る。
朝方、咳で目が覚める。
市販の咳止めを飲んでも、あまり変わらない。

気づけば、咳だけでもう3週間。

そんな咳の陰に、咳喘息(せきぜんそく)が隠れていることがあります。

咳喘息は、「咳だけで現れる喘息」です

喘息というと、「ゼーゼー・ヒューヒュー」という音や、息苦しさを思い浮かべる方が多いと思います。

咳喘息では、その音や息苦しさがありません。
出るのは、咳だけです。

それでも気管支の中では、喘息と同じように炎症が起きていて、ちょっとした刺激に敏感になっています。

国際的な喘息のガイドライン(GINA)でも、咳だけを症状とする喘息を、喘息の一つとして扱っています。

こんな咳は、咳喘息のことがあります

  • 夜中や明け方に、咳で目が覚める
  • 走ったり、笑ったりすると咳が出る
  • 冷たい空気を吸うと咳きこむ
  • 風邪をひくたびに、咳だけが何週間も残る
  • 毎年、同じ季節に咳が長引く

ただ、これらは咳喘息だけに出るサインではありません。
「当てはまるから咳喘息」と決まるわけではない、という点は覚えておいてください。

ネットで調べると、「3週間以上続く咳は咳喘息かも」という説明もよく目にします。

では、咳が3週間続いたら、咳喘息なのでしょうか。

「3週間」は、原因を調べ始める目安です

咳が続いた期間だけでは、咳喘息かどうかは決まりません。
「3週間」は咳喘息の目印ではなく、「一度、原因を調べてみましょう」という目安です。

咳は、続いている期間でこう分けられます。

続いている期間呼び方多い原因
3週間未満急性の咳かぜなどの感染症
3〜8週間長引く咳(遷延性)かぜのあとの咳が多いが、ほかの原因も混ざる
8週間より長い慢性の咳咳喘息、鼻の病気、胃酸の逆流など

3〜8週間の咳には、「かぜのあとの咳(感染後咳嗽)」もたくさん含まれます。
これは、時間とともに自然に落ち着いていくことが多い咳です。

だから、期間だけで「咳喘息」とは言えないのです。

日本呼吸器学会も、3週間以上続く咳では、喘息・咳喘息のほか、鼻の病気、胃酸の逆流、肺の病気なども考えて、医療機関で評価することをすすめています。

長引く咳の原因は、咳喘息だけではありません

咳が長引く原因は、いくつもあります。

  • かぜのあとの咳
  • 後鼻漏(こうびろう)・副鼻腔炎
  • 胃酸の逆流
  • 血圧の薬など、飲んでいる薬の副作用
  • まれに、肺炎・結核・肺がん など

なかでも、外来でとてもよく出会うのが後鼻漏です。

鼻水が、のどの奥に流れ落ちる。
それが刺激になって、咳や「痰がからむ感じ」が続きます。

後鼻漏かもしれない手がかりは、たとえばこんなところです。

  • 鼻づまりや鼻水が、咳と一緒にある
  • 横になると咳が増える
  • のどに何か流れてくる感じがして、咳払いが多い
  • 子どもの「痰がらみの咳」が続く

当院では副鼻腔の画像検査ができないため、副鼻腔炎が疑わしいときは、耳鼻科をご紹介することがあります。

咳喘息は、いくつかの手がかりを合わせて診断します

咳喘息には、「この検査1つで決まる」という決め手がありません。
そのため、いくつかの手がかりを組み合わせます。

  1. どんなときに咳が出るか
    時間帯、運動や冷たい空気との関係、かぜとの関係、鼻や胃の症状、飲んでいる薬などをうかがいます。
  2. ほかの病気がないか
    聴診や胸のレントゲンで、肺炎や結核など、ほかの原因がないかを確かめます。血液検査や、百日せき・マイコプラズマの迅速検査をすることもあります。
  3. 呼吸の検査
    息を思い切り吐いて、気管支の通りを調べます(スパイロメトリー)。咳喘息では、この検査が正常なことも少なくありません。
  4. 薬で咳が軽くなるか
    日本のガイドラインでは、気管支を広げる薬で咳が軽くなるかどうかも、診断の大切な手がかりにしています。

レントゲンや呼吸の検査が正常でも、咳喘息のことはあります。

咳止めは咳を弱める薬、吸入薬は気管支を治す薬

ここが、咳喘息でいちばん知っておいてほしいところです。

薬はたらき
咳止め咳の反射を、一時的に弱める。気管支の炎症そのものは治さない。
吸入ステロイド薬気管支の炎症をしずめて、咳が起こりにくい状態にしていく。咳喘息の治療の中心。

咳止めを飲んでも咳が続く。
咳喘息では、それは珍しいことではありません。

吸入ステロイド薬は、吸ってすぐに咳が止まる薬ではありません。
数回使って効かないと感じても、続けながら様子を見ていきます。

もう一つ大切なのが、吸い方です。
吸い方がうまくいっていないと、薬が気管支まで届きにくくなります。

吸い方は、薬を受け取る薬局で教えてもらえます。
うまく吸えているか不安なときは、薬局で相談してみてください。

子どもの「咳だけ続く」は、大人と少し事情が違います

当院には、咳が長引くお子さんもたくさん来られます。

子どもにも、咳喘息はあります。
ただ、長引く咳の原因の顔ぶれは、大人とは少し違います。

子どもの長引く咳で、考えること

  • かぜを次々にもらって、咳が続いているように見える
  • 鼻水がのどに落ちる後鼻漏・副鼻腔炎
  • 百日せき・マイコプラズマなどの感染症
  • 湿った咳が続く、気管支の細菌感染
  • まれに、豆やおもちゃなどを吸いこんだ「気道異物」

海外の子どもの咳のガイドラインでは、4週間を超えて毎日続く咳を「長引く咳」として、子ども専用の考え方で原因を探すようすすめています。

「咳だけ続いているから、咳喘息」と、すぐに決めないことも大切です。

子どもの咳喘息を疑う手がかり

  • 乾いた咳で、夜寝ているときや明け方に多い
  • 走ったり、はしゃいだり、大泣きしたあとに咳きこむ
  • かぜのたびに、咳だけが長く残る
  • 家族に喘息やアレルギーの人がいる

子どもの診断と治療

子どもでは、症状の出方と、薬を使ったときの咳の変わり方を見ながら判断していきます。

吸入薬は、年齢に合わせて、マスクやスペーサー(吸入の補助具)を使って吸ってもらいます。

「咳だけだから軽い」とは、限りません

よくある思いこみ本当のところ
乾いた咳なら、咳喘息。かぜのあとの咳や後鼻漏、薬の副作用などでも、乾いた咳は出ます。
レントゲンが正常なら、心配ない。咳喘息は、レントゲンや呼吸の検査が正常なことがあります。
咳だけだから、軽い病気。咳喘息の一部は、その後「ゼーゼー」を伴う喘息に移っていきます。研究では、およそ3〜4割と報告されています。早めに吸入ステロイド薬を始めた人では、移行が少なかったという研究もあります。
咳が止まったら、吸入はやめていい。咳が止まっても、気管支の炎症は残っていることがあります。やめる時期は、受診のときに一緒に決めていきます。

こんなときは、早めに受診を

次のようなときは、咳喘息と思いこまず、早めにご相談ください。

  • 痰に血が混じる
  • 息が苦しい
  • 高い熱が続く
  • 胸が痛い
  • 体重が減ってきた
  • 肺炎をくり返している
  • (子ども)急にむせこんでから咳が続いている

そうでなくても、3週間続く咳は、一度原因を調べるタイミングです。

今日からできること

  1. 咳が出る時間帯と、きっかけ(運動・冷たい空気・横になったとき など)をメモしてみる
  2. 鼻水や鼻づまりが一緒にないか、気にしてみる
  3. 咳が3週間を超えたら、そのメモを持って相談してみる
  4. 吸入薬を使っている方は、薬局で吸い方を確かめてもらう

当院での診かた

当院では、お話をうかがい、診察をしたうえで、必要に応じて、胸のレントゲン、血液検査、百日せき・マイコプラズマの迅速検査などを行います。
呼吸の検査(スパイロメトリー)も、必要なときには行えます。

副鼻腔炎が疑わしいときは耳鼻科へ、さらにくわしい検査が必要なときは呼吸器の専門医療機関へ、ご紹介することがあります。

大人も子どもも、長引く咳のご相談をお受けしています。

参考

  • Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2026.
  • 日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」
  • 日本呼吸器学会 一般向け情報「咳嗽」「喘息」
  • CHEST Guideline: Chronic cough due to asthma; Chronic cough in children(米国胸部医学会)
  • 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸(こばやし としゆき)|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。子どもからおとなまで、家族をまるごと診られる町の医師でありたい。診察室で「聞いてよかった」と言ってもらえた話を、ここに書き残しています。 お問い合わせはこちら

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