HPVワクチンの相談を受けることが多少増えている感じがします。本当に少しです。
2021年11月26日、厚生労働省健康局長通知により、8年ぶりにヒトパピローマウイルス感染症に係る定期の予防接種の積極的な勧奨が再開しました。
現在のところ、日本では子宮頸がんの罹患率と死亡率は年々増加しています!
国内では毎年1万1千人ほどが子宮頸がんにかかり、約2,900人が亡くなり、治療で子宮を摘出することもあります。子宮頸部の一部を切った場合には、妊娠したときに早産しやすくなることもあります。
当院でもHPVワクチン接種を実施していますが、積極的勧奨再開後もHPVワクチンを接種される方が大きく増えている印象はありません。
それぞれご家庭に事情があると思いますが、接種をしない理由がいくつかあるのではないかと思います。
やっぱり副作用が心配
一つ目はやっぱり副作用が心配な方がいると思います。「テレビでHPVワクチンの副作用の報道があったことを覚えている。」「テレビで嘘が報道されるはずがない。」そう思っている方がいますよね。
頭痛、全身の疼痛、脱力、手足の動かしにくさ、歩行障害、激しい倦怠感、睡眠障害、記憶障害といった副作用が報告され、その後8年間にわたって積極的な接種勧奨が中止となっていたことがありました。
しかし、現在ではHPVワクチン接種の副反応とされた症状とワクチン接種に、因果関係はないことが証明されました。
2015年、 HPVワクチン接種とHPVワクチンの副作用と考えられていた24症状の因果関係を調べるために、名古屋市によって7万人の住民対象の大規模疫学調査が実施されました。
この結果から、これらの24症状とHPVワクチンの接種の有無には因果関係がなく、ワクチン接種によって症状が増加することはないことがわかりました。
今まで副作用と考えられていた症状は、ワクチンそのものの副作用ではなく「紛れ込み」であると考えられております。
つまり、ワクチンを打っていなかったとしてもそのような症状が出ていたと考えられ、因果関係はないということです。
テレビなどの報道での扱いが大きくなかったので、この研究内容についてはあまり知らない方もいらっしゃるのではないかと思います。
名古屋だけではなくアメリカやオランダ、フランスなどから様々な研究がされていますが、HPVワクチンは安全性が高いことがわかっています。下の記事は強調部分が太字で記載されており読みやすいです。
HPVワクチンの安全性・有効性に関する最新のエビデンスについて
「HPVワクチンの積極的勧奨接種の再開」になったことを知らない。
ほかのワクチンを打ちにきた方の母子手帳を確認して、HPVワクチンも受けることができますよとお話をすることがあります。「初めて知りました!」、「受けた方がいいですか?」、「急にいわれてもちょっとわからない」そうお思いになるかもしれません。
積極的勧奨接種が再開になったことを知らない方はたくさんいらっしゃいます。これはまだまだ情報が拡散不足していないことが原因かと思います。
新聞・雑誌・テレビといったオールドメディアではなかなか情報をキャッチしにくいのではないかと思っています。「そんなバカな、偏りなんてあるはずがない!」と思われる方がいると思いますが、あるんです。
最近(2022年11月27日)では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関する報道が激しかったのですが、サッカー日本の大活躍もあってか急速に縮小してしまいました。
世間が興味を持つことを報道するのが鉄則ですから、統一教会の優先順位が低くなってしまったのだと思います。
HPVワクチンの話題は副作用であれば興味を引きますが、その効果であればそれほど世間の興味を引くことはないので報道されることはありません。
もう打って遅いんじゃないか?
通常のHPVワクチンの定期接種の対象年齢(小学校6年から高校1年相当)の間に接種を逃した方がいます。「もう打っても効果がないんじゃないか?」って思う方がいても不思議ではありませんが、そんなことはありません。
確かに、HPVワクチンは、初めての性交渉の前に接種することが望ましく、スウェーデンからの報告では、17歳以前に接種を受けた女性では88%の子宮頸がんの減少効果がありました。
しかし、17~30歳で接種を受けた女性であっても53%の減少を認めていました。17~30歳では17歳以前に比べれば効果は低いものの、効果が認められております。
ワクチンの使用についての添付文書では、接種年齢の上限は書かれていませんが、海外の報告では、45歳までの接種はHPVワクチンの効果が認められており、アメリカでは女性に対して26歳までの接種を推奨しています。
3年間!キャッチアップ接種
本来であれば、HPVワクチンは小学6年生~高校1年生までが定期接種の対象でしたが、2022年4月~2025年3月までの3年間は、1997年4月2日生まれ(25歳)までの女性のキャッチアップ接種が公費で受けられます。
HPVワクチンは自費で受けるととにかく高いんです。
25歳までの方にはぜひ利用していただきたい制度です。該当の方がいたらぜひ声をかけてあげてください!
やっぱり打った方がよい
HPVワクチンには子宮頸がん、子宮頚部異形成を予防する効果があります。子宮頚部異形成は子宮頸がんの前段階(前がん病変)です。
子宮頸がんは20-30歳台の若い女子で診断されることが多く、診断された時の精神的苦痛や定期通院や手術治療となる金銭的、時間的、肉体的負担ははかり知れません。これを防ぐ手段はワクチンだけです。
検診も必要
20歳になったら、子宮頸がんを早期発見するため、子宮頸がん検診を定期的に受けることが重要です。2年に1回の子宮頸部細胞診が勧められています。
HPVワクチンは、子宮頸がんに対するとても有効な予防手段ですが、100%予防ができるわけではありませんので、「ワクチンさえ接種すれば絶対に安心」とは言いきれません。HPVワクチンで防げないタイプのHPVもあります。
20歳になったら検診もぜひ受けましょう。
まとめ
子宮頸がんは、多くは性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因です。
HPV感染が持続すると前がん病変を経て、子宮頸がんに至ります。子宮頸がんを患う女性は年間約1万1千人、死亡者は約2,900人います。
HPVワクチンを接種することで予防が可能なワクチンです。
副作用の調査のため積極的な勧奨が差し控えられた時期がありましたが、安全性が確認できたため2021年11月26日からHPVワクチン接種の積極的勧奨が再開となっております。
ワクチンの効果はとても高いのですが、100%予防ができるわけではありませんの20歳を過ぎたら検診もしっかり受けましょう。