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ネズミのフンを見つけてしまった夜に──「ハンタウイルス、日本は?」を整理します

📅 2026年5月16日 (0日前に公開)

クルーズ船のニュースで「ハンタウイルス」という名前を知った方は多いと思います。それから家でネズミの気配を見つけてしまうと、頭の中で結びついて、急に怖くなりますよね。

結論からお伝えすると——過度に心配しなくてよいケースがほとんどです。

日本国内では、ネズミからヒトへのハンタウイルス感染は、1984年以降40年以上、報告がありません

ただ、「だからネズミは放っておいていい」という話でもありません。ハンタウイルス以外のことで、知っておくと安心できることがあります。順番に整理していきます。

夜の検索で、よけい不安になってしまう仕組み

2026年5月、南極から戻るクルーズ船で、ハンタウイルスの集団感染が報じられました。乗客が死亡し、世界中のニュースになりました。

「致死率40〜50%」「潜伏期間6週間」——強い言葉が並びます。

そんな日に、たまたま台所の隅で黒い粒を見つけたとしたら。検索すれば、不安はどんどん大きくなります。

でも、ニュースの舞台と、あなたの台所では、起きていることがまったく違います。落ち着いて、ひとつずつ見ていきましょう。

日本にも、ハンタウイルスの過去はありました

「日本にもいるんですか?」という質問への、正直な答えは——「過去にはありました。今は、ヒトの感染はゼロが続いています」です。

1970年から1984年にかけて、全国の大学や研究機関で、実験用のラットから研究者へウイルスが広がる事例が相次ぎました。21の施設で、126人が発症し、1人が亡くなっています。

その後、血清診断法の確立と、感染動物の徹底した管理によって、1984年を最後に発生していません。

1999年に感染症法が施行されて以降、国内でハンタウイルス感染症の届出はゼロです。

— 国立健康危機管理研究機構

では今、日本のネズミにウイルスはいるの?

「ヒトの感染は40年ゼロ」と「ネズミにウイルスはまったくいない」は、実はイコールではありません。

北海道大学が長年行ってきた野生のネズミ調査では、こんな結果が出ています。

  • 北海道のエゾヤチネズミ:約10%にハンタウイルス抗体あり
  • 全国の港湾地区のドブネズミ:一部で抗体陽性

つまり、日本のネズミの一部には「過去にウイルスに触れた痕跡」があります。

では、なぜヒトの感染が起きないのか。理由は、おそらく次の3つです。

  1. 住宅の気密性が上がり、ネズミと暮らす機会が減った
  2. 下水・ゴミ処理が整い、街中のドブネズミが大幅に減った
  3. 該当のネズミ(エゾヤチネズミ)は森に住み、家の中まで入ってこない

「自然界には少し残っているけれど、現代の暮らしでは触れにくくなっている」——これが今の日本の状態です。

ハンタウイルスより、もっと身近な「ネズミの話」

正直に言うと、家でネズミの痕跡を見つけたとき、ハンタウイルスはあまり心配しなくて大丈夫です。

それより、日本でも今でも散発的に報告がある感染症が、いくつかあります。

  • レプトスピラ症:ネズミの尿に含まれる細菌。発熱・黄疸・腎障害を起こすことがあります。
  • 鼠咬症(そこうしょう):ネズミに咬まれて起こる感染症。発熱・関節痛など。
  • サルモネラ症:フンに汚染された食品から。下痢・腹痛。

どれもまれですが、ゼロではありません。

ハンタウイルスより、こっちのほうが現実的なリスクです。

痕跡を見つけたら、3つだけ守ってください

むずかしいことはありません。次の3つだけ意識すれば、家庭での感染リスクはぐっと下がります。

① 乾いたまま、ホウキで掃かない

これがいちばん大事です。

乾燥したフンや尿の粒を、ホウキで掃き上げてしまうと、空気中に細かい粒子が舞います。それを吸い込むことが、感染症全般のいちばんのリスクになります。

「掃き掃除」ではなく、「拭き掃除」で対応します。

② 湿らせてから、拭き取る

キッチンペーパーや古布を、家庭用の塩素系漂白剤を薄めた液で湿らせて、フンの上にそっと置きます。

数分待ってから、つまむように拭き取ります。

使った紙はビニール袋に入れて口を縛り、燃えるゴミとして出します。

③ マスクと使い捨て手袋をつける

不織布マスクと、薬局で売っている使い捨て手袋で十分です。

掃除のあとは、手をしっかり洗ってください。

💡 小さなお子さんがいる場合は、お子さんを別室に移してから掃除をしてください。終わったあとも、その日のうちは床にゴロゴロさせないほうが安心です。

札幌の冬は、ネズミが家に入りたい季節です

北海道に住んでいると、冬になるとネズミが暖を求めて家屋に入ろうとします。これは札幌の住宅でもよくあることです。

痕跡を見つける前に、できる予防はこの3つです。

  • 外壁や基礎の小さな隙間を、可能な範囲でふさぐ(特に配管まわり)
  • ペットフードや子どものお菓子を、夜のうちに密閉容器へ
  • シンク下や床下収納を、たまに開けて確認する

「完璧にやる」必要はありません。気がついたときに、できる範囲で。それで十分です。

まとめ

  • 日本では、ネズミからヒトへのハンタウイルス感染は40年以上ゼロ
  • 過去には実験動物を介した集団感染があったが、衛生改善で終息
  • 家でネズミの痕跡を見つけたら、ハンタウイルスよりレプトスピラ症など他のネズミ関連感染症のほうが現実的
  • 掃除は「乾いたまま掃かない」「湿らせて拭く」「マスクと手袋」の3つだけ
  • 札幌の冬は、ネズミの侵入を防ぐ工夫を少しだけ

ニュースで「ハンタウイルス」という言葉を聞くと、つい家のことが気になってしまいますよね。

でも、過剰に怖がる必要はありません。日本の現代の暮らしは、思っているよりずっと、こうした感染症から守られています。

不安は、知ることで小さくなります。今日のこの記事が、少しでも安心につながればうれしいです。

参考文献

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。「がんばりすぎない健康」をテーマに情報発信中。 お問い合わせはこちら

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