「おたふくかぜは軽い病気と聞くし、ワクチンは自己負担なので打たない方がいいかなー」と考えているお母さんも多いかと思います。しかし、実際にはワクチン接種のメリットがあることを知ってもらいたいです。
札幌市ではおたふくかぜワクチンの初回接種には3000円の補助が出されますが、2回目は任意となっていますので、迷ってしまう方もいるでしょう。
私はおたふくかぜのワクチン接種をおすすめします。頻度は高くありませんが、おたふくかぜに罹患することで後遺症を引き起こす合併症があることがあります。
ワクチンを受けずに後悔されている方もいるため、ここでおたふくかぜについて一緒に学んでみましょう!
おたふくかぜの症状
「おたふくかぜ」とは、正式には「流行性耳下腺炎」と呼ばれる感染症です。この病気は、ムンプスウイルスによって引き起こされるため、ムンプスとも呼ばれます。
おたふくかぜの症状としては、耳の下あたりの腫れや痛み、発熱などが認められます。通常は軽度の症状であり、約1〜2週間程度で自然に治癒しますが、中には難聴などの合併症を引き起こすこともあります。
この病気を予防するためには、予防接種が有効です。
耳の下の腫れ
唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)が腫れて痛みが生じます。特に唾液が分泌される際に痛みが増します。腫れは通常2~3日で最大となり、一般的には1週間から10日程度で収まります。
腫れの症状は通常、両側の唾液腺に起こりますが、片側だけの場合もあります。両側の場合は、片側の腫れが始まってから2~3日後にもう一方の腫れが現れることがあります。
耳下腺以外にも、顎下腺や舌下腺などの唾液腺が存在し、ウイルスがこれらに感染する可能性もあります。顎下腺まで腫れが及ぶと、下顎から首の付近まで腫れや痛みが広がることがあります。
発熱
それほど高熱にはならず、38度前後で、3~6日程度で下がることがほとんどです。
そのほかの症状
頭痛、筋肉痛、食欲低下、飲食物の摂取が困難、顎の開閉が制限され、すっぱいものがしみるなどの症状がみられることがあります。
おたふくかぜでは感染しても症状が現れない人は約3割です。
様々な合併症
おたふくかぜは軽い病気と思われがちですが、実際には以下のような様々な合併症を伴うことがあります。
- 無菌性髄膜炎
- 睾丸炎
- 卵巣炎
- 膵炎
- 難聴
- 脳炎など
ムンプス難聴
おたふくかぜの合併症として起こる難聴を「ムンプス難聴」といいます。
耳の奥の部分の内耳にムンプスウイルスが感染することで起こります。発症すると治すことが難しい難聴です。
腫れの症状がでる4日前から、腫れの症状がでた後18日以内に発症することが多いです。
高度難聴~全く聞こえない聾(ろう)の状態までの重度難聴を発症することが多く、まれに両方の耳の難聴になることがあります。日本では約1000人に1人の割合で難聴が起こります。
日本耳鼻咽喉科学会の調査では、2015年から2016年の2年間に少なくとも348人がムンプス難聴となり、両側難聴16例を含む300人近くに後遺症が残ったと報告されています。
感染経路は飛沫感染と接触感染
ムンプスウイルスは、1年を通じて感染の可能性がありますが、冬から初夏にかけての感染が多いです。
3~6歳の子供は特にかかりやすく、この年齢層が感染者全体の約60%を占めています。
耳下腺が腫れる3日前から、腫れて7日までの合計10日間がウイルスの排泄期間です。
潜伏期は16~18日程度です。
ワクチンが唯一の予防手段
おたふくかぜを効果的に予防する唯一の方法は予防接種でのワクチン接種です。
予防効果を確実にするために2回の接種が推奨されています。1回接種では約7割以上、2回接種では約9割前後の発症を防ぐことができると言われています。
おたふくかぜの予防接種は1歳以降で接種可能です。残念ながら定期接種とはなっておらず、任意接種(自己負担)となります。
特別な治療はありません
おたふくかぜには特別な治療法はありません。経過は通常順調であり、基本的には対症療法が主となります。
発熱や痛みに対して解熱鎮痛剤を服用したり、食欲不振や脱水傾向がある場合は点滴による水分補給などの治療が行われることがあります。
出席停止期間
耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまでとなってます。
まとめ
おたふくかぜはほとんどが軽症で済みますが、一部の方で重度の難聴を含めた重たい後遺症を残すことがあります。
唯一の予防法はおたふくかぜワクチンです。現在のところは自費での接種となりますが、是非ご検討ください。