おとなの病気

アレルギーじゃないのに寒暖差アレルギー

最近よく耳にする寒暖差アレルギーってなに?どんな時にどんな症状がでるの?わたしの鼻水は寒暖差アレルギーなの?

外来でも質問をうけることがあるので解説しました。寒暖差アレルギーに誤解をもっている方がいると思います。アレルギーって書いてあるのになんとアレルギーではありません!アレルギーという言葉に惑わされないにご注意ください。

寒暖差アレルギーとは

「寒暖差アレルギー」という言葉はテレビなどではよく報道されておりますが、医学的に正しい言葉ではありません。ぼく自身も気になってアレルギーの成書などを調べましたが「寒暖差アレルギー」という言葉はいっさい使用されておりません。

寒暖差アレルギーはアレルギーじゃなかった・・・

私たちの体には病気を引き起こすウイルスや細菌などから体を守る免疫という仕組みがあります。この仕組みが、ある特定の異物(ダニやスギ花粉、食物など)に対して過剰に反応して、体に症状が引き起こされることをアレルギー反応とよびます。

寒冷刺激ではこのような抗原がありません。気温5℃が抗原とか気温差7℃が抗原になるといったことはありません。寒冷刺激はアレルギー反応ではないのです。温度刺激によってアレルギーと同じような症状が引き起こされるために寒暖差アレルギーとよばれるようになったのでしょうかね。

寒暖差アレルギー≒血管運動性鼻炎

インターネットを調べると、寒暖差アレルギー=血管運動性鼻炎として表現されていることが多いです。血管運動性鼻炎は寒暖差も刺激となって鼻炎症状が出る病気のことです。実は血管運動性鼻炎はその機序がわかっていません。そのため、呼び名もさまざまなのです。血管運動性鼻炎という呼び名の他にも特発性鼻炎や非アレルギー性・非感染性鼻炎といった言葉で呼ばれることもあります。

まずは寒暖差アレルルギーはアレルギー性鼻炎とは違い原因はアレルギーではないことをおさえてください。今回は寒暖差アレルギー≒血管運動性鼻炎として解説しようと思います。

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)の診断と検査

血管運動性鼻炎は、特定の原因はないのですが、以下のような4つの症状のうちの一つ以上が長期間にわたって続いてみられることで診断します。

  • くしゃみ
  • 鼻汁が出る
  • 鼻づまり
  • 後鼻漏


どれくらい長く続くとあやしいのかは決まっていませんが、診断には1年以上続くことが必要としている報告もあります。

血管運動性鼻炎を診断するには症状の経緯を詳しくお聞きし診察することで鼻炎症状を引き起こす他の病気と区別して診断します。血管運動性鼻炎を直接的に診断する検査はありませんが、アレルギー鼻炎の原因を特定するために検査を行うことがあります。

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)とアレルギー性鼻炎の症状の比較

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)と似た症状のでるアレルギー性鼻炎、風邪を比較します。

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)アレルギー性鼻炎                風邪                  
発症年齢約70%は20歳以上通常は20歳以前(多くは小児期)問わない
鼻汁無色透明無色透明無色〜黄色でドロっとしている
鼻づまりありうるありうるあることもないこともある
くしゃみありうるありうるあることもないこともある
目や肌のかゆみないありうるない
季節性一年を通して症状がでることが多いありない
誘因タバコの煙、強い香り、煙、天候の変化(気温、湿度、気圧の変化)など花粉やハウスダストなど接触歴
ないないありうる
UpToDateを参考に筆者が作成

アレルギー性鼻炎と比べると、血管運動性鼻炎は発症年齢が遅く、患者さんの約70%は20歳以降に発症します。女性に多いのも特徴です。アレルギー性鼻炎の発症は通常20歳以前(多くは小児期)に起こります。風邪は何歳でもありうりますよね。

血管運動性鼻炎は鼻づまりや後鼻漏が目立つといった特徴があります。目の症状はたいていの場合にはありません。後鼻漏とは鼻水がたくさんでて、喉まで鼻汁が流れ落ちてくる状態のことです。アレルギー性鼻炎の患者は目のかゆみ・充血やくしゃみ、鼻水を認めます。血管運動性鼻炎もアレルギー性鼻炎も鼻汁は無色透明でサラサラしています。風邪の場合は黄色でドロっとしていることが多いことはみなさんも経験しているのではないでしょうか?

血管運動性鼻炎の症状は、1年を通して発生することが多いのですが、春と秋、天候によって症状が悪化することもあります。アレルギー患者の症状は季節性に変化することが多いです。

タバコの煙、強い香り、煙といった刺激は、血管運動性鼻炎の症状が誘発される原因です。しかし、これはアレルギー性鼻炎の患者にもおこることがあります。また、天候の変化(気温、湿度、気圧の変化)は多くの血管運動性鼻炎の方の症状の誘因となります。風邪は風邪のヒトと接触するとうつります。

新型コロナウイルスとの区別

新型コロナでも、鼻水やくしゃみなどの風邪症状のみがみられることがあるため、症状だけで見分けることは困難です。接触歴や地域の流行状況を考慮して、新型コロナウイルス一般電話相談窓口などに電話で相談し新型コロナウイルスの検査を受けるかどうかご検討ください。

併存疾患

血管運動性鼻炎の方は、アレルギー性鼻炎患者と同じように、喘息、慢性副鼻腔炎、中耳炎、睡眠障害をもっている方が多いと言われており同時に治療をした方がよいこともあります。

どの病気も長い期間にわたって治療する必要のある慢性的な病気ですよね。

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)の対処療法

治療はアレルギー性鼻炎とあまり変わりません。点鼻薬(ステロイドなど)や内服薬(抗ヒスタミン薬)が使用されます。毎日の生理食塩水による鼻腔洗浄が効果的な方もいるようです。

症状が悪くなりことをさけるために誘因となる刺激をさけましょう。喫煙が誘因であればご自身や周りの方に禁煙をしてもらいましょう。気温差で悪くなるのであれば着衣を厚くしたりマスクで調整するなどを心がけた方がよいでしょう。

まとめ

  • 寒暖差アレルギーは厳密にはアレルギーではありませんが、温度差などが誘因となって鼻汁や鼻閉、後鼻漏といった鼻炎の症状を認める病態です。一般には寒暖差アレルギー≒血管運動性鼻炎と考えられています。
  • 血管運動性鼻炎の症状は長期間にわたって認めるくしゃみ、鼻汁、鼻づまり、後鼻漏です。20歳以上の成人に多くみられ症状は一年中認めることが多いです。タバコの煙、強い香り、煙、天候の変化(気温、湿度、気圧の変化)などが誘因となります。
  • 治療はアレルギー性鼻炎と同様に点鼻薬(ステロイドなど)や内服薬(抗ヒスタミン薬)が使用されます。

血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)は初期の症状はアレルギー性鼻炎や感冒の症状と似ていて区別することがとても難しい病気です。診断するためには患者さんからの病歴をお聞きすることがとても大切です。お心当たりの方はお気軽に受診してください。

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