半年前に扁桃炎になって、また、扁桃腺が腫れて痛いです。どうしたらよいですか?
おとなになっても扁桃炎を繰り返してしまう方が外来受診されることがあります。扁桃炎の熱は高いし、長く続きますよね。今日はそんな「おとなの扁桃炎」のお話です。
扁桃腺の役割
「のど」にはいくつかのリンパ組織のかたまりがあり、鼻や口からウイルスや細菌が気管や肺へ侵入するのを防ぐ働きをしています。
見回りの兵士がいると敵(ウイルスや細菌)がやってきてもすぐさまやっつけるイメージです。
このようなリンパ組織を扁桃とよびます。一般に扁桃腺と呼ばれる口蓋扁桃のほか、アデノイド(咽頭扁桃)、舌根扁桃、耳管扁桃などが「のど」を囲んでいます。口蓋扁桃が目立つ方は成人であっても、のどちんこの両脇で目で見ることができます。
口蓋扁桃、アデノイドは4〜8歳の幼小児期に働きが最も活発で、大きさも最大になります。その後、年齢とともに徐々に縮小して、大人では、ほとんど認められなくなるのが普通です。
扁桃炎はなぜ感染のターゲットになるのでしょうか?
口蓋扁桃は、表面がゴツゴツし、多数の小さい穴が開いていて、ウイルスや細菌を素早くとらえることができますが、病原微生物にさらされる機会が多いため、感染を起こしやすい臓器でもあるのです。
見張りの兵士も敵が強かったり、数が多かったり、兵士の体調が悪いと敵にやられてしまうイメージです。
扁桃炎って何?原因は?
扁桃が主に炎症している場合に扁桃炎とよびます。中咽頭が主に冒されている場合は咽頭炎と呼ばれますが、実際には、扁桃炎と咽頭炎は区別しにくいので、同じで使用されることもあります。
ほとんどはウイルス感染によって引き起こされ、成人ではA群溶血性レンサ球菌感染が約10%を占めています。
扁桃炎の症状
扁桃炎にかかるとのどの痛みや腫れ、発熱や食欲不振といった症状があります。ただし、扁桃炎に一度かかっても必ずしも慢性化するわけではありません。1回のみであったり、何回も繰り返したりする方もいらっしゃったりと個人差が大きいです。
慢性扁桃炎
慢性扁桃炎とは、口腔咽頭や扁桃に感染や炎症が少なくとも3ヶ月以上続いている状態を指します。
慢性扁桃炎や咽頭炎の患者さんでは、抗生物質による治療中に咽頭痛が改善し、抗生物質の使用を中止するとすぐに症状が再発することがあります。
慢性扁桃炎の原因
慢性扁桃炎は複数の要因による可能性が高いです。さまざまなウイルスや細菌、胃食道逆流症、アレルギーなどが含まれます。
呼吸器系ウイルス(例えばアデノウイルス)は、慢性扁桃疾患患者のアデノイドおよび口蓋扁桃に非常に多く存在します 。これらのウイルスが扁桃に残存することで、慢性炎症が刺激される可能性があるのです。
扁桃炎の治療
扁桃炎の治療法は、感染の原因が細菌による場合は、抗生剤を内服し、重症な場合は抗生剤の点滴注射をします。
感染の原因がウイルスである時は、喉の腫れや痛み、発熱というような症状に応じて、対処療法として抗炎症剤や解熱鎮痛剤、うがい薬などの処方を行います。
慢性・反復性の扁桃炎のため扁桃摘出術の手術適応については決まった基準はありません。どれくらい扁桃炎を繰り返すと手術適応があるかの目安は国ごとに作成されています。
国によっては1年間に5回以上を2年間を目安に手術を検討します。日本には扁桃摘出術の適応を明記したガイドラインはありません。
アメリカの耳鼻科学会では小児に対して、年に 7 回以上、2 年間に 5回以上、3 年間に 3 回以上ののどの炎症があることを手術の目安にしているようです(パラダイス基準)。
成人については一定の見解はなく、慢性・反復性の扁桃炎の患者さんの現状や希望と手術の効果や合併症を考慮した上で手術が検討されますので、耳鼻咽喉科の医師と相談してください。
まとめ
おとなの慢性扁桃炎に対しては原因が細菌性であれば抗菌薬を使用します。それ以外であれば症状を緩和すべく対症療法を行います。
扁桃摘出術については成人については一定の見解はありません。症状の頻度や程度、手術の合併症を考慮して適応が検討されます。
耳鼻科医師との相談が必要となります。