インフルエンザにかかった時、多くの人が抗ウイルス薬に頼ります。タミフルやイナビルは、その中でも特によく知られた薬ですよね。
これらの薬が「すぐに熱を下げる」「一発で治る」といった話を聞くことがありますが、これらの表現は大きな誤解を招く可能性があります。
ここで、そのような誤解を解くために、科学的根拠に基づいた情報を共有したいと思います。
抗ウイルス薬の働き
タミフルやイナビルを含む抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで、症状を緩和し、病気の期間を短縮する効果があります。
これらの薬はインフルエンザウイルスに感染した後、48時間以内に投与を開始することが推奨されています。それは、ウイルスの増殖が最も活発な初期段階で効果的に作用するためです。
熱が「すぐに」下がるわけではない
タミフルやイナビルが「すぐに熱を下げる」という表現には、誤解が生じやすい側面があります。
実際には、これらの薬はインフルエンザの症状を緩和し、病期を短縮するために設計されていますが、熱を即座に下げるわけではありません。熱が下がり始めるまでには通常、数日かかることが一般的であり、薬の効果を体感するまでの時間は個人差があります。
これらの薬剤は平均して、発熱期間を約24時間程度短縮させる可能性があります。
これは、通常、インフルエンザによる発熱が4~5日続く場合があることを考えると、発熱期間が3~4日程度に短縮されると理解するのが適切です。
抗ウイルス薬は全ての人に必要ではない
インフルエンザの治療において、抗インフルエンザ薬が必ずしも全ての人に推奨されるわけではありません。
軽度から中等度のインフルエンザで、特にリスクの高い基礎疾患がない健康な成人の場合、自然回復を待つことも一般的なアプローチです。
再度強調します。インフルエンザはタミフルなしでも治りますので、 元気な方はタミフルを飲まなくても大丈夫です。
ここを誤解している方はとても多いです!
重要なのは、適切な休息を取り、水分を十分に摂取することです。
以下のリンクもご参照ください。
抗コロナ薬と抗インフルエンザ薬の人気の差
例えば、抗コロナ薬であるゾコーバを処方希望される患者様はかなり少ないです。同じように症状を24時間程度短縮させるのにも関わらず人気がないのです。おそらくは以下のような理由によると思われます。
認知度と使用経験
タミフルは長年にわたり使用されてきた抗インフルエンザ薬で、その効果や安全性に関する広範な認識が存在します。一方、ゾコーバは新型コロナウイルス治療用として比較的新しいため、認知度や使用経験がタミフルほどではありません。
費用とアクセスの問題
公費負担による無料または低コスト提供時には、より多くの人々が治療を求めますが、有料になるとその需要は減少します。ゾコーバの使用が有料となったとたんに、その処方希望者が激減しました。
メディアと公の認識
インフルエンザ治療としてのタミフルの肯定的な報道や、著名人による使用体験の共有は、タミフルに対する一般的な好意と信頼を高めます。先日、聴いていたコンテンツでもインフルエンザになってタミフルを飲んだから治ったと配信者を発言していました。
また、タミフルをはじめとした抗インフルエンザ薬を飲まないとインフルエンザは治らないと信じている方もいらっしゃるのも事実だと思います。
結論
「タミフルで熱がすぐに下がった」「イナビルで一発だ」という主張は、個人の体験・感想に基づくものかもしれませんが、全ての人に当てはまるわけではありません。
抗ウイルス薬は、特定の条件下で効果を発揮するものであり、即効性の解熱剤とは異なります。
インフルエンザ治療における抗ウイルス薬の効果については、科学的根拠に基づいた情報を理解することが重要です。