📅 2026年8月25日 (0日前に公開)

AIの答えは、ひとりで抱えない。
アメリカの12〜21歳の5人に1人が、つらい気持ちをAIに相談していました。
そして、その6割は誰にもそのことを話していません。
2026年、JAMA Pediatricsという小児科の一流医学誌に、全米調査の結果が出ました。
19.2%——悲しい・不安・ストレスを感じたとき、ChatGPTなどのAIに相談したことがある若者の割合。
19.8%——専門家のカウンセリングを受けた割合。もう、ほぼ同じです。
91.7%——AIに相談した子のうち「役に立った」と答えた割合。
63.3%——そのことを、親にも友だちにも誰にも話していない割合。
1年前の調査では13.1%でした。たった1年で1.5倍に増えています。
これは、海の向こうだけの話ではありません。
部屋でスマホを見ている、あなたのお子さん。
学校でのできごとを、家では話さなくなった中学生。
そして「AIに聞いたら大丈夫って言われたから」と受診を先延ばしにする、私たち大人。
相談の相手が「検索」から「AI」に変わる変化は、もう始まっています。
では、なぜ「91.7%が役に立った」を素直に喜べないのでしょうか。
AIの答えが、誰の目にも触れないまま終わることにあります。
AIには、相手の気持ちに合わせて答えを寄せる性質があります。
「大丈夫だよね?」と聞けば、安心させる方向に。
不安をぶつければ、寄り添う方向に。
たとえば、こんなやりとりを想像してみてください。
「私なんて、いないほうがいいのかな」と打ち込んだら——
「そんなふうに感じるあなたは、とても繊細で優しい人です」
気持ちは、少し軽くなるかもしれません。
でも、この答えは何も解決していません。
だから「役に立った」という感覚と「答えが正しい」ことは、別ものです。
そして、その区別は本人にはつきません。子どもにも、大人にも、です。
不思議なもので、同じ答えでも、一歩引いた誰かが読むと冷静に判断できます。
ときには「それはさすがにおかしいね」と、笑って終わることさえある。
渦中にいる本人にだけ、それが見えないのです。
間違った答えに気づけるのは、外にいる誰かだけ。
なのに、6割の子はその「誰か」に一度も見せていないのです。
かつて:悩みを、検索して調べた。
いま :悩みに、答えてもらっている。
「親・臨床医・教育者は、思春期・若年成人にAIチャットボットの利用について尋ね、その長所と限界について助言することを検討すべきだ」(出典:McBainら, JAMA Pediatrics, 2026/筆者訳)
だから、覚えておくことは1つだけ。
AIの答えは、ひとりで抱えない。
家庭でできる、3つのこと
- 禁止しない。「AIに聞いてみた?」と軽く尋ねる。
取り上げると、隠れて使うだけです。「なんて言ってた?」と聞ける関係のほうが、ずっと強い安全装置になります。
ただし、聞き方がひとつだけ大事です。
✕「AIに変なこと相談してないよね?」——詰問になると、閉じます。
○「お母さん、この前AIに肩こりのこと聞いたらね……」——自分の話から始めると、開きます。
親が先に打ち明けるのが、子どもの「実はね」のいちばんの呼び水です。 - AIの答えは「詳しい友だちの意見」として扱う。
参考にはする。でも、それだけで決めない。家庭内でこのルールを共有しておくと、子どもも大人も守りやすくなります。 - 体と心のことは、AIの答えを人に見せる。
「AIにこう言われたんですが」と、診察のときに見せてもらえたら。スクリーンショットのままで大丈夫です。一緒に答え合わせをしましょう。
「役に立った」と本人が言うなら、安心していい。
AIは相手に合わせて答えを寄せます。「うれしい答え」と「正しい答え」は別もので、その区別は本人にはできません。
眠れない、食べられない、学校に行けない日が続く——そんなときはAIではなく、かかりつけ医や専門の窓口に相談してください。つらさが強いときほど、人の出番です。
- 夕食のとき、家族に「AIに何か相談したことある?」と一度だけ聞いてみる
- 自分がAIに聞いた健康の話を、1つ誰かに話してみる(大人も同じルールです)
- 次の診察で「AIにこう言われたのですが」から始めてみる
参考文献:McBain RK, et al. AI Chatbot Use and Disclosure for Mental Health Among US Adolescents and Young Adults. JAMA Pediatrics. 2026.(RAND American Youth Panel、12〜21歳1,009人、2025年11月調査)


