📅 2026年9月16日 (0日前に公開)

痛くないのはうれしい。でも、ぜんそくの子は受けられる? 園にうつる? 本当に効く? よく聞かれる5つの疑問に、順番に答えます。
保育園での研究で、接種した子からまわりの子にワクチンのウイルスがうつったことが、まれに確認されています。
それでも米国CDCは、接種後の登園や登校を制限していません。
注射のたびに、待合室まで泣き声が響く。
ぜんそくの吸入をしている。生ワクチンで大丈夫なのか分からない。
家に、生後3か月の赤ちゃんがいる。
園の先生に「うつりませんか?」と聞かれて、答えられなかった。
フルミストを考える家庭の多くが、どれかにあてはまります。
では、うつることがあるのに、なぜ登園を止めなくてよいのでしょうか。
疑問1 まわりにうつる? 保育園は休む?
まず、うつることはあるのか。
接種後しばらく、鼻の分泌物にワクチンのウイルスが出ることがあります。国内の添付文書では、4週間以内は残っている可能性があるとされています。
保育園での研究(9〜36か月の197人)では、伝播が確認されたのは1人。疑いを含めて5人でした。
その試験の条件で、接種した子1人と接触してうつる確率は0.58%、疑いを含めて2.4%と推定されています。
うつった子から取れたウイルスは弱い性質を保ったままで、症状も軽い鼻かぜ程度でした。
決め手は「うつるかどうか」ではなく、「うつると困る人が近くにいるか」です。
フルミストのウイルスは、鼻の中の低い温度でよく増え、気道の奥の高い温度では増えにくいように作られています。
健康な子にうつっても弱いままで、困るのは免疫の弱い人にうつった場合です。だから注意は、そこに絞られています。
次に、注意が必要な場合。
国内の添付文書は、接種後1〜2週間、重度の免疫不全の人との密接な接触を可能な限り避けるとしています。
日本小児科学会は、周囲に免疫不全の人がいる場合は、注射を推奨しています。
免疫不全とは、移植のあと、抗がん剤や強い免疫抑制の治療中、免疫の病気がある、といった人のことです。
ご家族や身近にそういう人がいれば、当院でも注射をおすすめします。予約の前に教えてください。
最後に、それ以外の場合。
健康な赤ちゃん、おじいちゃんおばあちゃん、妊娠中のお母さんとの、ふだんどおりの接触を止める決まりはありません。
米国CDCも、重い免疫不全の人以外との接触に制限を設けていません。
予防接種を理由に登園を止める公的な基準もありません。体調がよければ、接種した当日や翌日から登園できます。園に当日のルールがあれば、それに従ってください。
園に免疫不全のお子さんが通っている場合は、園と相談してください。
園から「翌日は来ないで」と言われたら、こう伝えてみてください。
「弱毒の生ワクチンを、鼻に噴霧するタイプです。接種後しばらく鼻水にワクチンのウイルスが出ることはありますが、注意が必要とされているのは免疫の弱い人との接触で、健康な子どもの登園を止める基準はありません。体調がよければ登園できます。」
それでも園として休んでほしいという方針であれば、最終的には園の方針に従ってください。
疑問2 うちの子は受けられますか?
対象は2歳以上19歳未満。1回で終わります。注射のように2回打ちません。
なぜ2歳から18歳までなのか。理由は下限と上限で別です。
2歳から:海外の試験で、生後6か月〜1歳の赤ちゃんに入院が増え、生後6か月〜2歳未満で接種後の喘鳴(ゼーゼー)が増えました。海外の承認も2歳以上で、日本もそれに合わせました。
18歳まで:日本では子ども向けのワクチンとして開発され、国内の臨床試験が2〜18歳で行われました。承認の範囲は、その試験で効果と安全性を確かめた年齢に合わせてあります。米国では2〜49歳が対象ですが、日本には19歳以上のデータがありません。
受けられないのは、発熱している、免疫の病気や免疫を抑える治療中、妊娠中、成分で重いアレルギーを起こしたことがある人です。
日本小児科学会は、生後6か月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全、脾臓がない人、妊婦、ゼラチンアレルギーの人には、注射のみを推奨しています。
ぜんそくは「受けられない」ではなく「相談して決める」です。
国内の添付文書では、重いぜんそくや、いまゼーゼーしている子は「接種要注意者」。
日本小児科学会は、ぜんそくのある子には注射を推奨しています。
米国はもう少し厳しく、2〜4歳でぜんそくの診断や1年以内の喘鳴があれば接種しません。
当院では昨年から、ぜんそくの子と最近ゼーゼーした子には、注射を優先しています。
卵アレルギーは、米国では重さにかかわらず接種できます。国内では「要注意者」なので、問診で教えてください。
疑問3 本当に効くの? 注射とどっちがいい?
国内の試験の結果を、2つのグループで見てみます。
偽薬のグループ(35.9%):ワクチンを受けなかった場合、約3人に1人がそのシーズンにインフルエンザにかかりました。当時の流行の激しさを表す数字です。
フルミストのグループ(25.5%):約4人に1人でした。
100人あたりでは、かかる子が36人から26人に減った計算です。割合でいうと約3割減です。
注射と比べてどうか。日本小児科学会は、注射とフルミストのどちらがよく効くかについて、はっきりした差は確認されていないとしています。
どちらが上とも言えない。だから2〜18歳には、どちらを選んでもよい(同等に推奨)という立場です。
過去には、フルミストが注射を上回った試験があります。2004〜05シーズン、生後6か月〜5歳未満の比較で、かかった子が注射より54.9%少ない結果でした。
一方で、2013〜16年の米国のように、効きが落ちたシーズンもありました。
まとめると、どちらにも予防効果があり、年齢、持病、痛みへの負担で選ぶ、が現在の答えです。
「痛くないから弱い」ということはありません。
疑問4 副反応は? 鼻水が出たら「かかった」の?
国内の試験での主な副反応です。
| 症状 | 出た人の割合 |
|---|---|
| 鼻水・鼻づまり | 59.2% |
| 咳 | 27.8% |
| のどの痛み | 17.9% |
| 頭痛 | 11.2% |
鼻水は、比較的よくみられます。
ただし、この表は接種した子の割合です。
米国の試験では、偽薬(生理食塩水)を鼻に入れた子でも、鼻水・鼻づまりが50%に出ました。フルミストでは58%。
ワクチンで増えた分は、10人に1人ほどです。秋冬の子どもは、もともと鼻水が出ているということです。
熱(37.8℃以上)は、同じ試験でフルミスト16%、偽薬11%でした。多くは軽く、短期間です。
ワクチンのウイルスは気道の奥の高い温度では増えにくく、病気を起こさないように弱めてあるので、ワクチンでインフルエンザを発症することはないとされています。
ただし、接種の前後に、かぜや本物のインフルエンザがたまたま重なることはあります。症状だけで「ワクチンのせい」とも「本物」とも決めつけないでください。
接種後しばらくは、インフルエンザの迅速検査がワクチンのウイルスで陽性になることがあります。検査を受けるときは、接種日を伝えてください。
接種直後のじんましん・顔のはれ・息苦しさは、重いアレルギー反応の可能性があるので、すぐに受診してください。高い熱が続く、ゼーゼーする、というときも受診してください。
疑問5 鼻づまりのとき、薬を飲んでいるときは?
鼻づまり:軽い鼻水なら受けられます。噴霧が奥に届かないほど詰まっているときは、効かない可能性があるので日を改めます。
ふだんの薬:花粉症の薬や点鼻薬を含めて、自己判断で止めなくて大丈夫です。使っている薬は問診で確認します。
抗インフルエンザ薬:ワクチンのウイルスの増殖を抑えて、効果が弱まる可能性があります。米国CDCの目安では、タミフル・リレンザは接種前48時間、ラピアクタは5日、ゾフルーザは17日以内に使っていたら接種を見送ります。接種後2週間以内に使ったときも教えてください。注射での打ち直しを検討します。
解熱剤・痛み止め:アスピリン、ジクロフェナク(ボルタレン)、メフェナム酸(ポンタール)は、ライ症候群などの心配があるため、使っている子は注射にします。子どもの解熱には本来使わない薬ですが、川崎病のあとにアスピリンを続けている子、中高生で生理痛や頭痛にボルタレンやポンタールを使っている場合は教えてください。ふだん処方するアセトアミノフェン(カロナール)は、この注意に入っていません。
予約の前に、確認しておきたい3つ
- ぜんそくの診断、この1年のゼーゼー:あれば注射を優先します。迷うときは、いつ・どんなときにゼーゼーしたかを伝えてください。
- 家族や身近に、免疫の弱い人がいるか:移植後、抗がん剤や強い免疫抑制の治療中、免疫の病気。いれば注射にします。健康な赤ちゃんや高齢者は該当しません。
- 最近の薬:タミフル・ゾフルーザなどの抗インフルエンザ薬、川崎病のあとのアスピリン、中高生の生理痛や頭痛の薬(ボルタレン・ポンタール)。使っていたら日にちを確認します。
よくある誤解
誤解
生ワクチンだから、接種した子から家族にうつって危ない。
本当のところ
鼻水にウイルスが出ることはあり、まれに伝播も確認されています。ただし、うつったウイルスも弱いままでした。注意が必要なのは、免疫の弱い人との接触です。
誤解
接種した翌日は、保育園を休まないといけない。
本当のところ
予防接種を理由に登園を止める公的な基準はありません。体調がよければ登園できます。園に免疫不全のお子さんがいる場合は相談を。
誤解
鼻にシュッとするだけだから、注射より効かない。
本当のところ
日本小児科学会は、注射と同等に推奨しています。注射を上回った試験もあれば、効きが落ちたシーズンもあります。
誤解
接種後の鼻水と微熱は、ワクチンでインフルエンザにかかった証拠。
本当のところ
多くは鼻の中での反応です。ただし、かぜや本物のインフルエンザが重なることもあります。迅速検査はワクチンのウイルスで陽性になることがあるので、接種日を伝えてください。
気をつけるのは、まわり全員ではなく、免疫の弱い人が近くにいるかどうか。
今日からできること
- お子さんのぜんそく・ゼーゼーの有無と、家族や身近な人の病気を思い出しておく
- 注射(2回)とフルミスト(1回)、どちらが通いやすいか家族で話す
- 園に聞かれたら、上の「伝え方」を見せる。園に免疫不全のお子さんがいれば相談する
参考文献
フルミスト点鼻液 添付文書(第一三共、2025年8月改訂 第5版)。接種不適当者・接種要注意者、接種後1〜2週間の重度免疫不全者との接触、ワクチンウイルスの4週間以内の残存、迅速検査の陽性化、サリチル酸系・ジクロフェナク・メフェナム酸との併用注意、国内第III相試験(発症率 本剤群25.5%、プラセボ群35.9%、相対リスク減少率28.8%、95%信頼区間12.5〜42.0%)、副反応発現率。
PMDA. フルミスト点鼻液 審査報告書(令和5年2月9日)7.R.5 用法・用量について。下限2歳は海外試験で生後6〜12か月未満の入院増加、6〜24か月未満の喘鳴増加が認められたため。上限19歳未満は国内第III相(J301試験)の対象年齢2〜18歳に基づく。海外の承認は2〜49歳。
日本小児科学会. 2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針(2025年10月)。不活化と経鼻弱毒生の間に明確な優位性は確認されておらず同等に推奨。喘息患者、授乳婦、周囲に免疫不全患者がいる場合は不活化を推奨。生後6か月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全、無脾症、妊婦、ゼラチンアレルギーは不活化のみ。
FluMist 米国添付文書(AstraZeneca/MedImmune)。ワクチン株の性質(低温馴化:25℃で増殖、温度感受性:B型37℃・A型39℃で増殖制限、弱毒化)。保育園での伝播試験(確認1例、疑い4例、推定確率0.58%と2.4%)。2〜6歳のプラセボ対照試験における接種後の症状:鼻水・鼻づまり58%対50%、発熱(37.8℃超)16%対11%。
CDC. Live Attenuated Influenza Vaccine (LAIV): The Nasal Spray Flu Vaccine. / Interim Clinical Considerations for the Use of Seasonal Influenza Vaccines in the United States, 2025-26.(重度免疫不全者との接触を7日間避ける、抗インフルエンザ薬との間隔)
Vesikari T, et al. A randomized, double-blind study of the safety, transmissibility and phenotypic and genotypic stability of cold-adapted influenza virus vaccine. Pediatr Infect Dis J 2006;25:590-595.(保育園に通う9〜36か月の子197人。偽薬群1人にB型ワクチン株の伝播を確認、A型の疑いが4人。弱毒の性質は保たれていた)
Belshe RB, et al. Live attenuated versus inactivated influenza vaccine in infants and young children. N Engl J Med 2007;356:685-696.(2004〜05シーズン、生後6か月〜5歳未満、約8,000人。培養で確認したインフルエンザが注射より54.9%少なかった。2歳未満で喘鳴が増加)
Kamboj M, Sepkowitz KA. Risk of transmission associated with live attenuated vaccines given to healthy persons caring for or residing with an immunocompromised patient. Infect Control Hosp Epidemiol 2007;28:702-707.(2007年時点の文献総説。免疫不全者や医療者にうつって発症した報告は見つからなかった)
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