予防接種 大人の病気

「子どものころに打ったから大丈夫」は、もう効いていない 〜大人の破傷風ワクチンの話〜

📅 2026年8月26日 (2週間前に公開)

クレヨンで描いた、ばんそうこうを貼った手と畑の野菜のイラスト

ケガをしてから慌てるより、元気なうちに1本。

この記事を読んでいる大人の多くは、破傷風ワクチンにもう守られていません。

最後に打ったのは、おそらく11〜12歳。
効果の目安は、約10年です。

破傷風は、日本で今も年間およそ100人がかかっています

亡くなる方は、毎年5〜9人

かかった人の10〜20%は、治療をしても助かりません

そして、患者のほとんどは大人です

トマトの支柱を片づけていて、手が滑った。
じゃがいも掘りで、素手で土をかいた。
キャンプで転んだお子さんより、素手で薪を組んでいたお父さん。
ささくれ。ペットのひっかき傷。

破傷風菌は、土やホコリの中に、どこにでもいます。
入り口になるのは「病院に行くほどじゃない」小さな傷です。

最初のサインは、口が開きにくくなること。
やがて全身の筋肉が突っ張り、呼吸ができなくなっていきます。
始まるのは、傷から10日ほどたったころ。
傷が治りかけて、忘れたころです。

では、なぜ子どもではなく、大人ばかりがかかるのでしょうか。

危ないのは、傷の大きさではありません。「最後にワクチンを打った日」です。
そしてもうひとつ。昭和43年(1968年)より前に生まれた方は、子どものころの定期接種に破傷風が入っていませんでした。一度も打っていない可能性があります。

かつて:破傷風は、子どもの病気でした

いま :患者のほとんどは大人。特に、定期接種が始まる前に生まれた世代です

ケガをしたとき——土などで汚れた傷なら最終接種から5年、それ以外の傷なら10年たっていれば、追加接種を(出典:国立健康危機管理研究機構)

なお、傷の手当てが必要なときは、外科や救急を受診してください。
その場で破傷風のワクチンも打ってもらえます。
当院がお手伝いできるのは、その前の「備え」のほうです。

ケガをしてから慌てるのではなく、ケガをする前に、済ませておく。

生まれた年で、ざっくり分かります

生まれた年あなたの状態必要な接種
昭和43年(1968年)より前定期接種の対象外。一度も打っていない可能性基礎から3回
昭和43年以降子どものころに打ったが、もう切れている追加で1回
20代前半までまだ効いている可能性が高い母子手帳で日付を確認

「記録が見つからない」という方も、あきらめなくて大丈夫。
打ったかどうかはっきりしない場合は、基礎の3回からつくり直すのが原則です。
どこから始めるかは、診察でいっしょに決められます。

自分の「破傷風リスク」を3分で確かめる方法

  1. 生まれた年を見る。昭和43年(1968年)より前に生まれた方は、一度も打っていないかもしれません。その場合は、3回の接種で基礎からつくります
  2. 最後の接種から10年を数える。定期接種の最後は11〜12歳。つまり20代前半には、もう切れている計算です
  3. 「5年ルール」を覚えておく。ケガをしたら、その時点で振り返ります。「最後に打ったのは、いつ?」——土で汚れた傷で、5年以上あいていたら追加の1本が必要です。傷の処置といっしょに、外科・救急で打ってもらえます
  4. 思い立った今、予約する。破傷風は「かかってから」では守れません。守れるのは「かかる前」だけです
誤解
サビた釘を踏まなければ大丈夫
本当のところ
菌は土やホコリのどこにでも。ガーデニングや砂場の傷でも起こります
誤解
破傷風なんて、昔の病気
本当のところ
今も毎年約100人。東日本大震災のあとは、1か月で10人が発症しました
誤解
かかっても、薬で治るでしょう?
本当のところ
集中治療をしても10〜20%の方が亡くなります。だから、予防がすべてです

北海道に住む私たちには、胆振東部地震の夜の記憶があります。
停電の暗闇で片づけをすれば、ケガはめずらしくありません。
災害への備えというと水や電池を思い浮かべますが、
ワクチンは「非常袋に入れられない備え」のひとつです。

傷が深い・土で汚れている・出血が止まらない。そんなときは迷わず外科や救急へ。ワクチンの相談は、落ち着いてからで大丈夫です。

破傷風は、傷の深さではなく
「最後に打った日」で決まる。
今日からできること
  1. 母子手帳や接種の記録で、最後の破傷風(三種混合・二種混合)の日付を探す
  2. ご両親・祖父母の生まれ年を確認する。昭和43年より前なら、この記事をそっと見せてあげてください
  3. 10年以上あいていたら、当院で予防接種を。破傷風だけの注射(3,500円・税込)と、百日咳もいっしょに防げる三種混合・トリビック(8,500円・税込)があります。小さなお子さんと接する方には、トリビックがおすすめです。ご予約は受付までお気軽に

次の受診のついでで、かまいません。
「破傷風、私はどうですか?」と聞いてみてください。
母子手帳が見つからなくても、いっしょに考えます。

参考文献
この記事は、米国医師会雑誌 JAMA の患者向け解説(2026年)と、日本の公的機関の情報をもとに書いています。
Zhou S, Malani P. What Is Tetanus? JAMA(患者向けページ・英語)
国立健康危機管理研究機構「破傷風(詳細版)」
東日本大震災に関連した破傷風(IDWR速報)

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸(こばやし としゆき)|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。子どもからおとなまで、家族をまるごと診られる町の医師でありたい。診察室で「聞いてよかった」と言ってもらえた話を、ここに書き残しています。 お問い合わせはこちら

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