大人の病気

「運動してるから大丈夫」は、肝臓には半分しか届かない 〜お酒好きの脂肪肝は「飲む量」と「体重」で決まる〜

📅 2026年10月6日 (4日前に公開)

てんびんに乗った笑顔の肝臓のキャラクター。片側にビールジョッキ、もう片側にランニングシューズがのり、ビール側に少し傾いているクレヨン画

健診の結果票、肝臓の欄に「軽度異常」。

でも、痛くもかゆくもない。
週に何回かは運動もしている。
だから、まあ大丈夫だろう。

そう思って、結果票を引き出しにしまった方へ。
痛くないことも、運動していることも、肝臓が無事な証拠にはなりません。

数字を3つだけ

日本の大人の、およそ4人に1人に脂肪肝があると推定されています。

日本肝臓学会は2023年、「ALTが30を超えたら、まずかかりつけ医へ」と呼びかけました(奈良宣言2023)。

厚生労働省は、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を、純アルコールで1日あたり男性40g以上・女性20g以上としています。ビール中瓶(500ml)なら、男性で2本、女性で1本ほどです。

たとえば、こんな場面に覚えはないでしょうか。

  • 健診ではγ-GTPばかり気にして、すぐ隣のALTは見ていない
  • 平日は飲まないから、週末にまとめて飲んでも帳消しだと思っている
  • 走っている(筋トレしている)から、飲んだ分は相殺できていると思っている

どれも、よくある「安心のしかた」です。
そしてどれも、肝臓の側から見ると少しずれています。

では、肝臓に脂肪をためているのは、何なのでしょうか。

肝臓の脂肪を決めるのは「飲んだ総量」と「体重」

先にお伝えすると、運動は効きます。
体重がほとんど変わらなくても、運動を続けると肝臓の脂肪は減ることがわかっています。

ただ、運動は飲んだお酒を「なかったこと」にはしてくれません。

アルコールは肝臓で分解されます。その途中で、肝臓は脂肪をつくりやすい状態になります。飲む量が多いほど、脂肪はたまっていきます。

もうひとつが、体重、とくにお腹まわりの脂肪です。食べすぎや運動不足による脂肪肝は、お酒を飲まない人にも起こります。

お酒好きの脂肪肝は、この2つが重なっていることが少なくありません。

「たいして飲んでいない」人の1週間を、足してみる

たとえば、こんな1週間。
本人の感覚は「毎日そんなに飲んでいないし、日曜は休肝日にしている」です。

  • 月〜木:晩酌にロング缶ビール1本(20g)と缶チューハイ1本(350ml・7%で約20g)。1日40g×4日で160g
  • 金:居酒屋で生ビール中ジョッキ2杯(約32g)、ハイボール2杯(約19g)、日本酒1合(約22g)。約73g
  • 土:家でストロング系チューハイ500ml(9%)を2本。約72g
  • 日:休肝日。0g

合計すると、約305g。

1日あたりにならすと約44g。
休肝日をつくっていても、厚生労働省が示す「男性40g」を超えています。

最近は、飲酒量を1日ごとではなく1週間の合計で見る考え方が広がっています。休肝日があっても、ほかの日に多く飲めば、肝臓が受け止める合計は減らないからです。

まず知りたいのは「1週間で何グラム飲んでいるか」

脂肪肝対策には、いろいろな情報があります。
でも、お酒好きの方がまず知っておきたいのは、これだけです。

自分は1週間で、純アルコールを何グラム飲んでいるか。

ここがわからないまま、休肝日をつくったり、サプリを試したりしても、手応えがつかみにくいのです。

お酒1杯あたりの純アルコール量の早見表。ビール缶350mlは14g、ロング缶500mlは20g、生ビール中ジョッキは16g、缶チューハイ350ml(5%)は14g、ストロング系350mlは約25g、500mlは36g、ハイボール1杯は約10g、日本酒1合は約22g、ワイン1杯は約12g、焼酎ロック1杯は12g。生活習慣病のリスクが高まる量は1日あたり男性40g以上、女性20g以上

今日から試せる4つのこと

  1. 飲んだお酒を、グラムに直してみる
    上の早見表で、いつものお酒を探してみてください。
  2. 休肝日の「日数」より、1週間の「合計」を見る
    休肝日があっても、合計が多ければ肝臓の負担は軽くなりません。
  3. お酒と一緒に、体重も少し減らす
    飲む量を減らすと、数週間で数値が下がりはじめることも。ゼロを目指さなくて大丈夫です。
  4. 健診票は、γ-GTPとALTを並べて見る
    ALTが30を超えていたら、一度肝臓を確かめておく目安です(奈良宣言2023)。

よくある誤解と、本当のところ

✕ よくある誤解

γ-GTPが正常なら、肝臓は大丈夫

◯ 本当のところ

γ-GTPが正常でも、ALTが高い脂肪肝はあります。逆に、ALTが30以下でも脂肪肝が隠れていることがあります。

✕ よくある誤解

脂肪肝は痛くないから、放っておいていい

◯ 本当のところ

痛みが出ないまま、肝臓が少しずつ硬くなる(線維化)ことがあります。脂肪肝から肝硬変や肝臓がんに進む人が増えていると、日本肝臓学会も注意をうながしています。

✕ よくある誤解

お酒をきっぱりやめないと意味がない

◯ 本当のところ

量を減らすだけでも、肝臓は変わります。ただ、肝臓がすでに硬くなっている場合は、飲み方を医師と相談して決めていきましょう。

肝臓は、飲んだ量をきちんと覚えています。
運動は心強い味方ですが、帳消しにまではしてくれません。

今日からできること

  1. 健診票を出して、ALTの数字を見てみる
  2. 昨日飲んだお酒を、グラムに直してみる
  3. この1週間の合計を、ざっくり出してみる
  4. ALTが30を超えていたら、健診結果を持って受診してみる

当院では、血液検査と腹部エコーで肝臓の状態を確かめられます。エコーでは脂肪のたまり具合が画面に映るので、ご自身の目で見ていただけます。次に受診されるときに、健診結果を一緒に持ってきていただくのでもかまいません。詳しい検査が必要な場合は、消化器内科へご紹介します。

参考

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸(こばやし としゆき)|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。子どもからおとなまで、家族をまるごと診られる町の医師でありたい。診察室で「聞いてよかった」と言ってもらえた話を、ここに書き残しています。 お問い合わせはこちら

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