📅 2026年8月29日 (1週間前に公開)

「何度言っても寝ないんです」
診察の合間に、保護者の方からよく聞く言葉です。
小学生の頃は9時に寝ていた子が、中学に上がったとたん、夜中まで起きている。
そして朝、起きられない。
「スマホばかりで、だらしない」
「気合が足りない」
そう思ってしまいますよね。
でも、少し違います。
思春期になると、体内時計が後ろにずれます
人には体内時計があります。
思春期に入ると、この時計が後ろにずれることがわかっています。
米国小児科学会は、思春期の睡眠リズムが最大2時間ほど後ろにずれるとして、中学・高校の始業時刻を遅らせるよう提言しているほどです。
夜11時に布団に入っても、体はまだ「起きている時間」だと思っている。
だから寝つけない。
怠けているのではなく、体がそうなっている。
ただし「だから仕方ない」ではありません
ここが大事なところです。
夜に強い光を浴びると、体内時計はさらに後ろにずれます。
そして思春期は、光の影響を受けやすい時期でもあります。
つまり、もともとずれている時計を、夜のスマホがさらに押している。
体の仕組み半分、環境半分と考えるのがちょうどいいと思います。
それでも、朝は来る
困るのは、体内時計が後ろにずれても、学校の時間は変わらないことです。
寝るのが遅くなり、起きる時刻は同じ。
そのぶん、睡眠時間だけが削られていきます。
中学生に必要な睡眠は、おおむね8時間から10時間。
学年が下の子は、もう少し長めです。
夜1時に寝て朝6時半に起きれば、5時間半です。
「早く寝なさい」が効かない理由
眠くない人に「寝なさい」と言っても、眠れません。
大人でも同じです。
夜10時に「はい、いま寝てください」と言われて、眠れる人は少ないと思います。
だから、声かけの向きを変えます。
今夜からできる、ひとつだけ
寝る時刻を早めるのではなく、朝の光を先に決める。
体内時計は、朝に光を浴びることで前に戻ります。
- 起きたらカーテンを開ける
- 朝ごはんを食べる(朝ごはんも、体のリズムを整える助けになります)
これを続けると、夜に眠くなる時刻が少しずつ早くなります。
順番が逆に見えますが、こちらのほうが現実的です。
完璧を目指さなくて大丈夫です
一気に2時間早めようとすると、まず失敗します。
数日ごとに、15分ずつ。それでも1か月で1時間以上変わります。
「今日は寝るのが遅かった」という日があっても、翌朝の光でまた戻せます。
ひとつだけ。
朝の光を続けても、どうしても起きられない日が続く。
そんなときは、生活リズム以外の理由が隠れていることもあります。
まずは、朝のカーテンから始めてみてください。
よくある質問
Q. 何時に寝かせればいいですか?
起きる時刻から逆算します。6時半起床で8〜10時間を確保するなら、21時半〜22時半には眠っている計算です。ただし、いきなりそこは目指しません。まず朝の光を固定して、眠くなる時刻が前にずれてくるのを待ちます。
Q. 休日の寝だめはさせてもいいですか?
昼まで寝ると、体内時計はさらに後ろにずれて、月曜の朝がいちばんつらくなります。普段より遅くても2時間以内が目安です。積み重なった寝不足については「睡眠負債」の記事で詳しく書いています。
Q. 夜のスマホは取り上げるべきですか?
力ずくで取り上げると、対立になりがちです。「寝る1時間前になったら、充電器はリビング」のように、場所のルールにするのが現実的です。画面を暗くする、寝室に持ち込まない、だけでも違います。
Q. 朝の光は、どのくらい浴びればいいですか?
カーテンを開けて、窓の近くで朝ごはんを食べる。それで十分です。曇りの日でも、窓際の光は部屋の照明よりずっと強く、体内時計にはちゃんと届きます。


