
最近「百日咳が流行していると聞きました。うちの子もそうですか?」というご相談が増えています。ご不安、よくわかります。一方で、外来では高熱が数日続いてから咳が強くなるケースで、結果的にマイコプラズマ感染症と診断されるお子さんも少なくありません。
ざっくり言うと、発熱の有無や咳の“質”、経過などが手がかりになります。ただし症状だけで完全に見分けるのは難しいことも多いので、咳が長引くときは早めに受診してくださいね。
百日咳の特徴(どんな経過?)
百日咳は、はじめの1〜2週間は風邪のような軽い症状で始まります。ところがその後、発作的で連続する強い咳に移行し、夜間に悪化しがちです。
咳き込んだ直後に吐いてしまうことがあったり、息を吸うときに「ヒュー」という音(ウーピング)が聞こえることもあります。
発熱はないか、あっても微熱程度が多く、咳は数週間〜2〜3か月と長く続くことがあります。
乳児では典型的な咳が出ないこともあるため、苦しそう・顔色が悪い・無呼吸が見られるなどのサインがあればすぐ受診してください。
マイコプラズマ感染症の特徴(どんな経過?)
マイコプラズマは発熱(ときに高熱)で始まり、数日後に乾いた咳が目立ってくる流れが典型的です。
倦怠感・頭痛・のどの痛みなど全身症状を伴うことが多く、咳は夜間に強まりやすい一方、解熱後も2〜4週間ほど続くことがあります。
学童〜思春期に多い印象ですが、大人もかかる点がポイントです。
症状だけで見る「ちがいの早見表」
みわけポイント | 百日咳 | マイコプラズマ |
---|---|---|
発熱 | なし〜微熱が多い | 発熱(高熱も)が数日続く |
咳の出方 | 初期の風邪様の後、発作的に連続 | 発熱の数日後から乾いた咳が強くなる |
目立つサイン | ウーピング、咳後の嘔吐 | ウーピング・嘔吐は少なめ |
続く期間 | 数週間〜2〜3か月 | 2〜4週間(解熱後も残ること) |
夜間の悪化 | 多い | 多い(経過とともに強まりやすい) |
表にすると違いが分かりやすいですが、実際の外来では症状がきれいに当てはまらないこともよくあります。とくに小さなお子さんや、咳止めでマスクされている場合、典型的なサインが目立ちにくいこともあります。
発熱の有無は大きなヒントですが、それだけでは決められません。マイコプラズマでも無熱〜微熱例がありますし、マイコプラズマ感染症であっても喘息持ちであるとゼイゼイとした呼吸音になることもあります。
そのため、問診と診察に加え、必要に応じて検査(迅速検査・血液検査、胸部レントゲンなど)を組み合わせて、百日咳・マイコプラズマ感染症だけでなく喘息や肺炎なども含めて評価します。
受診の目安
咳が長い=百日咳、とは限りません。喘息や肺炎が背景にある場合もあります。次のようなときは、受診をご検討ください。
- 高熱が続く、または解熱しても強い咳が続く
- 夜ねむれないほどの咳、咳で吐くことが続く
- ゼーゼー・息苦しさ、顔色が悪い・青白い(とくに乳児)
- 水分がとれない・ぐったりしている
- 3週間以上咳が続く
- 喘息がある、乳児、基礎疾患がある
まとめ
- 高熱が数日続いてから咳が強くなるならマイコプラズマを、熱は低めなのに夜の発作的な咳や嘔吐が目立つなら百日咳を疑うヒントになります。
- ただし症状だけで決めきるのは難しいのが現実です。咳が長引く場合には受診し、必要な検査で確認しましょう。