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クルーズ船のハンタウイルスのニュースについて調べました

📅 2026年5月8日 (0日前に公開)

最終更新日:2026年5月8日

「クルーズ船でハンタウイルスの集団感染」というニュース、目にされた方も多いかもしれません。

「ハンタウイルス肺症候群(HPS)は致死率40〜50%」「ヒトからヒトへ感染」といった見出しを見て、ドキッとした方もいると思います。なお、同じハンタウイルス属でも、アジア・ヨーロッパ型の腎症候性出血熱(HFRS)は致死率が1%未満〜15%程度と大きく異なります。

私自身も最初にニュースを見たときは少し気になりました。今回、調べた範囲を、なるべく分かりやすくまとめてみます。

先に結論をお伝えすると、現時点での情報では、日本に住む私たちが日常生活の中で感染するリスクは非常に低いと考えられています。ただし、状況は変わりうるため、引き続き情報を確認する必要があります。

  • 日本国内でのハンタウイルス肺症候群(HPS)発症例はこれまで一例もない
  • 原因となるウイルスを運ぶネズミ(コロネズミ・シカネズミ)が日本に生息していない
  • アンデス株のヒト–ヒト感染は、同じベッドで眠る・防護なしに看病するなど「濃厚接触」に限られる

そもそもハンタウイルスってどんなウイルス?

ハンタウイルスは、ネズミなどのげっ歯類が「ウイルスを持ち運ぶ動物」(自然宿主)となるウイルスです。(参考:JIHS ハンタウイルス肺症候群

世界中に28種類以上が知られていて、地域ごとに違う種類が存在しております。

感染の中心は、ネズミの尿や糞が乾燥してホコリと舞い上がり、それを吸い込むこと。原則として、ヒトからヒトへはうつらないとされています。

ただし、南米の「アンデス株」だけは例外で、ヒトとヒトとの濃厚接触での感染が確認されております。今回のクルーズ船での感染もアンデス株が原因のようです。

蚊やダニのような虫が運ぶことはなく、空気感染するインフルエンザや麻疹とも性質が違います。

感染するとどんな症状が出るの?

ハンタウイルスが引き起こす病気には、大きく2つの種類があります。ウイルスの種類(株)によって、主に傷つく臓器が異なります。

潜伏期間

感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期)は、数日〜6週間とされており、多くの場合は2〜3週間で発症します。感染直後は無症状のため、いつ・どこで感染したかが分かりにくいことがあります。

① ハンタウイルス肺症候群(HPS):肺に影響が出るタイプ

主に南北アメリカ大陸のウイルス(アンデス株・シンノンブレウイルスなど)によって起こります。今回のクルーズ船の感染もこのタイプです。

初期症状(発症から数日):発熱・悪寒・筋肉痛・倦怠感・頭痛など、風邪やインフルエンザに似た症状から始まります。吐き気・嘔吐・下痢を伴うこともあります。

進行後(数日〜1週間):急速に呼吸困難が現れ、肺に水がたまる「肺水腫」が起こります。血圧が下がり、心臓にも影響が出ることがあります。この時期に亡くなる方が最も多く、致死率は40〜50%程度とされています。

現在、有効なワクチンや特効薬はなく、人工呼吸器や酸素投与などの集中治療(対症療法)が中心となります。

② 腎症候性出血熱(HFRS):腎臓に影響が出るタイプ

主にアジア・ヨーロッパのウイルス(ハンタンウイルス・ソウルウイルスなど)によって起こります。日本でも過去に実験用ラットからの感染例が報告されています。

主な症状:発熱・頭痛・腹痛・腰痛に始まり、腎機能が低下して尿が出なくなる(腎不全)、皮膚や臓器の出血(出血斑・あざ)などが現れます。重症例では腎臓の機能が大きく損なわれます。

致死率はウイルスの種類によって幅があり、0.1%〜15%程度です(HPSよりも全体的に低めとされています)。治療薬としては抗ウイルス薬「リバビリン」が使われる場合があります。

なお、どちらのタイプでも、発症初期は風邪や胃腸炎と区別がつきにくい点が注意が必要です。流行地域への渡航歴や、ネズミとの接触歴がある場合には、早めに医療機関へ相談することが大切です。

クルーズ船で起きていること(2026年5月8日時点)

オランダ船籍の極地クルーズ船「MV Hondius号」は、2026年4月1日にアルゼンチン・ウシュアイアを出航し、南極圏を経て南大西洋・アフリカ沖を通り、カナリア諸島へ向かう予定の航路でした。この船内で、確定2例・疑い5例・死亡3例(2026年5月4日時点、WHO Disease Outbreak News)。その後8例に増加し、アンデス株が確定と報じられています。

原因はハンタウイルスのアンデス株で、船内という閉鎖空間で、ヒトからヒトへ広がった可能性があるが、引き続き感染源等の特定のため疫学調査や接触者の調査が今後必要とされております。

WHOは現時点で「一般市民へのリスクは低い」と評価しています。

日本に住む私たちのリスクは、なぜ低そうなのか

調べた限りでは、理由は大きく3つあるように思いました。

① ハンタウイルス肺症候群(HPS)の国内発症例はこれまでない

厚生労働省国立健康危機管理研究機構(JIHS)の発表によれば、日本国内ではハンタウイルス肺症候群(HPS)の患者発生はこれまで一例もないそうです。なお、同じハンタウイルス属が起こす腎症候性出血熱(HFRS)については、1970〜1980年代に実験用ラットから感染した報告がありますが、1999年以降は報告がないとされています。

② 原因となるネズミが日本に生息していない

アンデス株を運ぶ「コロネズミ」は南米固有種で、日本にはいないとのこと。北米のシカネズミも同様です。

自然界の感染サイクルが日本で成立する条件が、そもそも揃っていないようです。

③ ヒト–ヒト感染は濃厚接触に限られる

仮に下船者が日本に来たとしても、すれ違っただけで感染する病気ではないそうです。

同じベッドで眠る、防護なしに看病する、といったかなり近い距離が必要とされています。

現時点では、日常生活の中で感染する可能性は低いとされていますが、引き続き状況を注視することが大切です。

過去の集団感染例

「過去にも似たことがあったの?」が気になったので、代表的なものを2つだけ紹介します。

1993年 米国フォーコーナーズ

米国南西部の4州が交わる地域で、若く健康な人が突然の呼吸不全で次々と亡くなる、原因不明の病気が発生したそうです。

調査の結果、新種のウイルス(シンノンブレウイルス)が見つかり、それまで知られていなかった「ハンタウイルス肺症候群」という病型の存在が世界に明らかになったとのこと。シカネズミが宿主でした。

2018-2019年 アルゼンチン エプジェン──ヒト–ヒト感染の典型例

アルゼンチン南部の小さな村で、誕生日パーティから始まり、結婚式や葬儀を通じて29名が感染、11名が亡くなったそうです。

ここで大事だったのは、適切な感染対策(隔離・防護具)を行えば、医療従事者は感染しなかったということ。

今回のクルーズ船事例で迅速な隔離措置がとられている背景には、この経験があるのだと思います。

並べてみると、いずれも「自然宿主のネズミがいる地域」、または「そこで感染した人と濃厚に接触した状況」で起きているようです。

感染を防ぐために

アンデス株を運ぶ「コロネズミ」は南米固有の動物であり、日本には生息していません。現時点では、国内での感染リスクは低いと考えられています。ただし、流行地域への渡航を予定されている方や、今後の状況変化に備えて、参考情報としてまとめておきます。

ネズミ由来の感染を防ぐ(流行地域での参考情報)

ハンタウイルスにはワクチンが存在しないため(欧米では一般向けに承認されたものがなく、韓国・中国の一部で使用されているものも有効性・持続性に課題があります)、ネズミやその排泄物との接触を避けることが最も確実な予防策です。

具体的には、「侵入を防ぐ」「駆除する」「安全に清掃する」の3つのアプローチが推奨されています。清掃の際は特に、乾燥したネズミの糞尿を吸い込まないよう、掃除機やほうきは使わず、消毒液で濡らしてから拭き取ること、マスクや手袋の着用が重要です。

アンデス株(ヒトからヒトへの感染)を防ぐ

今回のクルーズ船でも問題となったアンデス株は、感染者との濃厚接触によって広がります。一般的な感染症対策が有効です。

  • 感染者との濃厚接触を避ける:同室での長時間滞在や、防護なしでの看病は避けましょう。
  • マスクの着用:飛沫・エアロゾルへの対策として有効です。
  • 手洗い・手指消毒:こまめな手洗いを心がけてください。
  • 体液・血液への接触を避ける:医療従事者や介護をされる方は、防護具の着用が推奨されます。

まとめ

  • クルーズ船のハンタウイルスは感染源を調査中(JIHS:感染源等の特定のため疫学調査や接触者の調査が今後必要)
  • 原因のネズミは日本にいない/HPS国内発症例ゼロ/濃厚接触でしかうつらない、の3点で日本に住む私たちのリスクは低そう
  • ワクチンは未承認のため、感染者との濃厚接触を避けること・マスク・手洗いが現時点での主な予防策

今回の出来事で被害を受けられた方々に心よりお見舞い申し上げます。状況は変わりうるものですので、今後も信頼できる情報源をもとに、このブログで伝えられることを書いていきます。

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。「がんばりすぎない健康」をテーマに情報発信中。 お問い合わせはこちら

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