季節の健康情報

お祭りの屋台、「冷たいから大丈夫」には根拠がありません 〜危ないのは生ものより、時間〜

📅 2026年8月31日 (1週間前に公開)

夏祭りの屋台のイラスト。提灯の明かりの下、湯気の立つ屋台と浴衣の親子

選び方をひとつ知っているだけで、お祭りはもっと安心して楽しめます。

この夏、東京のお祭りで76人が下痢や腹痛を訴えました。

多くの人が食べていたのは、焼きそばでも唐揚げでもありません。
「冷やしカニラーメン」。冷たいメニューでした(原因は保健所が調査中です)。

食中毒の菌が増えるのは、10〜60℃。

いちばん増えるのは、人の体温に近い37℃前後。

2014年には、静岡の花火大会の「冷やしきゅうり」で510人が食中毒。114人が入院しました。

これは、東京だけの話ではありません。
札幌の秋のお祭り。学校祭の模擬店。運動会のお弁当。キャンプのバーベキュー。
どれも共通点があります。「作ってから、食べるまでに時間が空く」ことです。

では、なぜ「冷たいメニュー」で大きな食中毒がくり返されるのでしょうか。

危ないのは「生もの」ではありません。「作られてから食べるまでの時間」です。
そして冷たい料理には、「食べる直前の加熱」というやり直しボタンがありません。

くわしく説明します。菌への対策は、じつは「加熱」が切り札です。
途中で菌がついても、増えても、食べる直前にアツアツまで加熱すれば、多くの菌は死にます。
焼きそばや唐揚げには、この「最後のやり直し」があります。

ところが冷たい料理は、加熱するのは最初の一度だけ
そのあと「冷ます」あいだに、菌が増えやすい10〜60℃の温度帯を必ず通ります。
屋台には、急いで冷やす冷蔵設備がありません。
そして増えた菌は、加熱されないまま、そのまま口に入ります。

かつて:腐ったものは、見た目とにおいでわかると思われてきました。

いま :食中毒の菌の多くは、味もにおいも変えないことがわかっています。

「つけない、増やさない、やっつける」(出典:政府広報オンライン・食中毒予防の原則

国が示す食中毒予防の3原則です。
温かい料理は、食べる直前に「やっつける」チャンスがもう一度あります。
冷たい料理は、頼れるのが「増やさない」だけ。だから時間との勝負になるのです。

覚えることはひとつだけ。「それ、作られてから2時間以内?」と自分に聞くことです。

屋台での選び方、4つのコツ

  1. 行列のできている屋台を選ぶ。回転が速いお店ほど、作ってから時間がたっていません。行列は、じつは安全のサインです。
  2. 買ったら、その場で食べる。持ち歩いた時間のぶんだけ、菌は増えます。食べ歩き用のキープはしない。
  3. 迷ったら、湯気の出ているものを選ぶ。「いま加熱されたばかり」が目で見てわかるメニューです。
  4. 「残りは明日食べよう」をやめる。お祭りやバーベキューの持ち帰り・作り置きの再利用は、家庭での食中毒の定番コースです。

おなかをこわしたときの「よくある誤解」

誤解
下痢止めを飲んで止めればいい
本当のところ
下痢は菌や毒素を外に出す反応。自己判断で止めると、体の中に閉じこめてしまいます
誤解
吐いているときは水分をひかえる
本当のところ
逆です。こわいのは脱水。スプーン1杯ずつでも、経口補水液などを少量ずつこまめに
誤解
一晩寝れば治るから様子見でいい
本当のところ
様子を見てはいけないサインがあります(下記)

受診の目安:血便が出る/高熱がある/半日以上おしっこが出ない/ぐったりして水分がとれない。ひとつでも当てはまれば受診してください。小さなお子さん・お年寄り・妊婦さんは、悪化が速いので早めの受診が安心です。

疑うのは、生ものより時間。

今日からできること

  1. 次のお祭りで、買う前に一度だけ「作られてから2時間以内?」と思い出す
  2. お弁当とバーベキューは、保冷剤とセットにする
  3. 屋台で迷ったら、「行列」と「湯気」を目印にする

秋のお祭りシーズンはこれからが本番。
おいしいものを、おなかも元気なまま楽しんでもらえたらうれしいです。

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸(こばやし としゆき)|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。子どもからおとなまで、家族をまるごと診られる町の医師でありたい。診察室で「聞いてよかった」と言ってもらえた話を、ここに書き残しています。 お問い合わせはこちら

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