📅 2026年10月28日 (2日前に公開)

夜中、ズビズビと苦しそうな音。
ミルクを飲みかけては口を離して、泣く。
寒くなってきて、鼻かぜをひく赤ちゃんを多くみるようになってきました。
「何か、鼻の薬はありませんか?」
診察室でとてもよく聞かれる質問です。
0〜2歳の鼻づまりで、まず頼りになるのは、薬ではありません。
「生理食塩水」です。
体の水分とほぼ同じ濃さ(0.9%)の、ただの塩水。
でも、使い方しだいで、授乳と睡眠がずいぶん楽になります。
赤ちゃんは、口で息をするのがまだ苦手です
大人は鼻がつまっても、口で息ができます。
赤ちゃんは、まだそれが上手ではありません。
だから鼻がつまると、「飲む」と「眠る」が、いっぺんにむずかしくなります。
大人と同じ「鼻の薬」は、赤ちゃんには使えません
大人が使う鼻づまりの点鼻薬。よく入っている成分(ナファゾリンなど)は、2歳未満には使えないことになっています。
鼻水を止める飲み薬にも、注意がいります。眠くなるタイプのアレルギーの薬は、小さな子では熱性けいれんとの関係から、熱のあるときには使わないほうがよいとされています。
市販のかぜ薬・鼻炎薬も、使える年齢が製品ごとに決まっています。2歳未満は、自己判断で使う前に相談してください。
鼻水を薬で止めるより、ゆるめて、外に出す。
赤ちゃんの鼻づまりケアは、こちらが中心です。
生理食塩水で、何が変わるのか
固まった鼻水がやわらかくなって、鼻吸いで取れやすくなります。
乾いた鼻の中も、うるおいます。
子どものかぜの研究をまとめた報告では、生理食塩水で鼻の症状がやわらいだという結果が出ています。
アメリカのアレルギーの診療指針でも、副作用の少ないケアとして紹介されています。
ただし、かぜそのものを早く治す効果は、はっきりしていません。
「鼻の通りをよくして、楽にする」ためのものです。
えらぶなら「赤ちゃん用・使い切り」
- 滴下タイプ(使い切りの小さな容器):いちばん扱いやすく、防腐剤の入っていないものが多い
- ミストタイプ:やさしい霧状のタイプ
開けたらその場で使い切れる小さな容器のものが、いちばん衛生的です。
さし方は、3ステップ
- あおむけにして頭をそっと支え、片方の鼻の入り口に2〜3滴(製品の説明どおりに)
- 30秒〜1分ほど待つ。鼻水がふやけるのを待つ時間です
- 鼻吸い器で、手前の鼻水をやさしく吸う。ティッシュでふき取るだけでも大丈夫
タイミングは、授乳の前と寝る前がおすすめです。お風呂あがりも、鼻水がゆるんでいて取りやすい時間です。
授乳の直後は、吐き戻しやすいので避けます。
よくある誤解
黄色や緑の鼻水は、ばい菌のしるし
色は、体がウイルスと戦ったあと。色だけで抗菌薬が必要とは決まりません。見るのは色より、経過です。
鼻水は、全部取りきらないといけない
少し楽そうになれば十分です。何度も強く吸うと鼻の中が腫れて、かえってつまることがあります。
ゴロゴロ咳は、のどに落ちた鼻水のことも
寝ると咳が増える。のどがゴロゴロ鳴る。
そんなときは、鼻水がのどに落ちている(後鼻漏)ことがよくあります。
鼻の通りがよくなると、咳も少し落ち着くことがあります。
→ その痰、鼻水かもしれません 〜色より出どころ、出どころより経過〜
こんなときは、受診を
- ミルクや母乳を飲む量が、いつもの半分くらいに減っている
- おしっこの回数が、はっきり減っている
- 息が速い、胸やのどの下がペコペコへこむ
- 顔色が悪い、ぐったりしている
- 生後3か月未満で、38℃以上の熱がある
- 耳をさわって泣く、きげんがとても悪い(中耳炎のことがあります)
- 鼻水が10日以上続く、いったんよくなってまた悪くなった
- 片方の鼻だけから、くさい鼻水が出る(鼻に何か入っていることがあります)
長引く鼻水で副鼻腔炎が疑わしいときや、鼻の奥までくわしく見る必要があるときは、耳鼻科をご紹介することもあります。
今日からできること
- 赤ちゃん用・使い切りの生理食塩水を、1箱おうちに置いておく
- 次の授乳の前に「片方2〜3滴 → 少し待つ → やさしく吸う」を試してみる
参考文献
・Cabaillot A, et al. Saline nasal irrigation for acute upper respiratory tract infections in infants and children: a systematic review and meta-analysis. Paediatr Respir Rev. 2020;36:151-158.
・King D, et al. Saline nasal irrigation for acute upper respiratory tract infections. Cochrane Database Syst Rev. 2015;CD006821.
・Dykewicz MS, et al. Rhinitis 2020: a practice parameter update. J Allergy Clin Immunol. 2020;146(4):721-767.
・日本小児神経学会. 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023.
・ナファゾリン硝酸塩 点鼻液 添付文書(2歳未満の乳・幼児は禁忌)


