うちの赤ちゃんは貧血かしら?脳の発達に影響があるって本当なの?
鉄欠乏症は、外来でよくみかける子どもの栄養欠乏症で質問を受けることが多い問題です。2010年の世界の貧血の有病率は32.9%であり、じつは5歳未満の子どもたちの割合が最も多いです。
鉄欠乏が進行してしまうと鉄欠乏性貧血になることがあります。鉄欠乏性貧血が持続したお子さんでは、発達障害・学習障害など精神神経症状がみられる可能性が想定されていますが、現在のところ因果関係は証明されておりません。
今回は、乳幼児における鉄欠乏についてのお話です。
鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血の症状は、全身倦怠感、めまい、動悸、息切れ、頭痛、皮膚や粘膜の蒼白、動悸、むくみなどです。
幼児では注意力散漫、落ち着きのなさ、認知能力や言語学習能力の低下などがみられることもあるといわれております。
氷を好むようになる氷食症や爪の変形を認めることがあります。
貧血とたちくらみは違うのですか?
外来でよくこの質問を受けます。わかりづらいかもしれませんが、立ちくらみやめまいなどの脳貧血と貧血はちょっと違います。脳貧血とはただしくは起立性低血圧といって、急に立った時、あるいは長時間立っているときに、一時的に脳へ血液が十分に送られない状態です。
貧血とはヘモグロビンが薄い状態です。ヘモグロビンは全身に酸素を送り届ける大切な役目をしています。
鉄欠乏性貧血を防ぐ方法
母乳栄養児の場合
- 正期産児は生後4ヵ月から、未熟児は生後2週間から鉄分補給を始めます。鉄分補給は、乳児用シリアルなど鉄分の多い補完食を十分量摂取できるようになるまで続けていきましょう。
- 生後4〜6ヵ月から鉄分の多い補完食を与えていきましょう。
こちらのサイトに詳しく解説されていました。
母乳は鉄不足になるの?かんたんに鉄分を補う方法を管理栄養士が伝授!
牛乳のとりすぎに注意!←牛乳貧血って知ってます?
鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンという物質を生みだすのに欠かせない成分ですが、 牛乳を飲むことにより鉄の吸収が妨げられ、結果的には血液中のヘモグロビンが下がり貧血となってしまうことがわかっています。
牛乳は豊富な栄養を含む食品ですが、貧血の観点からは1歳過ぎてからが推奨されます。また、与えすぎも良くなく、1日に400ml以下程度にした方が良いといわれております。
鉄欠乏を疑うには食事歴が大切
鉄欠乏を疑うときに大切なことは食事歴を確認することです。大切なことは以下のようになっています。
- 周産期(出産前後)~母の鉄欠乏、早産児など
- 乳児期~母乳育児のときの鉄分補給の不足、低鉄分育児用ミルクの使用、無調整の牛乳や豆乳を与えている、鉄分を多く含む補完食が不足
- 幼児期以降~牛乳の過剰摂取、食品中の鉄分不足
あてはまる項目はありせんか?ただし、おかあさんが鉄欠乏貧血だったからといって赤ちゃんが必ずしも鉄欠乏になるとは限りませんし、牛乳をたくさん飲んでいるからといってすべてのお子さんが鉄欠乏になるとも限りません。
血液検査でチェックできます。
米国小児科学会では、すべてのお子さんで生後9~12ヵ月に1回血液検査を行い、食事歴(牛乳の過剰摂取)や未熟児などにより、リスク高いお子さんについては、数ヵ月後(例えば、15~18ヵ月時またはリスクが確認された時)に2回目のスクリーニングを実施するようにお勧めされています。
日本でも1歳くらいまでに血液検査を勧めている先生もいます。
血液検査ではヘモグロビンやフェリチンを測定します。フェリチンとは、肝臓や脾臓に存在しているたんぱく質の一種です。フェリチンは鉄分を包み込んで「フェリチン鉄(貯蔵鉄)」を形成し、体内に鉄分をストックする役割があります。
ただし、鉄欠乏性貧血の診断に必要な検査は感冒など炎症といった状態によって左右差されるので一回の検査では診断できないこともあります。
鉄欠乏性貧血の治療
経口での鉄剤を服用することと必要に応じて普段の食事内容を見直すことが大切になってきます。
定期的に血液検査をして、体の中の鉄分の蓄え(フェリチン)が十分になったことを確かめてから鉄剤をやめます。治療が終わったあとも鉄分の多い食品をとるように心がけましょう。また貧血にならないように予防していきましょうね。