最近(2022年10月)になってお子さんの爪がはがれてきたという相談が目立っています。指一本、二本の爪がはがれたお子さんから手も足も全部の指の爪がはがれたというお子さんもいました。
この爪がはがれたというエピソードの原因は、今年の夏に大流行した手足口病が原因かもしれないというお話です。
手足口病の経過
手足口病に感染すると、3〜5日後に、口の中や手のひら、足の裏などに2〜3mmの水ぶくれができます。
数日間のうちに治る病気であり、ほとんどの場合、特別な治療をすることなく治ってしまいますよね。
このあたりまでは経験するご両親が多いのではないでしょうか?
正常な爪のはえかた
爪も皮膚の一部です。爪は、髪と同じタンパク質の一種・ケラチンで構成され、皮膚の角質が変化して硬くなったものです。
普通、「爪」と呼んでいる硬い部分は爪甲といいます。爪甲は、皮膚に埋もれている爪の根元にある爪母で生まれて、爪床(爪と皮膚がくっついている部分)の上を滑って前方に押し出されていきます。
爪の伸びるスピードは、健康な成人で1日約0.1mm。1か月で約3〜4mm伸びます。すべてが生まれ変わるには3〜4か月かかります。
手足口病でみとめる爪の変化
爪甲剥離症
手足口病で観察される最も頻繁な爪の変化は、数本または全部の爪がはがれる変化です(爪甲剥離症;そうこうはくりしょう)。
爪甲剥離症は、爪の成長が1〜2週間中断し、爪板が爪床から剥離した状態です。
爪の根元からはがれて爪床(爪の下の皮膚)から浮き上がり、白く見えます。
成長が中断したあとの新しい爪は古い爪とつながることがなく成長し、古い爪と分裂・剥離を引き起こすためおこる現象です。
手足口病の発病から4〜8週間後に起こることが多いです。
爪母細胞にウイルスが影響し、爪母細胞の生産が一時的に止めるために、爪がはがれてくるのではないかと考えられていますが、はっきりとしたメカニズムはわかっていません。
爪甲剥離症の原因としては、外傷、薬剤(化学療法、抗てんかん薬)、皮膚疾患(皮膚炎、爪甲剥離症など)、尋常性天疱瘡、川崎病などでもみとめることがあります。
手足口病による爪甲剥離症は 2000 年に初めて報告されました。最近になってわかってきた現象なのです。
コクサッキーウイルスA6 による手足口病が流行した 2011 年には、手足口病に関連した爪甲剥離症が多数確認されました。
爪甲剥離症は自然治癒し、後遺症はまれですので、治療の必要はありません。
爪の完全な再生は6〜12週間後に起こるのでそれまで保護者の方は安心して気長にお待ちください。
ボー線(Beau line)
爪甲を横に走る線あるいは溝をボー線とよびます。
横線の形、深さ、長さはさまざまです。爪の爪母細胞に栄養障害がおこることで、爪の成長が急激に抑制されるため現れます。
爪甲の障害から数週間後に明らかになってきます。したがってボー線の幅は障害の期間を意味し、深さは障害の強さを表しております。
白色爪(Leukonychia)
爪に認める白い半月状の斑点です。爪母の障害のためおこります。爪の成長とともに爪の先の方へ移動し治っていきます。
まとめ
本日は手足口病のあとに認められる爪の変化についてのお話でした。ご家族にとって手足口病のあとに認められる爪の変化はとても心配になるかと思います。
手足口病のあとに爪の変化があることをぜひ覚えておいてください。
手足口病で認める爪の変化に対しては治療は必要ではありません。自然に治るものですので安心して見守っていてください。