私たちが外出すると、飲食店やクリニックなどで様々なサービスを受けることがあります。その中でも、美しい接客態度に出会うと心が温かくなる瞬間があります。
多岐にわたる業務
受付事務・看護師は医療機関の顔ともいえる存在であり、患者さんとの接点が最も多い職種の一つです。そのため、患者さんからのクレームを受けることもしばしばあります。
患者さんは、医療機関を訪れる際に病気や怪我などで心身ともに不安定な状態であることが多く、スタッフには迅速かつ丁寧に対応することが求められます。
受付事務は患者さんの情報管理や予約手配、医療費の請求手続きなど、多岐にわたる業務を担当しています。看護師は問診表の確認や注射や点滴など様々な業務を並行して行っています。
クリニックにはお掃除の担当者はいないのでお掃除までしなければなりません。
以上のように、医療スタッフには高いコミュニケーション能力とマルチタスキング(multitasking)が求められる職種でかつ、常に患者さんの立場に立ったサービス提供が求められます。
一般の患者さんには、このような仕事の多彩さに気づかないことが多いかもしれません。ぼくもクリニックを開業してから初めて知ったことがたくさんあります。大きな病院では分業されている仕事もクリニックではすべてのスタッフが分担して全員がこなしていかなくてはならないのです。
クレーム対応
当クリニックでは、日々多くの患者さんに診療を提供しておりますが、時にはクレームを受けることもございます。待ち時間が長い、診察内容が不十分、患者対応が悪いなどなど。
たとえば発熱外来のお話です。当院では一日に受付できる患者数を制限しております。空間的時間的に隔離をする必要性やスタッフの人数などを考えて上限を設けております。
その際、予約がとれないと訴えのあるお電話を受けることがあります。可能な限りご案内をしているのですが、心ない言葉を受けることもしばしばあります。そんなときでも彼女たちは心折れるなく、精一杯の対応をしてくれます。
受付で理不尽な要求をされたり、セクハラまがいの行為をしてくる患者さんもいて自分たちが落ち込むようなことがあると思うのですが、患者さんが気を悪くしないように精一杯の対応をしてくれます。
私自身、そんな対応方法をスタッフに教えたわけではありませんが、彼女たちのプロフェッショナリズムに感銘を受けています。
もし私自身が直接クレームを受けた場合でも、彼女たちと同じように素晴らしい対応ができる自信はありません。
両足院副住職の伊藤東陵氏は、著書『一生ものの「問う技術」忘我思考』の中で以下のように述べています。
これは私の個人的な感覚かもしれませんが、飲食店などで、接客態度の美しさに目頭が熱くなることがあります。たとえば、明らかに客のほうが間違っていても、自分の言葉づかいが悪かったのだと即座に納得して、流れるような笑顔の応対を続ける姿。何があっても相手に不快な思いをさせないというプロとしての決意と、少々理不尽でも包み込むように許せる心の広さを思うと、実に美しいと感じます。
美術館やスターバックスといった特にきれいでも快適でもない環境であっても、美しさを感じることができます。
医療に限らず真摯に働く姿をみると感動します。
先日、ある飲食店でお客さんがたくさんいて、忙しそうな中でも、「お味はいかがでしたか?」という親切な声をかけてくれるお店に出会いました。
お客さんが忙しい中、自分たちの気遣いを忘れず、料理の味やサービスに対するフィードバックをしっかりと聞いてくれる姿勢は、お客さんにとっても安心感を与えますね。
さいごに
お客さんの要望に誠実に対応する姿勢、自分に非がないにも関わらず理不尽な要求をうけてもなお、お客さんに寄り添い、笑顔で対応してくれる姿は美しいと思います。