予防接種

百日咳が再び流行中|5歳を過ぎたら“もう一度ワクチン”を考えてみませんか?

はじめに|百日咳が再び広がっています

2024年から2025年にかけて、百日咳の感染が全国的に増えています(百日せきの患者数 2週連続で過去最多更新 子ども中心に感染)

こうした中で、小さなお子さんを持つご家庭では、

  • 「赤ちゃんの頃にワクチンを打ったのに、またかかることってあるの?」
  • 「ワクチンは打ったけど、百日咳に対してまだ免疫があるの?」
  • 「赤ちゃんにうつしたらどうしよう…」

という不安の声が多く聞かれます。

この記事では、小児科医の立場から、百日咳の基本知識・免疫の持続性・家庭での予防策についてお伝えします。

百日咳とは?|特徴と注意点

百日咳は「ボルデテラ・パーツシス Bordetella pertussis」という細菌によって起こる感染症です。

特に0歳児では重症化しやすく、激しい咳き込みで呼吸が止まったり、ミルクが飲めなくなったりすることがあります。

まれではありますが、無呼吸発作や肺炎をきっかけに死亡するケースも報告されています。

症状が軽い年長児や大人では「風邪のような咳が長引く程度」で済むため、感染に気づかずに乳児へうつしてしまうリスクが高い点が注意されています。

ワクチンはいつまで効くの?

日本では、生後2ヶ月から1歳半ごろまでに四種混合ワクチンや、近年導入された五種混合ワクチンを計4回接種することが定期接種として推奨されています。

このワクチンには「百日咳」に対する成分が含まれていますが、百日咳の予防もこのワクチンでできているのです!

しかし、百日咳に対する抗体は、年齢とともに減少していきます。

とくに5歳ごろには抗体保有率が20%台に低下することがわかっており、再び感染する可能性があるのです。


五種混合ワクチンとは?

2024年度から導入された「五種混合ワクチン」は、ヒブワクチンと四種混合ワクチンを1本にまとめたものです。注射の本数が減るというメリットがありますが、百日咳に対する免疫の持続期間はこれまでと大きく変わりません

つまり、五種混合を接種した子どもでも、5歳以降の追加接種の検討は必要になります。


家庭での予防|家族全体で考える

百日咳の予防は、子どもだけでなく、家族全体での意識が大切です。以下のような対策が推奨されます。

▶ 1.乳幼児へのワクチン接種の完了

定期接種を確実に終え、追加接種(1期追加)も忘れずに受けましょう。

▶ 2.5歳以降の子どもや大人の追加接種

ワクチンの効果が切れてくる年齢です。

特に以下の方は、任意接種の検討をおすすめします。

  • 妊娠を希望する女性
  • 赤ちゃんと接することが多い兄姉・祖父母
  • 医療従事者や保育士など

▶ 3.妊婦さんへのワクチン接種(海外では標準の国もある)

海外では、妊娠中にTdapワクチン(百日咳・破傷風・ジフテリア)を接種することで、胎盤を通じて赤ちゃんに抗体が移行し、生後すぐの感染から守ることができるとされています。

日本でも成人向けのTdapワクチン「トリビック®」が承認されており、妊婦さん以外の11歳以上の方には接種可能です。

ただし、妊娠中の使用は日本では承認されていないため、接種を希望される場合は、渡航ワクチンなどを扱う医療機関へご相談ください。当院では取り扱いがありません。

▶ 4.日常的な感染対策

手洗い、咳エチケット、体調不良時の外出自粛など、基本的な感染症対策も引き続き重要です。


まとめ|百日咳の予防

百日咳は、重症化しやすい乳児だけでなく、年長児や大人も再感染する可能性がある感染症です。特に、年齢による免疫の低下家族内感染のリスクに対して、今後も注意が必要です。

ワクチン接種歴を見直し、必要に応じて追加接種を検討することは、ご家族全体を守る上で有効な手段です。気になることがあれば、かかりつけ医にぜひご相談ください。

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