子ども

大人用の薬を半分に割っても、「子ども用」にはならない 〜危ないのは量ではなく、成分そのもの〜

📅 2026年7月25日 (2日前に公開)

割る前に、裏面の成分名を見る。それだけで守れる命があります。

「バファリンを半分に割れば、子どもにも使える」。
その一錠が、子どもの脳と肝臓を襲うことがあります。

大人用バファリンAの主成分は、アスピリン。

アスピリンは、水痘(みずぼうそう)やインフルエンザにかかった15歳未満の子どもで、「ライ症候群」を引き起こすことがある。

ライ症候群とは、急激な脳の障害と肝臓の障害が同時に起きる、命に関わる病気。

ロキソニンも、イブも、市販の錠剤はすべて「15歳未満は服用しないこと」。

そして「小児用バファリン」の中身は、アスピリンではなくアセトアミノフェン。名前が同じでも、成分は別物です。

アスピリン(アセチルサリチル酸)は、15歳未満の水痘・インフルエンザの患者には使用しないこととされています。市販の解熱鎮痛薬に「15歳未満は服用しないこと」と書かれているのも、この考え方に基づくものです。(出典:日本小児科学会「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」インフルエンザの項。同解説でも、アスピリンはライ症候群の発症を高める可能性があるため、解熱薬を使うならアセトアミノフェンを選ぶとされています)

夜中の2時。子どもの額が熱い。
薬箱を開けると、あるのは大人用のロキソニンだけ。
「半分なら大丈夫かな」とスマホで検索を始める。

あるいは、帰省先。
おばあちゃんが「昔はみんなこうしてたよ」と、錠剤をパキッと割る。

どちらも、どこの家庭でも起こる場面です。

では、なぜ「半分に割る」ではダメなのか。

問題は量ではない。成分にある。
半分にしても4分の1にしても、子どもに使ってはいけない成分は、使ってはいけないままです。

かつて:「大人の薬を減らして飲ませる」が家庭の知恵だった

いま :「成分ごと子どもには使わない」が医学の常識になった

コデイン類は「12歳未満の小児等には使用しないこと」(出典:厚生労働省「コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩又はトラマドール塩酸塩を含む医薬品の『使用上の注意』改訂の周知について」令和元年7月9日

咳止めに入っているこの成分も、大人用のかぜ薬にはふつうに含まれていることがあります。解熱剤だけの話ではないのです。

原則はひとつだけ。
割る前に、成分を見る。

今日から使える4つのルール

  1. 薬箱を「大人」と「子ども」に分ける
    ケースを2つ用意して、物理的に分離する。夜中の眠い頭でも間違えないように。
  2. 子どもの体重をスマホにメモしておく
    子どもの薬の量は、年齢ではなく体重で決まります。アセトアミノフェンなら1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて1日の総量60mg/kgまでが一般的な目安です(出典:各製剤の添付文書。PMDA「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」で、手元の市販薬の成分と対象年齢を確かめられます)。ただし製剤ごとに濃度も上限も違います。自己判断で計算せず、必ず医師・薬剤師に確認してください。受診時や薬局で「体重は?」と聞かれたとき即答できるよう、今の体重をメモしておくと安心です。
  3. 買うときは対象年齢と成分名を見る
    パッケージの表ではなく、裏。「アセトアミノフェン」と書いてあるか、対象年齢に自分の子が入っているかを確認する。
  4. 大人用のかぜ薬・咳止めは子どもに使わない
    解熱剤だけの話ではありません。コデイン類など、子どもに禁忌の成分が入っていることがあります。

よくある誤解

誤解
半分に割れば安全
本当のところ
手で割っても正確に半分にはなりません。コーティング錠や徐放錠は、割ると薬の設計そのものが壊れて効き方が変わります。そして何より、割ってもアスピリンはアスピリンのままです。
誤解
小児用は、大人用を薄めただけ
本当のところ
小児用バファリンの成分はアセトアミノフェン。大人用のアスピリンとは、成分から別の薬です。薄いのではなく、違うのです。
誤解
子ども用の市販薬は効かない
本当のところ
小児用の市販解熱剤は安全側に設計されていて、体重あたりでは控えめな量になっていることが多い。「効かなかった」の相当数は量不足で、成分が効かないのではありません。

薬より先に、受診を考えるサイン

ひとつでも当てはまれば、薬を飲ませる前に受診・相談を

  • 生後3か月未満で38℃以上の熱がある
  • ぐったりして反応が弱い、呼びかけても目が合わない
  • 水分が取れない。半日以上おしっこが出ていない
  • 呼吸が速い・苦しそう、顔色や唇の色が悪い
  • けいれんを起こした、意識がはっきりしない
  • 繰り返し吐く、強い頭痛や腹痛が続く
  • 迷っている(判断がつかないこと自体が、相談してよい理由です)

逆に、機嫌がまあまあで、水分が取れていて、眠れているなら、体温の数字だけで慌てて薬を探さなくて大丈夫です。熱は体がウイルスと戦っている反応で、下げること自体が治療ではありません。解熱剤は「つらさをやわらげて、水分と睡眠をとれるようにする」ための道具です。

夜中に子ども用の薬がなくて迷ったときは、大人用の薬箱に手を伸ばす前に、#8000(子ども医療電話相談)へ。看護師や小児科医に、受診したほうがよいかを相談できます。北海道は 011-232-1599 でもつながり、受付は毎日19:00〜翌朝8:00です(時間は変わることがあるので、厚生労働省の一覧でご確認ください)。救急車を呼ぶか迷うときは#7119(救急安心センター/実施地域のみ)も使えます。翌朝まで待てそうなら、朝いちばんで受診を。

子どもの薬は「小さい大人用」ではない。
成分から、別物です。
今日からできること
  1. 薬箱を開けて、解熱鎮痛薬の裏面の成分名を全部確認する。
  2. 「15歳未満は服用しないこと」と書かれた薬は、子どもの手が届かない「大人ゾーン」へ隔離する。
  3. 子どもの今の体重を量って、スマホにメモする。
  4. 子ども用のアセトアミノフェン製剤を1つ、薬箱に常備する。

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南22条おとなとこどものクリニック

  • この記事を書いた人

小林 俊幸

小林俊幸(こばやし としゆき)|南22条おとなとこどものクリニック院長。小児科・総合内科。子どもからおとなまで、家族をまるごと診られる町の医師でありたい。診察室で「聞いてよかった」と言ってもらえた話を、ここに書き残しています。 お問い合わせはこちら

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