子宮頸がんを予防する!2種類あるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの違い
HPV ワクチン接種は、接種後に出現する広範な疼痛、運動障害について専門家でも意見の割れ、現在も議論がありますが、定期接種として接種できることに変わりはなく、当院でも接種される方が少数ながらいます。
HPVワクチンはサーバリックスとガーダシルの2種類があり、どう違うのかよく聞かれるので紹介したいと思います。
本記事の内容
・HPVと子宮頸がんについて
・サーバリックスとガーダシルの違い
・HPVワクチンの問題点
・シルガード9について
HPVワクチンを選択する時に参考になればと思います。
HPVと子宮頸がんについて
子宮頸がんは、HPVが持続的に感染することで、異形成(前がん状態)を生じた後、がんに至ることが明らかになっています。
性交経験のある人の多くは、HPVに一生に1度は感染すると言われています。HPVの多くの感染者では数年以内にウイルスが消失しますが、その内数%は持続感染し、前がん病変を経て、その一部はがんに至ります。
日本では年間約1.1万人の方が子宮頸がんにかかり、約2,800人の死亡すると言われております。子宮頸がんは比較的若い方がかかります。20代から増加し、40代でピークを迎えます。小さなお子さんを持つ方に多いのです。
HPVに100種類以上の型があります。そのうち少なくとも15種類は子宮頸がんの原因となりうり、日本人では2種類(HPV16型と18型)が子宮頸がんの原因の50〜70%を占めています。また、HPV6型や11型は、尖形コンジローマなどの原因となります。
いずれも性交渉を通じた感染経路が主ですので、性交渉開始前にワクチンを接種してHPV感染を予防することで、子宮頸がんの予防にもつながるのです。
ワクチン接種可能年齢は小学校6年生~高校1年生相当の女子で、接種推奨年齢は中学1年生からです。
標準的スケジュールでは、初回接種後に、1~2か月の間隔をあけて2回目、初回接種の6か後に3回目を接種します。 ヒトパピローマウイルス感染症を予防するワクチンには、サーバリックスとガーダシルがあります。
サーバリックス(2価ワクチン)は子宮頸がんの原因ウイルスの2つの型(HPV16型と18型)に効果があり、ガーダシル(4価ワクチン)はさらに尖圭(せんけい)コンジローマの原因ウイルス(HPV6型やと11型)の2つが追加され4つの型に効果があります。
両ワクチンともに子宮頸がんの50~70%を予防し、効果は20年くらい続くとされています(サーバリックスの方が抗体獲得が多く、持続期間が長い可能性が示唆されております)。
どちらのワクチンを打ったとしても、ワクチンに含まれていない種類のウイルスによる子宮頸がんもありますので、必ず子宮がん検診を受けてください。
ワクチンを受けた方でも20歳過ぎたらすべての女性は子宮がん検診を受けることが大切です!
推奨スケジュールでは、1回目は中学1年生になったら接種します。2回目はサーバリックスでは一ヶ月、ガーダシルでは二か月あけて接種します。3回目はいずれも6ヶ月あけて接種します。
必ず同じワクチンを3回接種する必要があります。
接種後の持続性疼痛と運動障害の報告があり、2013年6月に積極的勧奨を差し控えら、接種率は70%超であったのでが1%未満まで激減しました。
WHOワクチン安全性諮問委員会は日本を強く非難し、HPVワクチンは優れた安全性と有効性を持つとの見解を2017年5月に発表しております。
接種後の持続性疼痛と運動障害などの症状について様々な調査研究が行われていますが、「ワクチン接種との因果関係がある」という証明はされていません。
HPVワクチンは現在のところ 80 カ国以上で、定期接種ワクチン(接種することを国が強く勧めているワクチン)です。HPV ワクチンを積極的に接種している国では、ワクチン接種を受けた世代の女性
における子宮頸がんの発生数がおよそ 90%減少しています。もちろん、日本ではそうなっておりません。
2020年7月に子宮頸がんの約90%に予防効果があるシルガード9(9価ワクチン)が承認されました。発売時期や定期接種で受けられるようになるかは決まっていません(2020年8月現在)。
9 価 HPV ワクチンは効果的なワクチンではありますが、9 価ワクチンの普及を待っていると、HPV 定期接種の上限(高校1年生)を越えてしまう恐れがありますので、定期接種の機会を逃さないよう注意してください。
9 価 HPV ワクチンは、HPV6/11/16/18/31/33/45/52/58 の 9 つの型の感染を予防します。そのうち HPV16/18/31/33/45/52/58 の 7 つの型は、子宮頸がんのみならず、女性の腟がんや外陰がん、男女ともに肛門がん、中咽頭がんなどの原因となります。HPV6・11 型は尖圭コンジローマの原因の約90%を占めるとされています。
様々な副作用が話題となったHPVワクチンですが、接種するか否かを親御さん、お子さんとよく話あって決めて頂きたいと思います。
子宮頸がんの発症を予防するために、HPVワクチン接種をぜひともご検討ください!