こどもの便秘は珍しい病気ではありません。10人に1人くらいの割合だといわれています。さらに小児科の腹痛による受診で最も多い原因も便秘です。
便秘になると生活の質を下げ、さらには子どもの成長を妨げる可能性があるといわれています。
便秘とは排便回数や便量が少ないだけでなく、排便するのに努力や苦痛を伴うことも含まれます。痛くて排便を我慢するようなら便秘と考えて対応しましょう。
子どもの便秘を簡単に診断する方法
便秘は便の形をみると、判断しやすいです。下の表をみてください(ブリストル便形状スケールといいます)。

ブリストル便形状スケールでタイプ3以下だと便秘の可能性が高いといわれております。便の表面をみてひび割れしていないかよく見てみてください。
便秘症になりやすい時期

なぜ、自分の子どもが便秘をするのだろうかと疑問に思われるかもしれませんが、お子さんには便秘をしやすい時期があります。特に以下のような時期やタイミングに注意が必要です。
1. 母乳から人工乳への移行するときや離乳食を開始するとき
2. トイレットトレーニングを開始するとき
3. 小学生で通学を開始するときや学校での排泄の避ける時期
意外とあてはまるのではないでしょうか?外来でみているとこのような時期から便秘となるお子さんが多い感じがします。発症のピークは2~4歳のトイレットトレーニングの時期といわれています。排便をするときの痛みやトイレットトレーニングのときに気持ちが悪い排泄感を繰り返すと、意識的にあるいは無意識的に排便を避けるようになるといわれています。
日本の小学生の2割は便秘状態といわれておりますが、その子の親のうち3分の1が便秘状態に気がついていないといわれております。便秘はまれなことではありません。ご両親からお子さんに声をかけてあげることが大切ですね。
生活習慣で大切なこと

まずは、朝食のあとに排便する時間の余裕を持つことが大切です。夜更かしをせずに早く寝て、しっかりと早起きして時間に余裕をもつようにしましょう。
普段から水分摂取が少なめであるお子さんでは水分をしっかりととるようにしてください。規則正しくバランスのとれた食事をとりましょう。食物繊維を多くとることによって便秘が解消されるお子さんがいらっしゃいます。
プロバイオティクス(ビフィズス菌、乳酸菌食品など)の摂取によって便秘が解消されるお子さまもいらっしゃるので試してみてください。ただし、ヨーグルトなどの乳酸菌製品に含まれるプロバイオティクスの含有量は、腸内環境を整えるためには十分ではないといわれております。
日常的に適度な運動をすることも良いとされています。
望ましい排便の姿勢は、膝を胸の近くまで高くすることです。体は45度の前傾姿勢です。お子様の場合には、必要に応じて足台を置くとよいかもしれません。
便秘の治療

便秘と診断されたのち、まずは便塞栓、つまり糞詰まりがあるかどうかです。糞詰まりがあれば浣腸などによって糞詰まりを解消することが先決です。その後は生活・排便習慣の改善、食事療法とともにお薬での治療を行います。
便の栓が取れたら、直腸をからっぽにしておくことが大切です。そのためにお薬を使用します。大きくわけて2種類あります。一つ目が便を柔らかくするお薬、二つ目が腸を刺激して動かす薬です。
少なくても週3回以上の排便がある状態を半年以上維持させることを目指します。お薬の減量や中止が早すぎると再発しやすいといわれております。幼児では自立排便ができるまで治療を続けることもあります。
数日間排便がなければ新たに便塊ができて詰まっているのかもしれません。まずは便塊を取り除いて、治療を再開します。
下剤はシロップ、散剤、坐薬などありますが、長い期間にわたって使用することもあるのでお子さんに合わせた形態を選ぶことが大切です。