かぜ(かぜ症候群)


「かぜ」は一生のうちに最も多くかかる病気だと思います。もちろん私も「かぜ」にかかったことはありますがその数は数え切れません。小児科ということで考えると、受診した患者さんの診断名は「かぜ」が最多です。「かぜ」は年齢が低いほどかかりやすく、2歳未満のお子さまではなんと年間6~8回は「かぜ」にかかると考えられております(The Lancet 2003;361:51-59)。月に一回くらいのペースで「かぜ」をひくことは決して異常なことではないのです。
「かぜ」って何?
「かぜ」は医学的には「かぜ症候群」と呼ばれます。「様々なウイルスによって起こる疾患群で、良性の自然軽快する症候群」です。せき、はな、のどの3つの症状が同時に、同程度ある状態です。
「症候群」とは「病気の原因が不明確ながら、共通の症状や検査・画像所見を示す患者さんが多い場合に、そのような症状の集まりに名前をつけて扱いやすくしたもの」です。原因・病原体はたくさんあるのですが同じ症状をみとめることが多いのです。
どうして子どもはよく「かぜ」にかかるの?
それは「かぜ」の原因になるウイルスが多いからです。「かぜ」の原因微生物は80~90%がウイルスといわれ、その数は200種類以上といわれております。
とくに多いのはライノウイルスです。みなさんにおなじみのコロナウイルスはそのなかに7種類いるのですが、そのうち4種類は「かぜ」を引き起こします。
保育園に通いだすと「かぜ」が増えます


多くの保護者さまが感じているように集団保育に通いだすと子どもが「かぜ」にかかる回数が増えます!だいたい、集団保育開始後2カ月がピークといわれており、その後は「かぜ」にかかる頻度はだんだんと減っていくといわれております。
「かぜ」の症状はどれくらい続くのか?
「かぜ」の症状がなかなか治らなくて悩んでいる保護者さまがいると思います。子どもの「かぜ」の症状がどれくらいでよくなるのか調べた研究では、全体的な症状は15日目までに、咳嗽はやや遅く25日目までに90%が改善すると考えられております。
お薬を飲んでも症状が治らないと心配される保護者さまには残念なお知らせですが、一週間経っても6~8割くらいのお子さんの症状は残っているものなのです。
「かぜ」の予防法
「かぜ」を予防するしっかりとした根拠のある方法はないのが実情です。亜鉛やビタミン製剤に効果があるときいたことがある方もいらっしゃると思いますが、研究報告はまちまちです。マスク着用、流行期に人ごみを避ける、室内の湿度を保つ、帰宅後のうがい・手洗い、十分な睡眠・適切な栄養摂取といったことが大切です。
かぜの対処法


かぜは「良性の自然軽快する症候群」です。ウイルスが原因となっているため抗菌薬は効果がありません。究極のところ、かぜ薬を服用しなくても治ってしまいます。とはいっても日常生活に支障となる咳や鼻汁、咽頭痛などがあるときには、症状を和らげる治療をします。
発熱の対応
発熱があるときの対応はよく質問されます。38度を超えたら寝ている子どもを起こしてでも熱さましのお薬を使用したいと思っている保護者さまがいらっしゃると思います。特殊な場合(熱性けいれんの予防をしているなど)を除いては、熱に対してあわてて対応する必要はありません。
熱さましを使用しても「かぜ」のかかっている期間を短くすることはできません。熱さましを使用する目的は一時的に熱を下げることが身体が楽になり食べたり、寝たりすることができるきっかけを作ることです。しっかりと栄養をとって、十分な睡眠をとることが「かぜ」を治す一番の近道です。
熱は体の免疫機能が頑張ってウイルスに対抗しようとしているときです。お子さんが元気に過ごしているときには経過をみていて大丈夫です。
「かぜ」の診断の難しさ
「かぜをこじらす」という経験をされた方がいると思います。「かぜ」の経過中に二次性の細菌感染症を起こして症状が徐々に悪くなることもあります。また、最初は「かぜ」のような症状であっても、他の原因も考えて、血液検査やエックス線検査などが必要となることもあります。症状がしっかりと治っていくのか経過をみることがとても大切です。
さいごに


風邪の特効薬はなく、お子さんの免疫で「かぜ」のウイルスを退治する時間が必要です。その時間をいかに快適に過ごすかが大切です。熱か関節痛で辛そうなら熱さましを使って楽にしてあげたり、せきや鼻汁でつらそうならその対応をしてあげることが大切です。