あなたの発熱・のどの痛みは新型コロナウイルス感染ではないかもしれない
新型コロナウイルス感染拡大によって例年では流行するはずの病気が流行しないという話を以前にしましたが、本日は外来でよくみかける溶連菌咽頭炎の話です。
発熱、喉の痛みがあると新型コロナウイルスかもしれないと心配になる方がいらっしゃると思います。それは現在の流行からは当然の考えだと思いますが、中には抗菌薬で治療することが望ましい感染症である溶連菌性咽頭炎も潜んでいるのです。
以下のグラフは溶連菌咽頭炎の患者さんの数を表しております。赤字が2020年のデータです。横軸は1月~12月を表しております。
1月、2月は新型コロナウイルス感染がまだそれほどは広まっておらず、人の流れがあった時です。そのころは例年通りの流行があったのですが、春先を過ぎてからはstay homeや3密を避ける生活行動の影響か例年に比べると患者数が激減しました。
また、夏は例年少ないのですが、その中でもかなり低い水準を保ち、流行を見せるはずの秋以降も大きな流行することもなく昨年は終わってしまいました。
ただ、溶連菌性咽頭炎の患者さんは全くいない訳でもなく、当クリニックでは2~3日に一人くらいの割合で迅速検査で陽性と判明する患者さんがいます。
現在、抗菌薬の適正使用が強く望まれております。なぜかというと耐性菌の世界規模での拡大が非常に問題となっているからです。
厚労省によると、耐性菌が原因とされる死者は2013年に世界で少なくとも70万人、耐性菌が現在の規模で増え続けると、2050年には世界で一千万が死亡し、現在のがん患者の死亡数を上回ると推測されております。
抗菌薬を必要なヒトに処方するため溶連菌の診断はとても大切となってきます。
学童期に多くみられます。逆に乳幼児では少ないと考えられております。
咽頭痛、嚥下困難、発熱、頭痛、腹痛・嘔気・嘔吐といった症状を認めます。もちろん、咽頭は発赤して扁桃腺も腫れ、白いもの(白苔)がひっついているヒトもいます。
ウイルス性咽頭炎、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなど。インフルエンザウイルスには抗インフルエンザ薬で治療する選択肢がありますが、抗菌薬は効果がありません。
抗菌薬の服用が望まれます。発熱や咽頭痛に対しての対症療法と脱水の補正なども大切です。
溶連菌性咽頭炎・扁桃炎は抗菌薬の治療対象ですがウイルス性が原因の場合には抗菌薬は効果がありません。例外としてインフルエンザウイルスの場合には抗インフルエンザ薬があります。
発熱やのどの痛みがあっても新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスが原因ではない場合もあります。
溶連菌感染の場合には抗菌薬が有効です。迅速検査キットがありますので、担当の先生と溶連菌感染の可能性がないか相談してみてください。