あなたは大切な家族にピロリ菌を感染させていませんか?
健康診断や胃がんリスク判定などでピロリ菌がいると言われたことがいる方は除菌の一択です。よほどの例外がない限り、他に選択肢はありません。
本日の記事はピロリ菌がいると言われて、治療を迷われている方にお勧めです。
ピロリ菌は一般に幼少期(5歳未満)で感染することが多く、ヒトの胃粘膜に生息します。その長さは約4ミクロン(4/1000mm)で、右巻きにねじれて、4~8本のべん毛が生えており、胃の粘膜を好んで住みつきます。
胃の中はとても強い酸性なのでたいていの菌やウイルスは生きていけません。ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出して、自分の周りにアルカリ性のアンモニアを作り出すこと(胃の中の尿素を分解して、アンモニアと二酸化炭素を生成します)で、胃酸を中和しながら、胃の中に生息することができるのです。
上のグラフの通り、胃がん死亡率および死亡者数は若年者を中心として明らかに減ってきております。
これは、ピロリ感染率の低下が大きな要因であると推測されております。
ピロリ菌感染は、上下水道設備が整っていないなど不衛生な環境が感染の原因と考えられています。現在若い年齢層で感染率が低くなっているのは衛生環境が整備されてきたからだと言われています。
今後、若年者の感染率低下、除菌治療の復旧でさらに胃がんの死亡数が減っていくと考えられております。
胃がんの発症にピロリ菌が作り出す病原タンパク質のひとつCagA が深く関与していることがわかってきました。
ピロリ菌が胃上皮細胞内にCagA注入すると、細胞の増殖・運動・極性などにかかわる細胞内シグナル伝達系を撹乱することによりがん化を促すと考えられています。
そして、ピロリ除菌後もこのCagAは細胞内に蓄積されてしまい、胃がんになるリスクは除菌しないよりは下がるもののピロリ未感染のヒトと全くと同じまで下がらないと言われております。
日本人のピロリ菌感染者の数は約3,500万人といわれ、多くのピロリ菌感染者は、自覚症状がないまま暮らしています。
日本ヘリコバクター学会は、ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のため、ピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることを強く勧めています。
ガイドラインでは、具体的には特に下記のような病気で除菌を強く推奨しております。
・ピロリ感染胃炎
・十二指腸潰瘍
・早期胃がん治療後胃
・胃MALTリンパ腫
・胃過形成性ポリープ
・機能性ディスペプシア
・胃食道逆流症
・特発性血小板減少性紫斑病
・鉄欠乏性貧血
胃酸分泌が未熟な乳幼児期(5歳)までに感染が多いと考えられております。
感染経路は口-口感染(唾液や吐物)、糞-口(井戸水)がありますが、先進国では「幼少期の家庭内感染」が主な感染経路であることが分かっています。
知らず知らずのうちに家族にうつしてしまって、病気の原因を作ってしまう可能性があります。大切な家族にうつさないためにも除菌を検討してください。
1日2回の飲み薬を1週間飲み切ります。具体的には抗生剤2剤と胃薬を服用します。
2014年に強力な酸分泌抑制効果があるボノプラザンが発売され、高い除菌率を示しております(一次除菌で92.6%、ニ次除菌までで99.85%)。
・アレルギーがないか(ペニシリンアレルギーの際には保険適応外薬剤を使用)
・100%除菌が成功するわけではないので、必ず除菌判定が必要です。
・禁煙、禁酒が望まれます。特に二次除菌は禁酒が必須
・除菌後に胃食道逆流症状が悪くなることがある(多くは一過性)
・除菌しても胃癌のリスクは未感染のヒトよりは高いので定期的胃カメラは必要
・下痢、軟便(10~30%)
・味覚異常、舌炎、口内炎(5~15%)
・皮疹(2-5%)ほか
★50歳以上で一度も内視鏡検査を受けたことがない人は、検査がお勧めです。
★検査でピロリ菌がいると判定された方では内視鏡検査が必須です。すでに胃に病変がある可能性もあります。
・時期:保険適応は内服終了後4週間あけて。できれば8週間あけて
・検査は尿素呼気試験か便中抗原検査が適切。血清抗体の場合には6ヶ月以上あけて実施
ピロリ菌感染は治療対象です。
除菌することによって胃がんや胃十二指腸潰瘍の発生率が低下します。
当院では血液検査による胃がんリスク判定は可能ですが、胃カメラは実施できません。ピロリ菌感染が疑われ場合には専門医を紹介しております。