1歳の以下のお子さんに接触する方は百日咳ワクチンを打った方がよい~乳児の百日咳は重症の恐れありです。
百日咳は全年齢で発症しうる病気ですが、重症化するのは1歳未満です。
あまり馴染みのない病気かもしれませんが、特に6か月未満の乳児の感染では呼吸困難による重症化を来すことや, 肺炎や肺高血圧症などによる死亡が報告されておりますので、あかちゃんのいるご家庭では他人事ではいられません。
乳児以外の小児や成人では咳が長く続いて辛いのですが、致死的になることはほとんどありません。
つまり、乳児以外の小児や成人から、1歳未満に赤ちゃんに百日咳が感染することがとても危険なのです。
定期接種では四種混合ワクチンとして、生後3ヶ月から百日咳のワクチン接種が始まります。四種混合ワクチンの中に百日咳ワクチンの成分が入っています!
つまり、生後3ヶ月未満の赤ちゃんは百日咳に対する免疫がないので、特に注意が必要なのです。
乳児の百日咳の感染源は母が32%で最も多く, 次いで兄弟, 姉妹 (20%), 父 (15%) であることが報告されております。
Bisgard KM, et al., Pediatr Infect Dis J 23(11): 985-989, 2004
だから、乳児の百日咳の対策として、妊婦、家族 (父母、同胞、祖父母) などに百日咳含有ワクチンの追加接種は大切なことです!
アメリカでは、周囲の小児や成人から感染を広めないように思春期以降に百日咳含有ワクチンを追加接種するように推奨しましたが、なかなか乳児への感染を抑制することができなかったこ経緯があります。
その後に、妊娠中の母体に百日咳含有ワクチン接種を接種したところ、乳児の百日咳による死亡が減少しました。現在、アメリカでは、妊娠後期(27~36週)の妊婦に対して百日咳含有ワクチンを接種するように推奨されています。
現在、日本では百日咳ワクチンを接種することはできません。
日本で成人に対しても接種できる百日咳含有ワクチン(トリビック)は妊婦さんへの接種が確認されていないのです。治験の時に妊婦さんが対象となっていないので、効果も安全性も確認されていないからです。
日本で百日咳含有ワクチンを接種するときは泣く泣く妊娠前に打つことになります。
一部の医療機関では妊婦さんにも安全性が確認されたTdap(成人用三種混合)を個人輸入して使用しているところもありますのでHPなどを調べて問い合わせてみてください。
当院では、Tdapが正式認可あるいはトリビックの適応が拡大されてから妊娠後期の接種を予定しております。
乳児期の赤ちゃんが百日咳を発症した場合には最悪の場合には致死的な経過をとる可能性があります。
百日咳の予防のため、乳児期の赤ちゃんに接する可能性のあるご家庭では百日咳含有ワクチンの接種をご検討ください。