妊娠を考えたその瞬間からとりましょう〜葉酸が大切な赤ちゃんを守ってくれます。
葉酸はビタミンB群のひとつです。1941年にホウレンソウの葉から発見されました。ラテン語で「葉」を意味するfoliumから葉酸(folic acid)と名付けられたそうです。
葉酸は、タンパク質や核酸の合成に働いて細胞の生産や再生を助けて、体の発育を促してくれます。また、ビタミンB12とともに、赤血球の生産を助ける作用もあります。
妊娠中に葉酸を摂ることは大切であることを一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
葉酸は、妊婦さんに是非摂取してほしい大切な栄養素です。可能な限り、妊娠前から摂る方がお勧めです。
本日はそんな葉酸についてのお話です。
妊娠中の葉酸の補給は、神経管閉鎖障害の発生と再発を減少させます。少なくとも70%減少させる効果があると報告されております。
神経管とは、子宮内の赤ちゃんの脳や脊髄のもととなる構造物です。この神経管は、最初は平面的なシート状ですが、やがて、くぼみを作り、両端がまるでズボンのジッパーを閉じていくようにくっつき、管になります。
妊娠6週ごろに完成します。赤ちゃんの成長とともに頭の方は脳に、お尻の方は脊髄となります。その一部がうまく閉じなかったために起こる病気が神経管閉鎖障害です。
神経管の頭側に障害が起こると、脳が形成不全となって無脳症となり、流産や死産の割合が高くなります。また、お尻側に障害が起きると二分脊椎となり、色々な神経障害が起こる可能性が高くなります。
妊娠する前から葉酸を補充することが推奨されておりますが、妊娠を予測することはとても難しいことです。多くの女性が妊娠に気づく前の妊娠初期に神経管が閉じてしまいます。
そのため、妊娠を希望する女性だけでなく、妊娠の可能性があるすべての女性に1日1回、葉酸を摂取することが推奨されております。
葉酸は、ほうれん草やアスパラガス、ブロッコリー、枝豆、レバー、いちごなどに多く含まれております。通常の生活であれば、平均的な摂取状況は十分だといわれています。
葉酸が不足しがちな原因は以下のようなものになります。
✅ 摂取不足
・低炭水化物ダイエット
・拒食症、食生活の乱れ
✅ 薬剤性
葉酸の栄養代謝に影響する医薬品は意外に多いです。フェニトイン・カルバマゼピン・バルプロ酸・フェノバルビタール・プリミドンなどの抗てんかん薬の服用により体内の葉酸量が低下します。
✅ 栄養吸収不良に関連する病気(炎症性腸疾患など)
お心当たりの方は積極的に葉酸の補充が必要になります。
また、妊娠中の女性は、必要な量が普段の約1.8倍になります。このため厚生労働省でも、食品での摂取に追加して、サプリメントで400マイクログラムの葉酸の摂取を推奨されています。
妊娠前から妊娠全期間にわたってを補充することが勧められております。また、リスクによっては増量が必要ですので、お困りの方が受診して相談してください。
神経管閉鎖障害以外にも、葉酸には以下のようなことに役立っているのではないかという報告があります。
・胎児の成長および発達
・口唇・口蓋裂、先天性心疾患、四肢短縮欠損症、尿路欠損症、および先天性水頭症の一部
・胎内発育遅延児や自閉症のリスクを下げる可能性がある
葉酸の欠乏は妊婦さん以外にも影響を及ぼす可能性があります。生活習慣病などの心血管系疾患や、貧血(巨赤芽球性貧血)を引き起こす原因のひとつとされています。
葉酸欠乏以外にも神経管閉鎖障害の原因と考えられていることがあります。
✅ 抗てんかん薬の内服
✅ 母親の糖尿病
✅ 妊娠初期の 高熱発作(インフルエンザ,高温サウナ)など
このようなリスクも可能な限り避けることが大切です。例えば、妊娠初期に発熱した場合には、積極的にアセトアミノフェンを使用して解熱した方がよいと考えられております。